表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

元勇者のステータス

3年前、俺、一乃瀬凍夜いちのせとうやは中学3年生の夏、ある異世界に召喚された。


そこでは人間が他種族と長い間戦争を続ける世界だった。俺はそこに勇者として召喚され、色々あったが結局は戦争を止める為に旅に出たのだ。


勿論、戦うのは怖かったし敵だとしても他人の命を奪う事はあの時の俺には辛い体験だった。


敵に剣を向け、魔法を放つ度に体が震え、言葉に出来ない罪悪感に毎日のように蝕まれ眠れない日もあった。


最初は命の奪い合いの毎日が嫌で何度も逃げたいと何度も思った。しかし、旅の途中で出会う人々を見て少しずつ『助けたい』と思うようになった。


それから、旅を続け戦争を撒き散らす魔王達を倒す事で戦争は終結した。


その時には15歳で召喚されてから5年が過ぎ、20歳になっていた。


俺は、これでやっと世界が平和になる、そう確信していた.....あの時までは。


戦争を終結させ、他種族の王達と和平条約を結び人間の国に戻った俺を待っていたのは、卑劣な裏切りだった。


その結果、俺は全身に深手を負いそのまま元の世界に送還された。


気がつくと俺は異世界に召喚される直前の年齢に戻っていた。


だが、俺の姿は同姓同名の別人の様に変わっていた。茶髪だった髪は黒く染まり、肌も引きこもりの様に白くなっていた。顔立ちは、一般的ものから若干イケメンに近付いた感じだから、まぁ良い。


不思議な事に、周りの連中が俺の変化を対して気にする事はなかった。


両親でさえも、あれ?イメチェンでもしたの、みたいな感じだった。


しかし、それから俺は他人がどんなに苦しんでいよう何も感じなくなった。そして、今なら命を奪う事も躊躇なく出来る確信が持てる様にもなった。



ーーーーーーー



『目覚めなさい』


無機質な声によって、光に包まれ失った意識が目覚める。


霞んでいた視界が見える様になると空中に浮遊する水晶玉を囲む様に俺も含めたクラスメイトが立っており、周りは何もない白い空間が広がっていた。


感覚的に体に異常は感じられないが、一応触って確かめようと腕に力を込めたのだが、腕はピクリとも動かなかった。首から上は動くが、声も出す事が出来ないようだ。


『初めまして、異世界人の皆さん。これより皆さんの現状などについて説明させて頂きますので、勝手ながら体の自由を奪わせて頂きました。』


声は水晶玉から聞こえて来るが、感情は一切込められておらず、まるで原稿を読み上げているようだ。


生徒の数名が叫び声を上げようとしているのか、口をあけたり、目を血走らせて何事か言っている。中には泣いている奴までいる。


『突然ですが、皆さんは異世界ルーファスのとある王国に召喚されています。ですが今のままではその肉体が、ルーファスに存在する魔素に蝕まれ死んでしまいます。なのでこのような空間に皆さんを呼び寄せました。あぁ、召喚は決定事項ですので変更は出来ません。』


どうやら、俺達がこれから行く世界は前に俺が勇者をしていた世界で間違いないようだ。


『今から皆さんの肉体を異世界ルーファスの世界に適合させます。これは世界の盟約によって決められているので、早速適合を開始いたします。』


水晶玉はそう言い終わると即座に詠唱を唱え始める。すると、足下に魔法陣が出現し光が俺たちを包み込む。その瞬間、


《肉体の適合が完了した事により能力が解放されました。更に、特殊条件を達成している為、固有スキル『真・魔力支配』を取得しました。


複数の上位者の介入を確認・・・・。上位者との神力の融合が確認されました。それにより、極限エクストリームスキル『医神の波動(アスクレーピオス)』を取得し『全能なる魔術師オール・デウス・ザーヴェラー』を再取得しました。』


『称号『異世界人』『再臨の勇者』『医神の恩恵』を取得しました。称号『再臨の勇者』を取得した事で、固有スキル『聖剣の加護』を取得し、『聖剣』の使用が可能になりました。》


