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中層進出4


「てめぇ!よくも!見吉を!殺して!やる!」


「くっ!」


先頭を走っていた長貴が男との一体一に持ち込まれ、凄まじい気迫と重い一撃に苦戦していた。男、大兵衛の武器は一見刀の様な形だが反りが無い。しかも、刃も潰させていて異常に太い。多分鈍器として使っているのであろう。


それに対し長貴は重い一撃に体勢を崩されかけて何度も攻撃を貰いかける。一度貰ったら後は終わりだろう。一見ただの刀だと思いそのまま受けた結果、そのまま崩され、今に至るまで体勢を立て直せないでいる。距離をとるにも逃がしてはくれそうにない。


一種の不意打ちじみた戦い方だが、実に合理的だ。そんな劣勢の長貴を助けようと猿吉や直家が何度も助けようとするが、作良がそれをさせない。


「あぁ?てめぇ!何そっちにいこうとしてんだ!!てめぇの相手は俺だぁ!」


「グッ!この!」


「直家!そのままお前が抑えてろ!俺がやる!」


「はっ!てめぇらの蝿見てぇな攻撃なんて当たんねぇよ!」


長貴までの道を塞ぎ苛烈に攻撃を加え近づけさせない。抑える直家は必死だ。というか、それと偶然と幸運があって初めて槍を合わせることができる。技量も妖力量も圧倒的に相手の方が上だ。傷をおってこれだと言うなら、傷を追わせることが出来なければとっくにやられていただろう。


猿吉の方も上手く隙をつき攻撃を仕掛けてはいるが楽々返されている。というよりは、直家が抑えきれなくなったら一度リセットするために猿吉が攻撃を加えて長く持たせる様にしていると言った方が適切だろう。


「オラオラオラァ!死ねやぁ!」


「グゥッ!うぉぉぉお!りぁ!」


重く、速く、鋭い槍の連撃。圧倒的な差を根性と気迫で一時的に底上げしてなんとか堪える。直家の妖力の消費量もいつもの倍だ。。それほど長く持たないだろう。というか、今もっていること自体奇跡のような程の実力差だ。元来の直家の守の硬さと的確な猿吉の攻めによる援護が上手く機能しているからだろう。


「オラァ!」


「チィ!ちょこまかと!てめぇ!うるせんだよ!」


また、崩される寸前に猿吉の介入が入る。渋々こちらの攻撃を止めて猿吉の攻撃を防御し、圧倒的な力で猿吉を吹き飛ばす。


「グァッ!化物かあいつ!クソが!」


「てめぇから潰した方がよさそうだなぁ!オラァ!」


「やらせない!」


素早く回り込んで攻撃を槍で受ける。あまりの力に身体が吹き飛ばされそうになるがグッと堪え、反撃に転ずる。


「うぉりぁ!このッ!」


「てめぇも邪魔だなぁ!めんどくせぇ!」


楽々と直家の攻撃を受け、弾き飛ばす。槍を大きく上に挙げられ体勢が崩れた。


「くらぇぇ!コラァ!」


吹き飛ばされた位置から全力で走ってきた猿吉の突きがその崩された長木貴を、助ける。体勢的に受けることが難しかった作良が避ける。直家も構え直し、猿吉と一緒に攻め始める。少しづつ連携がより隙の無いものになり、防戦一方から少ないが反撃が出来るようになっていった。その事実は直家と猿吉を勢いづかせる。


「クソが!調子乗ってんじやねぇぞ!」


そして、胸の傷が治った訳ではない作良は時間が立つ事に血を垂れ流し続け、また動き続けているため血が止まることも出来ない。少しづつ動きが鈍くなっていくのである。


直家も猿吉も少ない妖力を全力で使っている。お互い尽きるのは時間の問題だ。全力で動けているうちに作良を倒すか、妖力が尽きた所を作良にやられるか。どちらになるか分からないが、直家達の方が分が悪そうだ。






そんな分の悪い戦いを横に見ながら長貴が大兵衛と戦っている。流石に強く、長貴が相手の得意とする超接近戦からなかなか逃れることが出来ないでいた。


こちらは傷を負っている訳ではないので、勢いが止まることもない。武器が弾かれないように必死に受け流す。それも超接近戦では効果も薄い。一応、蹴りを入れたりと色々組み合わせて離そうとはしているが丈夫で効いた様子もない。


「オラァ!くらぇ!死ねやァァ!」


「執拗いね!本当に!」


しかし、これではいつになっても直家達を応援に行けない。2人だけじゃ荷が重いだろう。が、まだまだ抜けれそうにない。








「グッ!」


届いた。怒涛の攻撃を凌ぎ続け、猿吉と連携して少しづつ作良の体勢を崩していき、直家の槍の一突きが胸の傷口を抉った。


「き、かねぇぇぇ!」


届いた槍を更に身体に突き刺す為に更に力を入れるが、相手の槍に脇腹を殴られて追撃をしようとしていた猿吉共々横に吹き飛ばされる。


「あぁ、クソがァ!クソがァ!クソがアァァァ!カス共が!調子乗ってんじやねぇぞォォォ!」


血が止まることなく吹き出る中、地面に転がる直家の元へ走る。なんとか体勢を立て直した直家が攻撃を片膝をつきながら受ける。今まで以上の力で足が地面にめり込む。


「ぐぅっ!ァァァァアア!」


地面に叩きつけられそうになるのをなんとか堪える。地面に叩きつけるつもりで作良も攻撃したのだろう。一瞬隙ができた。


「オリァァァァァア!」


同じく体勢を立て直した猿吉が真横から勢いをつけて腕を斬りつける。刃は肉を断ち骨も中ほどまで断ったが、そこで止まる。斬り飛ばすことは出来なかったが、左腕を使えなくはした。


