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朝井村到着

日が少し傾き薄暗くなって来た時間。直家達は朝に食べたお店で夕食を食べ終わっていた。


「ふう。あ、そうそう、君達の分の木刀と槍を買ってきたよ。今渡しておこう。少し値段が高かったけどまけてもらったよ」


「そうか。どうでもいいけど早く寄越せ」


「ありがとうね、お金無いから助かるよ」


それぞれ模擬戦用の木刀も槍を受け取る。とりあえず手の届く位置に槍を置いておく。猿吉は一緒にして腰に差したが。


「さて、明日の話をしよう。出発は朝の日が出る前にするのでいいかい?」


「それでいい」


「うん。問題ないよ」


「じゃそうしよう。この店は暗くなる前に締まるからね、早く帰ろうか」


店から出て、明日は朝が早いので小屋に向かい皆そのまま寝るように言って長貴が先に寝たと思ったが、直家が少し槍の鍛錬をやってから寝ると決めて外に出たら長貴が槍を振っていた。それを見た直家はもっと頑張らねばと思い、少し離れた場所で槍を振るう。少しして、寝たと思っていた猿吉が小屋から出てきて刀を振るい始める。


直家は軽くやるつもりだったが、猿吉まで出てくるのであれば話は別だ。あいつよりは早く終わってやるもんかと長貴に言われた槍の振り方、握り方を思い出しつつ槍を振るう。今度は猿吉が直家の存在に気づき直家と同じ事を思い、結局長貴が寝ようとして小屋に戻ろるまで2人の対決は続いた。


結局寝不足になったのは言うまでもない。








「2人とも起きて!時間だよ!」


「………っく」


「あー、うん。5分」


「そんな時間ない!早く起きて!」


朝起きる段階から昨日の寝不足と疲れが起き上がることを拒否していた。何とか起きた直家と猿吉だが、目の下に大きな隈が出来ていた。何故か同じ時間に寝たはずの長貴は隈が無かったが。


何とか準備を終えて少し時間が遅くなったが社山城下町を後にする。目的地は初心者開拓者がよく拠点にする朝井村だ。だいたい着くのに何とか1日でつく距離だ。当たり前だが街頭なんて無い時代だ。真っ暗闇の中歩いていくことは出来ない。なので日の出ているうちに到着したいのだ。だから、長貴は2人を全力で起こした。


「あー、頭痛てぇ」


「なんかふらふらする……」


「君たちは自業自得でしょ。体調管理なんてのも大事事なんだから。次は気を付けて」


「「はい」」


と、返事はするが同じ状況にまたなったら同じ事をまた繰り返すだろう事は明白だが。というか、長貴も同じ条件なのだがピンピンしているのは何故だろう?


「……何でアイツはあんなに元気なんだ?」


「わからない……」


3人の先頭で疲れなど感じられない様な軽快な足取りで歩いている。とてもではないが直家達と同じかそれ以上の鍛錬をやった後、同じ睡眠時間であれだけ元気なのが猿吉や直家からすれば不気味なのだ。


そんな一幕があったが基本的には特にこれと言ったことは無く、昼になるまで平和な道中だった。


「よし、そろそろ太陽が高くなった頃合だ。そろそろ少し休もう。この調子で行けば今日中に着きそうだから、持ってきた食べ物食べてしまおう」


「おっしゃ、昼飯だ。俺は白米のおにぎりだ!」


「白米って……そんな高級品買ってきたのかよ」


「ふん、たりめぇよ。飯にはこだわらねぇとな、身体が強くならねぇんだよ」


白米より玄米の方が身体にいいのだが、確かに身体の小さい猿吉ならではの考え方で、食にはこだわっているらしい。まだ、伸びると思っているのだろうか?


「てめぇ今、俺の身長の事を考えなかったか?」


「気のせいだよ。ちょっと敏感過ぎるんじゃない」


こいつ心の中読めるのかよ。一瞬ヒヤッとしたわ。何処か納得しきれてない顔で白米も頬張る猿吉に、見ながら直家は気を付けようと思う。


「ていうかお前量も多いな?食いきれんのか?」


「ふん、軟弱なてめぇとは違うんだよ」


本当に身長を伸ばすために考えつく限りの事を全て実践している感じだ。なんかここまで来ると憐れだな。多分伸びないというのに。


「うーん、確かに猿吉君の言う通り食にこだわらないと強くはなれないというのは本当かもしれないな。それに僕達は開拓者という身体が資本の大変な仕事だ。今後は無理が無ければ昼も食事をしないか?」


