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第21話 エピローグ

これで第1章終了です!


明日からは、前に書いていたメデル視点の閑話です

よろしくお願いします( ̄^ ̄)ゞ



私は、風巻雫。


一乃瀬との戦闘で敗れた私は気がつくと城の自室で寝ていた。


体を起こすとまだ少しフラフラする。


これは魔力枯渇の症状だ。


それに気付き一乃瀬の言っていた言葉を思い出す。


「魔力を喰らう、か‥‥とんでもないな」


私では全く歯が立たなかった。

しかも、手を抜かれた。


父から剣道を習い、全力で努力して来た私からすればあれは屈辱だ。


でも、不思議と怒りはそんなに湧いてこない。どちらかと言うと、これから強くなるのが楽しみなのだ。


だって一乃瀬はあんなに強い、だったら私だってもっと強くなれるはずだ!


その時、部屋の扉がノックされ侍女がご飯を持って入って来た。


私はそれを残さず食べ、人を探して部屋を出た。


私が城にいるという事はきっと深海が運んでくれたのだと思いお礼をする為に探していた。

しかし、城の中がいつもより騒がしい事にすぐ気がついた。


「何かあったのかな?」


すると、目の前から深海がやって来るのが見え声をかける。深海もこちらに気付き早足で近寄って来る。


だが、その顔色は悪い。


やはり、なにかあったようだ。


「風巻さん、話がある」


それだけ言うと深海は歩き出してしまった。


相変わらずだな。


深海とは地球でも何回か話した事があったが、口数が少ない、無駄な事は話さない男子、迫力がある顔といったイメージだ。


まぁ、それは間違っていなかったんだけどね。


女子たちは深海の事が恐いし何を考えているのか分からない、と言っているが彼はきっと不器用なだけなんだと私は思う。


まだ、そこまで親しくない私でも深海の事は信頼が置ける人だと思い始めている。



着いて行くと深海の部屋に案内された。


椅子を勧められ座る。深海はベッドに座った。


さて、話って何かな。


「‥‥実は、風巻さんが眠っていた間に色々な事が起きた。落ち着いて‥聞いて欲しい」


「?」


「1つ、地下牢の奥にいた死刑囚が脱走した。

2つ、召喚の間にいた澤輝君たちが消えた。

3つーー」

「ーー消えたってどういうこと!?」


思わず声を上げてしまった。

でも、深海に無言で見つめられ事前に落ち着いて聞け、と言われていた事を思い出し恥ずかしくなる。


「‥‥ご、ごめんなさい。続けて」


「‥‥分かった。3つ、澤輝君たちが森の中で見つかった。奇跡的に死者はいなかった」


深海の死者がいなかった、と言う言葉を聞き一瞬安心した私は次の言葉に驚愕した。


「4つ、今回の事件には‥‥凍夜君が絡んでいるらしい」


声が出なかった。

いや、何と言えば良いのか分からなかった。


深海も暫く黙り、口を開いた。


「‥‥その、どうする?」


「それは、私たちの知る情報のこと?」


深海は頷いた。


‥‥私たちの知る情報。

私たちを遥かに凌ぐ魔力、そして魔力を喰らう本物の聖剣、これだけでも充分過ぎる情報だろう。


「‥‥今は、まだ言わない方が良いと思う。余計に混乱させるだけかもしれないしね」


「‥‥分かった」


私も確認しておく事が1つある。


「深海はこれからどうするの?」


深海は私から視線を外す事はなく、はっきりと言葉を紡いだ。


「俺は、強くなる」


たったそれだけだったが、私には深海の葛藤や覚悟が何となく分かった。


何故なら、私も考えは一緒だからだ。


「なら、早速明日から訓練の量を増やしましょう」


今は夜なので訓練とクラスメイトたちからの話は明日聞こうと2人で決め、深海の部屋を出ようとして振り返る。


「そういえば、私を城まで運んでくれたのは深海で良いの?」


それを聞いた瞬間、深海の顔が真っ赤になった。


あれ、どうしたのだろう?


「い‥いや、その、変な事は、何もしてない、し俺も魔力枯渇でフラフラ、だったしーー」


どうやら深海は私が怒っているのだと勘違いしているようだ。


「ーーその、ごめんなさい!」


そして、突然土下座をした。


流石にここまでは私も予測していなかったので、最初は固まってしまったがだんだんと面白くなって来た。


「ふふふふ、私は怒ってないわ。寧ろ、運んでくれてありがとう」


深海に微笑みそのまま部屋から出た。


扉を閉めた時、部屋からボッと音が聞こえた気がするが気の所為だよね。



部屋に戻った私は中々眠れず、一乃瀬の事ばかり考えていた。


一乃瀬は、無口だし、愛想はないし、目付きも悪い、口も悪い、顔が良いのにそれ以外で相殺どころかマイナスにしてしまっている。でも、一乃瀬には不思議な魅力があった。触れたものにしか分からない澤輝の周りを惹きつけるカリスマ性とは異なる魅力。


それは、まるで冷たく硬い氷に包まれたその奥にある何か。触れる事など出来ない。それでも、とても魅力的で目が離せなくなる程に惹きつけられる。きっと、深海もその何かに惹かれた1人なのだろう。


私と一乃瀬の出会いはたわいもないものだった。相手が覚えているかも分からない。

多分一乃瀬の事だ、忘れているだろう。


それでも、私には充分だった。


部屋のカーテンを開け、夜空に浮かぶ満点の星空を見上げる。


本当に綺麗だ。


この星を一乃瀬も見てるのかな?




ーーーーーーーー



「ヴァーデン王国に着いたばかりで何処にいるのかと思えば、‥‥夜空が好きなのか?」


リツェアの声に視線を前に戻す。


「‥‥まぁな」


俺は星座や天体に詳しい訳ではないが、見ていると何だか落ち着く。


「主、お風呂の用意が整いました」


「お、では私が1番風呂だな!」


「あー!リツェアさんは後からですよ!」


はぁー、騒がしい奴らだ。


そんな事を思いながらも俺は再度夜空を見上げる。


暗い夜空に散りばめられた星々とそこに浮かぶ大きな満月を俺は暫く見上げてーー


「おい、あの2人を黙らせろ」


ーーいる事は出来ず、今日の事もあり不機嫌なヴィルヘルムに言われ庭から家の中に戻るのだった。

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