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第3話 元勇者VS白虎

昨日は私の配慮のないコメントで皆様も不快にさせてしまったことをこの場をお借りして謝罪させて頂きます。


誠に申し訳ありませんでした。


一見温厚な性格をしている様に見えるローエングリフだが、冒険者ギルドにより『破滅級』の認定を受けているという事はそれだけの事をしたという事だ。


それは、種族関係無く複数の国を滅ぼし、そこに住んでいた者をアンデッドに変えたのだと言われている。しかも、滅ぼした国の数は一桁では足りず10や20とも言われている。


これは噂なので本当の所は分からない。本人も覚えていない、と言っていた。


勇者、魔王、名のある戦士がローエングリフに挑んだが、誰一人として死の龍に勝つ事は出来なかった。


しかし、100年前に現れた勇者はアンデッドの軍勢を退け、死の龍にたった1人で戦いを挑んだ。

勇者に興味を抱いた死の龍は勇者を弟子として迎え、あろうことか孫と呼ぶ程に勇者を大切にした。


そして、勇者が仲間たちに裏切られ送還されたと聞いた龍は怒りに狂い泣いた。


多くの命を奪い、死を嗤った龍が一人の異世界人の為に涙を流した。



ーーーーーーー



先生が空間魔法で、この領域を囲ってくれたおかげで並の者ではここには入ってこれないし探知も出来ない。


俺とヴィルヘルムは間合いを広めに取り向かいあっている。


そこに先生の声が届く。


「ただ戦うのもつまらぬ。お互いに何か賭けたらどうだ?」


「賭けるって、俺たちは何も持っていませんよ?」


俺の言葉に先生は出会った頃と同じ獰猛な笑みで返した。


「命、権利、従属、身体の部位、賭けようと思えばいくらでも賭けられるぞ?」


随分と物騒な言葉を並べるもんだな。


それに、これは提案であって強制では無いだろう、と思った俺にーー


「トウヤは何を賭ける?」


ーー強制でした。てか、先生の中では決定事項の様です。


俺は一度溜め息を吐き口を開いた。


「腕か足の一本でどうですか?」

「!」

「そんな!」

「ほー肝が据わっているな」


痛いだろうが、俺には『医神の波動(アスクレーピオス)』があるから腕や足を失っても再生出来る。


‥‥やっぱり俺って屑だな。


俺は自嘲の笑みを浮かべた。


「‥‥俺は、命を賭けよう」


流石の俺もヴィルヘルムの言葉には目を開いた。


「‥‥本気か?」


「元々俺は明日処刑だったからな」


それは命を賭ける理由になるのか?


そこまで考え、命を賭ける理由は人それぞれだ、と納得した。


「脱出の為に魔力を使ったんじゃ無いのか?」


「どうだろうな」


こいつ、全然楽勝そうだな。

メデルの話しだとヴィルヘルムが魔力を使ったのはただの一度だけだ。

おそらく、魔力を殆ど温存しているな。


寧ろ、俺の方が魔力を無駄使いしている。


「互いの覚悟、この古龍ローエングリフが聞き届けた」


俺はアイテムボックスから2人に渡したのと同じ片手剣を取り出し構える。ヴィルヘルムも剣を鞘から抜く。


「では、始めろ!」


「っ!」


先生の開始の合図とほぼ同時にヴィルヘルムが目の前に迫りーー


「ぐっ!」


ーーガキィィン!