「俺は賛成だぜ、皆んなバカにするけどよこれでも少し身長が伸びたんだ。少なくとも俺は風邪とかの病気にかかったことは1回もねぇしな」


それは馬鹿は風邪ひかないとかの奴なんじゃと心の中で思ったが言わないでおく。何故なら直家も同じ馬鹿になってしまうから。


「俺もいいと思う。特に異論は無いよ」


「ふむ、じゃあ無理の無い程度でキチンと食事を取っていくようにしよう」


「よっしゃ、これで昼も堂々と食べれるぜ」


確かにこっちの世界に来てから一日2食というのは物凄く足りない感じがしていたので、直家としても大歓迎だ。大体、満腹になるまで食べれない様な所だ自発的に食事の回数を増やしていかないと筋肉も増えなくなってしまうだろう。


直家も背中に括りつけていた風呂敷から玄米のおむすびを取り出し食べ始める。そう言えは、昔の日本って身長が低いという話があったと聞いたことがあるような覚えがあるが、あんまり現代日本と変わらない印象を受ける。それどころか少し高いのではないか?これは妖怪やら妖力やらの影響なのか……。考えても仕方が無いことなのだが。


「グッ!モグモグ……」


「……やっぱり買いすぎだろそれは」


「……うるせぇ。やらねぇぞ」


「いや、欲しくは無いけど…」


直家もこれ以上食べると動けなるだろう。それに対しおにぎりを沢山持ってきていて、当初の予想通りかなりキツそうだ。というか、元から身体が小さいのだ食べれる量としても少ないはずなのに無理して食べている。涙ぐましい努力を……。


「別に今すぐ一気に食べる必要は無いんじゃないか?途中で食えばいいだろ。身体が受け付けてくれなくて吐いたらもったいないし。第1お前動けないだろ?」


「…………まぁ、もう出発するんだったら仕方ねぇな。後で食ってやるよ」


なんか何だかんだ言いながら融通が効かない訳では無いんだな。少し扱い方も分かってきてし。思ったより、単純な奴で良かった。


「よし、そろそろ行こう」


長貴も大体食べ終わったのか荷物を担いで立ち上がる。直家達も身支度を整えて立つ。


「大体半分以上は来ているはずだから2刻後には着くはずだ」


ちなみに長貴は地図などの超高級品などは持っていない。キチンと整備された道を歩いているのでその道を真っ直ぐ行けば必ず着くのだ。そういった道の為に今どのくらいの距離にいるかを示す一里塚の用なものまである。また、直家達は高くて使えないが急いでいる人や金持ちの人などは社山城下町の所で馬を借りて朝井村まで行けるらしい。詳しいことはよく分からないが元の世界で言う駅みたいなものだ。


そういった道の為に色んな人とすれ違う。ほとんどが社山城下町に向かう人だったが。村である程度商売をやり終わりまた仕入れに行っているのだろうと勝手に直家は予想した。


しかし、一刻も歩いてくると今度はあまり人にすれ違わなくなった。この時間から社山城下町に向かっても今日中にはつかないからだろう。そして、雰囲気も少し変わってくる。開拓地に近づく事に何処かピリピリとした空気感になって歩く人も心無しか緊張している人が多い。公道の様なところなのでまさか妖怪などは出ないが、開拓地に近づくだけでコレとはよく昔の人はこれで開拓者なんてやろうとしたのか。食いっぱぐれてどうしようも無くなったやつが仕方ないからと開拓地に行って偶然成功しちゃったって感じじゃないかな?だって正気の沙汰じゃないよ。近づこうとすら思わないよ。普通は。


本当の所は当たらずとも遠からずなのだが、関係無いので省略する。しかし、開拓者の段階である程度普通ではない事も頭に入れないといけないだろう。直家は自分自身も含めてそこが丸々と消えていた。


そして、更に一刻が経ってそろそろ開拓者の拠点である朝井村に着くだろうという頃合い。


「ん、着いたね。あれだ」


先頭を歩く長貴が立ち止まり指を指す。その指の先にかなり大きめの村があった。


「なんか俺の知っている村とは違うような……」


「それはそうだよ。この朝井村は開拓者が拠点にしている村だからね。普通の田畑を耕している村とは違って開拓地から入る妖怪の素材や肉、薬草や山菜が特産の場所なんだよ。それに商人もここに開拓者用の武器を売りに来るしね。ここでは田畑を耕している人は少ないんじゃないかな」


