第11話 否定しない
すみません。最近話がグチャグチャになってしまっています。
猛省しております(゜O゜)\(- -;
夜空を覆う黒い雲の切れ間から漏れる月光の下、リツェアと執行者と思われる男性と白い鎧を纏った2人が屋根の上で睨みあっていた。
「逃げ回るのもここまでだ。
……貴様、死刑囚リツェア・ツェレス・クイーテルだな」
濃い目の茶髪の男性がリツェアに問う。
「……だったら何だ?」
「決まっている。神の名の下に、貴様を滅する」
男はローブの中から紫色の宝石が嵌め込まれた短杖を取り出し、リツェアに向ける。
そして、詠唱し魔法を放つ。
「第六階梯魔法〝炎槍〟」
放たれたのは槍の形をした槍。しかも1つではなく4本の炎槍がリツェアを襲った。
「第六階梯魔法〝闇壁〟」
世の常識では、属性魔法を相殺するには特殊な例外を除き同じかそれ以上の階梯魔法でなければ相殺する事が出来ない。
しかし、リツェアの前に現れた闇壁は全ての炎槍を防ぐ事が出来ず2本が彼女を襲う。
「くっ!」
後方に跳ぶ事で交わしたリツェアに騎士の剣が振り下ろされる。
素早く〝黒影の斬り裂き魔〟を発動し影から細剣を創り出し防ぐ。
だが、華奢なリツェアでは鍛え上げられた騎士の剛剣を防ぐ事が出来ず吹っ飛ばされた。
「何をしている?それでは敵に逃げる隙を与えている様なものだ」
「申し訳ありません」
頭を下げる男に歩みよる〝執行者〟の男性。
「もう良い……!
第五階梯魔法〝炎壁〟
第五階梯魔法〝風壁〟」
二重に重ねて発動した防御魔法が雷を纏った蹴りを防いだ。
火と風が混ざり合い、激しく燃え上がった炎が逆に敵の足を焼いた。
「くそがぁ!」
素早く後方に距離をとった敵を男性は見る。
そこにいたのは、顔を怒りに染めた白虎の獣人ヴィルヘルムだった。
男性は中で幾つかの可能性を考え、直ぐに結論を出す。
「お前はあの獣人の足止めをしろ。その間に魔王を仕留める」
そう言うなり、風の魔法を発動し軽鎧の騎士を連れ屋根から飛び降りた。
ーーーーーーー
「しつこい連中だ!」
一目見た時から自分の不利を悟ったリツェアは敵から逃げていた。
大罪スキルを使えば少しはまともに戦えるかもしれないが、そんな事をすれば今度こそ自分が化け物になってしまう事を感じているリツェアは逃げる事を選択した。
地下牢でスキル喪失の呪いを受けたのがここで自分の首を絞めている事に気付く。
今は騎士に飛ばされたおかげで距離を取る事が出来たが、おそらく直ぐに追いつかれる。
リツェアは冷たい壁に凭れ掛かった。
「私は……死ぬのか?」
地下牢で死刑を待つ間も明るく振る舞っていたが死ぬのが恐かった。
でも今はもっと恐い。
このまま死んだら私は何の為にこの100年を生きて来たのか分からない。
元々、勇者が死んでからの私はただ漠然と毎日を生きて来た。最近では、大罪スキルを使い奴隷の解放や傭兵として戦いの毎日を過ごしていた。そんな時、私は〝執行者〟と名乗る男に戦いを挑まれ敗れた。
しかし、男は私を殺さず恐怖だけを身体に刻み込んだ。
でも、せめて殺されるなら姉の仇であるトウヤと戦って死にたい。
その時、死角から炎槍が放たれリツェアを襲った。
「しまった!?」
考えに没頭していたリツェアは回避動作が遅れてしまった。
咄嗟にリツェアは目を閉じた。
しかし、何時まで待っても痛みは感じない。
ゆっくりと目を開けるとそこには魔力で強化された水の壁が立ち塞がっていた。
そして、背後から感じる気配にリツェアは振り向く。
そこに立っていたのは、100年前とはまるで別人の姿になった黒髪黒目の少年。
勇者 トウヤ・イチノセだった。
ーーーーーーー
俺を見ているリツェアの目は見開かれ、何やら言っている。しかし、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「こっちだ、ついて来い」
「はっ!?」
「良いから早く来い!」
走り出す俺とリツェア。
「何故、私を助けた?」
そんなの俺が聞きたい。
でも、強いて言うなら……それが彼女が俺に託した思いだからだ。
「……ヴィレアさんにお前を託されたからだ」
「姉さんに……?」
訳が分からないとばかりに俺を見るリツェア。
俺もそう思い自嘲の笑みを浮かべる。
リツェアを本気で殺そうとしたり助けようとしたり自分でもどうしたいのかが分からない。
「ヴィレアさんはお前を護って欲しいと俺に頼んだ。でも、俺は責任や使命を理由に、お前を孤児院に預けて逃げたんだ」
「……だったら、今更何のつもりだ」
「…………俺は、嘗ての勇者を否定したくないんだ。だから、今更だろうがお前を護る」
とは言っても、どうやって戦う。
騎士は兎も角、あの執行者は厄介だ。聖剣を抜くにしても考えなしに戦っては勝てる戦いも勝てない。
「……何時からだ、何時から私だと気付いていた?」
「最初からだ」
「はぁ?」
「地下牢で会った時から、お前がヴィレアさんの妹だと気付いていた」
まぁ、最初はそんな事どうでも良いと思っていたんだけどな。
「お前はヴィレアさんに良く似ているからな」
ヴィレアさんはもっと大人の女性って感じだったけどな……。
「私が、姉さんに?」
ん?今、俺の隣を走るリツェアが少し笑った気がする。
怪訝そうにリツェアを見る俺とリツェアの視線が合う。
「……私に作戦がある」