「ッッグッ!ヌオォオォォオ!」


使える腕が右手だけになっても闘志はいささかも衰えない。猿吉の腹を蹴り飛ばしまた吹き飛ばす。鳩尾に完全に入り、口から血を吐き出していたので、暫く動けなくなるだろう。


その間に直家を殺そうと考えたのか、右手1本で槍を振るう。利き腕とはいえ力も落ち、遅い。それでも、直家とは互角以上に戦えている。


立ち上がり、必死に槍を打ち合う直家。少しでも気を抜けばすぐにでも今度は自分が四肢を失うか、首が消える。


「ぉ、ォォォォォオオオオ!!」


妖力が尽きかける。もう何回も打ち合うことは出来ない。今にも消えそうな妖力を全身から掻き集めて気合いと根性でなんとか均衡を維持する。


「死ねぇぇええ!」


妖力が尽きた事が相手にも分かったのだろう。トドメを刺しにより一層激しい攻撃を浴びせてくる。


「うぉりぁぁぁぁぁあ!!」


今まさに胸を貫かれようとした瞬間、吹き飛ばされて暫く動けないと思っていた猿吉が作良の真後ろから大きく斬りかかる。


「ァァア!執拗けぇ!」


半分死に体の直家の攻撃を一旦止めて、後ろを振り向き攻撃を受ける。直家からしたら、絶好の位置取りだ。背中に一突き。それをすれば勝てる。ここでやれなければ、次は直家も猿吉も死ぬ。そうすれば、長貴といえど二人相手は無理だろう。そうすれば玄武組は全滅だ。

それだけは、ダメだ。こんなところで負けるわけにはいかない。死んで、たまるか!早くも意識も失いかける中、奮起する。


「ぅ、ォォァォォオオオオオオオオオ!!!」


身体中の妖力を掻き集める。尽きかけの妖力では全然足りないが、それでも一突き。それだけの力を集める。槍を握り腰を捻り全力での槍の一閃。限界の身体から繰り出されるそれは、最高とは言いがたくこれまでで一番酷い突きかもしれない。だが、それでも、作良の背中を突き刺し、そのまま貫通した。


「………ガッァ!カハッ!ぐぅっ!クソがぁ…」


胸に槍を生やし、左腕を失い、胸に重症を負った作良はついに膝を地面につける。身体中あらゆる所から血が噴き出し、いつ死んでもおかしくないくらいの身体だが、それでもなお立ち上がろうとする。


直家は完全に妖力が尽きて、意識を失い槍を握ったまま前のめりに倒れている。今この場で立っているのは猿吉だけだ。


「直家にしてはよくやったなぁ。後は俺がやるから寝とけ」


胸を貫かれ苦しみもがいている作良。妖力を回復に回しても治るのに時間はかかるし、それまで動けない。それに、もとより遠視の術で多量の妖力を消費した後だ、回復出来るだけの量は残ってはいない。


「……グッ!クッソがぁあ!ぁぁあ!」


「はっ!俺らを襲うなんて運が悪かったな。てめぇらの負けだ。正義だ悪だと語る気はねぇからよ、そのまま死ねや」


膝をつく作良の正面に立ち刀を大きく振りかぶる。


「………し、死んでたま、ガッ!!」


「うるせぇよ。黙って死ね」


右手に槍を握り猿吉に繰り出そうとするが、それより猿吉が刀を振り下ろすのが速かった。首が飛ぶ。これで完全に死んだ。刀に付いた血を刀を払い落とす。


「作良ィ!!テメェら!テメェら!テメェらぁぁぁぁぁぁ!ぶっ殺してやる!全員!俺がぁ!」


「動きが止まったね。これで終わりだよ。君も君達も」


「なっ!ガッ!ハァッッ!!」


作良の首が飛び血がまわりに飛び散る様子を見て冷静さが無くなった。超接近戦で逃がして貰えなかった長貴はこの隙に距離を取り引きながら刀を振り上げ、右腹から左腕を肩まで斬り上げる。