出石村よりも遥かに人が多く村というより町と言われた方がしっくりくる。そして、構造も違う。出石村は田畑を広げるために柵などを使わずに神社の妖怪避けの効力だけで対応していたが、ここは違う。出石村より遥かに立派な神社が立っているが村が大きく広がらずに密集して暮らしている。そしてそのまわりを丈夫そうな柵で村を囲っている。妖怪が攻めてきたとき用なのだろう。逆に言うと妖怪が攻めてくるような所なのだろう。改めて恐ろしい所に来てしまった。そんな所に商売にくる商人も商魂が逞しいと言うしかない。


「着いたんだったら早く行こうぜ。暗くなる前に宿やら何やらを済ませた方がいいだろ。俺は早く水を浴びてぇからよ」


直家も同感だ。うだるような暑い夏の中歩いてきたので汗が出て気持ち悪い。早く洗い流したい気分だ。


「そうだね。僕も少し疲れたよ」


流石の長貴も額に大量の汗が出ている。この季節の行軍は殺人的とも言える。


3人の意見が一致したからか早足で歩いていく。朝井村は丈夫な柵に囲まれているが2つ出入口がある。一つは今直家達が歩いている社山城下町に繋がる道の入口。もう一つは開拓地に繋がる入口だ。二つの入口には櫓門の様な形であり遠くを見渡せるような作りになっている。開拓地に繋がっている門は閉じているが、直家達が向かっている門は開いていて、門番らしき人もいない。面倒な手続きなどが無くて便利だ。


「あー!着いたぁ!」


猿吉が手を大きく広げて雄叫びを上げる。そんな猿吉に微笑ましそうな顔を向ける人が多く、初心者開拓者がまた来た位の感覚なのだろう。直家は全力で他人の振りをしたが。


「さて、まずは明るいうちに見て回ろう。ここにも開拓組合合所の様な所はあるはずだ。手分けして探そう」


猿吉が中央、直家が入って右側、長貴は左側と探す区間を決めて探し始める。


「あー暑い。早く見つけて水を引っかぶりたいなぁ」


そうぼやきながら、目的の場所を探す。どうもここら辺は宿屋街といった感じで人があまりいない。泊まっているのはほとんどが開拓者なので今の時間帯はお仕事の真っ最中なんだろう。


「こっちはハズレかなぁ。………あれは?」


そんな中直家の目に止まったものがある。社山城下町でも見たが時間が無く、高かったので断念した風呂屋がある。


「こんな所に……。どうやって水を調達しているんだ?温泉でもあるのか?近くに火山なんてないのに……」


無くても出るところは出るのだが、それでもかなり掘らないと出ない。見た感じ川は村の近くに無いので、そこから水を引いて温める事も出来ないだろう。ならやはり地下水かな?


「はぁ、よく分からないことを考えても仕方ないか。あればいいんだよ。ずっと水浴だったからなぁ。夏だから今は良いけども、冬は少し贅沢しても温かいお風呂に入りたいもんな」


心に留めておいて、後で長貴達にも伝えよう。ここには宿屋が多くて風呂屋があったと。開拓者組合所は無かったとも。少ししか歩いていないが見に見える範囲は全てそういった感じだ、先に歩いても多分無いだろう。時間が少し余るので近くにあった井戸により冷たい水で顔を洗い、飲む。


「ふぅ……」


一息着いて、暑くて考えるのも億劫だった頭が少し回復する。何となく猿吉や、長貴達と組んでここまで来てしまった。長貴が言うには明日から早速妖怪を狩りに行くらしい。


明日から直家の本当意味で開拓者としての日が始まる。心配事は尽きない、才能の差も見せつけられた、未だに自分自身を疑っている。それでも、長貴という頼れるリーダーと出会い、馬が合わず気にくわない猿吉という人にも出会った。1人で心細かった直家に取ってどれだけ心の支えになったのか分からない。


「だから、なんだって話だよな」


そう考えながら苦笑いをし、井戸に寄りかかっていた身体を勢いを付けて起き上がる。何を考えた所でやる事は変わらないのだ、ならばやるだけだ。ただ少し、もう少し頑張ろうという気持ちが起きるだけだ。


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