頭の中に直接、機械的な声が聞こえた。


『これで肉体の適合は終了しました』


相変わらず呆気ないな。


・・・・ってか、気になる事がいくつかあるが、気にしてもしょうがないか.....。


しかし、何はともあれ前に持っていた極限エクストリームスキルをまた取得出来たのは嬉しい。


極限エクストリームスキルとは、まさにスキルを超えたスキル。人が、奇跡、神業、神術と呼ぶ人智を超えた力を宿す。

俺が前に召喚された時は、最早神話などのお伽噺の中だけのスキルだった。


その為、余計な混乱を防ぐ為にも極限エクストリームスキルを持っている事は信頼していた仲間たちと一部の者しか知らなかった。


『皆さんが取得された筈の固有スキルは、異世界転移する者なら必ず得られる能力のことです。その力は人それぞれで、どのようなスキルを取得するのかは私でも分かりません。異世界ルーファスでは100人に1人が何かしらの固有スキルを生まれながらに取得し、他には何かしらの条件を満たすことで取得する事がございます』


『固有スキル調べる場合は自身でステータスと念じることで現在所持している固有スキルなどを確認できます。そしてその固有スキルの効果を知りたいとさらに念じますと、その固有スキルの能力などを確認できます』


水晶玉の言葉を聞くとクラスの数人が早速念じたのか視線を何もない空間を文字を読んでいるように動いている。


固有スキルの強さは自分のステータスを見た奴の反応を見ればだいたい分かるな。中には、弱すぎて顔面蒼白の奴もいるが、御愁傷様だ。


周りの観察をだいたい終えた俺もステータスと念じる。


ーーーーーー


名前 トウヤ・イチノセ

種族 人間


極限エクストリームスキル

全能なる魔術師オール・デウス・ザーヴェラー

医神の波動(アスクレーピオス)


固有スキル

『真・魔力支配 【覚醒レベル:1】』

『聖剣の加護』


称号

『異世界人』『再臨の勇者』『医神の恩恵』



ーーーーーー


ステータスを確認した俺は早速念じ極限エクストリームスキルと固有スキルの効果を表示させ、称号も問題なく効果が表示された。


全能なる魔導師オール・デウス・ザーヴェラー

効果

・魔法を所得するのに必要な条件に関係なく魔法を取得する事が出来る。

・全魔法系スキルの取得速度が大幅上昇。

・魔法の成長速度が上昇する。

・魔法の威力や効果が上昇する。

・魔法を発動する際の対価が減少する。


《封印状態》


医神の波動(アスクレーピオス)

効果

・受けたダメージを自動回復出来る。

・癒しの波動を放つ。効果範囲と回復値は消費魔力により変わる。

・他者への発動の際に触れていなくても発動出来る。

・失った部位も再生出来る。

・呪いや病苦も治癒させる事が出来る。


《封印状態》


極限エクストリームスキル『全能なる魔導師オール・デウス・ザーヴェラー』は一見魔法系スキルを所得しやすいだけの便利なスキルだ。前の俺も最初はそう思った。


だが、異世界ルーファスでは種族固有の魔法がある。最も有名なのは上位の竜や竜の血を引く一族しか使えない竜魔法やエルフ族だけが使える精霊魔法などだろう。しかし、『全能なる魔導師オール・デウス・ザーヴェラー』を持っている俺はその制限を超えて魔法を取得出来るのだ。


これだけでも十分に有能なスキルだ。


そして、どうやら新しく手に入れた『医神の波動(アスクレーピオス)』もなかなか優秀な極限エクストリームスキルのようだ。


呪いや病苦は回復魔法では治す事が出来ないのでいざという時は便利だな。


しかも、まだ両方とも封印状態とは何とも頼もしいスキルだ。


次は、固有スキル『真・魔力支配』を見る。


『真・魔力支配』

効果

・魔法の発動速度が上昇する。

・魔力を効率的に使用できる。

・魔素を自らの魔力として使用できる。しかし、身体に溜めておく場合は苦痛が生じる。

・【覚醒レベル】が上昇することで、かつて取得していた魔法が解放される。


どうやらスキルにある魔力操作の上位互換のような能力だ。そして、【覚醒レベル】のレベルを上げる事で、俺の身に付けていた力が解放されるのだろう。


『聖剣の加護』は聖剣を抜いている時にのみ発動する固有スキルだ。だから、今の所『聖剣』を使うつもりがないので効果の確認は今度するか。


次に称号の確認をしようとした所で水晶玉が喋り出した。


『私から教えられる事は以上ですので、早速皆さんを異世界に転送させて頂きます。』


すると水晶玉は再度詠唱を唱え始めると俺達の足下に魔法陣が出現し輝きを増して行き.....俺以外は異世界に旅立った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