「こ、のぉ、こんなもん。効かねぇ」


全力で身体中の妖力を、掻き集め回復に早急に止血のために使う。


「させないよ」


「舐めんなよ!!てめぇ1人抑えるだけならできんだよッ!!」


「そうか。じゃあ残念だったね」


長貴の刀を受け止める。2人の動きが一瞬止まる。


「うぉりぁぁぁぁぁあ!!」


「ガハッ!」


「2人だよ。君達と違ってね」


後ろから急いで駆けつけた猿吉が後ろから刺す。不意の一撃になんの抵抗も出来ずに地面に倒れる。


「ぁぁあ。こんなとこでぇ………。俺達は…まだ、やれたのに。作良ぃ、見吉ぃ……」


「どいつも、こいつも黙って死ねねぇのかよ。大人しく死ね」


死に体で、幻でも見ているのであろう。遠い所を見て手を伸ばす。そんな、大兵衛の頭に刀を突き刺す。


「……容赦無いね。猿吉くんは」


「敵に同情してたら命がいくらあってもたりゃしねぇよ。ほっときゃ回復するんだ。ぱっぱとトドメを刺さねぇとこっちが死ぬだろうが」


「僕は…そこまで割り切れないかな」


「ふん。どっちでもいい。俺はこうするだけだ」


そうして、完全に終わったあと、あらためて今回の戦闘を振り返り、よく勝てたなと思う。だからこそ、拾った命を手放したくない。ここで、妖怪やらに襲われたら少し厳しい。


「はぁ、直家くんが目を覚めるまで何処かで隠れないと行けなさそうだね」


「っけ、迷惑な野郎だな。まぁ、直家にしては頑張ったからよしとするけどよ」


「?珍しいね。直家くんを褒めるなんて」


「そんなんじゃねぇよ。いいから、いい場所を探すぞ。青海もフラフラしてるんだろ」


「わ、私は、だ、大丈夫です……ふぅ」


戦闘音無くなり、終わったのだと判断したのだろう。青海さんが長い枝を支えにフラフラとこちらに歩いてくる。流石に、これで大丈夫だとは誰が見ても言えない。自分自身も少し無理があると思ったのかあまり強くは言わない。


「…………適当な場所を見つけるぞ」


「…うん。頼むよ」


青海の発言を無かったことにして、猿吉が周りを見て回る。これには、長貴も何も言わずに任せた。


出来れば中層から、出る事が望ましいが、直家を担ぎながら移動するのは危険だ。猿吉と長貴では守りながら戦うのは厳しいだろう。


「青海さんは休んでて。無理はいけないって何度も言ってるよね?」


「はい………」


長貴に直接言われてはもう言うことは出来ない。大人しく適当な所に腰を落ち着ける。


「さて……。この人達の死体はどうしようかな…?防具も武器も結構いいもの持ってるし。持って行って売る?でも、下手にやると僕らが襲って奪ったものだと勘違いされそうだし…」


「別にいいだろ。本当に俺らが襲って獲得したもんでも、組合は俺らを罰する事は出来ねぇよ。全ては自己責任。開拓者にはそういう危険がある事は皆んな知ってるはずだ。嫌ならなら他の仕事をやればいい。そういう態度をとるだろうよ、組合は」


「猿吉くん……早いね」


「おう、近くにいい場所があってな。場所を移す前にこいつらの防具と武器、着てる服、手持ちの金、全部貰ってこうぜ。手伝え」


「………うん。そうだね」


手早く防具と武器を奪い。腰に括りつけてあった、銭入れ袋を3人分、死体をひっくり返し売り物にならない服を切り裂き、文字通り裸にひんむいて、価値のありそうなものを探す猿吉。もう何も見つからないと言った状態になったら褌一つで無造作に投げられていた。


「フッフッフっ。こいつら初心者狩りをしてたからか、随分金持ってんな。武器もいいしよ。こりぁ、高く売れるぜ!」


「…僕達が負けていたら。ここに転がっているのは僕達の死体…」


当たり前の事だ。価値のあるもの。ボロ布ですら金になるなか、武器、防具、衣服に至るまで全部ひんむかれて、褌1丁、それすら無いかもしれない。これほど、無造作に扱われて最後は妖怪に食われて無くなる。骨すらバラバラになる。


「俺たちゃ、青海もいる。もっとひでぇぞ」


だてしても、だ。死んだら皆仏。今やっている行為の罪悪感を少なくする為と分かりながらも、手を合わせる。この荒れた世の中で、この心を失いたくない。長貴はそう思っていた。


「………ふん。やりたきゃやれ」


これは、考え方の違いだ。別に強制するものでもない。ただ、自分がそういう考え方であるだけ。


ふと、倒れる直家の方を見て呟く。


「お前はどっちなんだろうな?」


意識の無い直家に、返答はない。


こうして、初めての中層進出は波乱に満ちたものであったが無事に終わる。結果的には過去最高額の収入を得ることができ、また中層の恐ろしさを身を持って体感した日になったのであった。


これで、一応中層進出はおわりです。どうも私は冗長に書いてしまうようで、長くなるんですけども、なんとか終わらせることができました。まだ長ぇよ、とお思いになっている人は多そうですが。もっと文才が欲しいものです。まぁ、ただの努力不足なんですけどね。


後書きも結局、冗長になってしまいました。こんな駄文を読んで下さっているだけでも嬉しいのですが、少しでも面白いと感じ、慈悲の心が芽生えてくれるなら、感想を下さい……。


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