剣がぶつかり合う高い音が響く。


だが、獣人族の力を返す事が出来ず逸らすのが精一杯だ。


くそ!獣人族の高い身体能力に魔力を身体に循環させて強化しているな。


俺は一度距離を取ろうとするが、その間合いを瞬時にヴィルヘルムが詰める。


そして、再度の鍔迫り合い。


「魔導師相手に距離を取るよう事はしない」


やっぱり澤輝たちの様ななんちゃって戦士とは違うな。


「剣術も多少出来るようだな」


こうして戦うと分かる。ヴィルヘルムの豊富な魔力量と魔力感知の鋭さは厄介だ。


その時、剣ばかりに集中していて空いた腹にヴィルヘルムの蹴りが決まり吹っ飛ぶ。




「主!ローエングリフ様、主は勝てるのでしょうか!?」


メデルの問いに2人の戦いから目を逸らす事なくローエングリフは応える。


のままでは、無理だな」


「そんな!では主はーー」

「メデル、それ以上の言葉は2人への侮辱だ」


威圧の込められたローエングリフの言葉にメデルはそれ以上声が出せなくなった。


それを確認する事もなくローエングリフは今も戦う2人に視線を向けていた。




蹴られる瞬間に身体強化と後ろにわざと跳んだ事でダメージは最小限に抑えられたな。


だが、今のままじゃ勝てない。


「第三階梯魔法 〝風の刃(ウインド・エッジ)〟」


風の魔法を放つがヴィルヘルムには当たらない。


その後はヴィルヘルムのスピードを生かした剣と体術を何とか凌ぐ。


ちっ、思っていた以上に3年のブランクが大きい。


戦闘動作、反射神経、勘、どれもこれもかつての様に働かない。


それでも、何とかヴィルヘルムの猛攻を耐え抜く。


「はぁ‥はぁ‥‥」


「何でた?」


息を切らす俺とは違い、ヴィルヘルムはまだ平気そうだ。


「これだけの力を持つお前が、どうしてあの雑魚共から虐めを受けていたんだ?」


何だ、そんな事か‥‥。


「‥‥どうでも良かったんだ」


そう、あの頃の俺は自分の事なんてどうでも良くなっていた。それでも、血は繋がっていなくても俺を育ててくれた両親や支えてくれた義姉と義弟には迷惑をかけたくなかった。

海堂がどんな屑野郎でも、手を出せば家族に迷惑をかけてしまう。


だから、海堂たちの虐めにも耐えた。


こんな事をヴィルヘルムに言える筈もない。


「それが本音か?」


「‥‥そうだ」


まー、召喚される直前は思わずギタギタにしようかと思ったから結果敵に迷惑をかけずに済んだ。


結果オーライって奴だな。


精神年齢は23歳なのに、俺もガキだな。


「‥‥分かった」


ヴィルヘルムは剣を地面に刺し、掌を打ちあわせる。その姿は合掌をしている様にも見えた。


「〝魔装・迅雷〟」


ヴィルヘルムが呟いた瞬間、魔力が膨れ上がり雷を纏う。


「‥‥魔装」


獣人族固有の戦闘術で魔法を纏って戦う事ができる。身体強化も同時に行う事が出来るので、元々身体能力が高い獣人族には鬼に金棒のスキルだ。


言葉にするのは簡単だが、敵に回すと厄介極まりない。


ヴィルヘルムが地面に刺していた剣を抜く。

剣にも雷がまとわりつく。


「行くぞ」


ヴィルヘルムから先程とは比べ物にならない殺気が俺に向かって放たれる。


「!」


そして、ヴィルヘルムの立っていた地面が抉れヴィルヘルムの姿が消えーー


「終わりだ!」


ーー目の前に現れた。


しかし、俺は高速で動くヴィルヘルムの動きと剣の軌道を捉えていた。だから、その剣を逸らす事は可能だ。


剣を逸らされ隙が出来たヴィルヘルムに向かって剣を振るうーー


「ちっ!」


ーーが、ヴィルヘルムは素早く後ろに跳び距離を開ける。


「目を強化して俺の動きに反応したのか!」


「雷の魔装は、魔装の中でもダントツのスピード重視の属性だ。目の強化は当然だろ?」


「何故それを知っている!初めて見た奴が知ってる筈がーー」

「初めてじゃねぇよ」


魔装が生み出されたのは、いまから300年前。

だから、俺も何度も戦った。その中に雷の魔装を使う獣王と戦った経験もある。そいつと比べればヴィルヘルムの魔装はまだまだ未熟だ。


「この感覚‥‥懐かしい」


俺は笑っているのかもしれない。

鼓動が早まり、疲れているのにさっきより多くの物が見える。


この世界に戻って来てから感じていた違和感。

まるで、鎖に縛られている様にある筈の力が何かの抵抗を受け上手く使えない感覚が、少し楽になった。


片手剣をアイテムボックスにしまい、俺は右手を前に出し、聖剣を呼ぶ。


「万物を喰らえ【聖剣・暴食王ベルゼネス】!」


聖剣が顕現し、ヴィルヘルムに切っ先を向ける。


「来いよ」



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