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第13話 深海と元勇者

本日2つ目です(゜O゜)\(- -;


深海くん視点でちょっと書いて見ました。

俺の名は、深海庸平。

今俺は、小学校からの幼馴染と剣を構え向き合っている。


本当はこんな事したくない。

なのに、どうしてこんな事になったのだろう‥‥。


最初のきっかけは、あの異世界召喚だ。


俺は何が起こったのか分からず、ただ呆然と女神を名乗る水晶から聞こえる声と世界が変わり澤輝君の声とそれに応えるクラスメイトの声を聞いていた。


何度も夢だと自分に言い聞かせても、目の前の光景がクラスメイトの声が、これがどうしようもない現実なのだと無情にも突き付けて来る。


俺は別に地球での平凡な毎日に嫌気がさしていた訳でもないし、寧ろ家族やクラスメイトと過ごす毎日に満足していたんだ。


だから、俺はこんな召喚望んでいなかった。


押し寄せて来る負の感情を何とか抑えようと、地球にいた頃から最も信頼を寄せている友達ーー凍夜君を探す。


凍夜君はクラスメイトの1番後ろの方で冷静に周りを観察していた。


俺はその姿を見て何故かホッとした。


しかし、話しかけようと近付くにつれ、凍夜君が海堂に殴られている時の光景を思い出し、今までの自分が行っていた行動が頭の中で蘇る。


「‥‥ぁっ」


俺は何で助けなかった‥‥?


俺は大切な友達を見捨てて、一体何をしていたんだ‥‥?


俺や家族の大恩人で、俺の大切な友達に、俺は何て事をーー。


後悔が俺の心を満たし、次に燃える様な自身への怒りに変わった。そして、いつの間にか進んでいた足は止まり、拳を掌が白くなる程に握り締めていた。


それからの日々はどうにか謝罪する機会を探っていた。そして、召喚から7日目に凍夜君を建物の裏に連れて行く海堂たちの姿を見た。


あいつらっ!


気付くと俺はそちらに向けて歩いていた。


その隣をいつの間にか、クラスメイトの風巻さんが歩いていた。


俺たちは会話をする事はなく、凍夜君が連れて行かれた建物の裏に向かって進んだ。


そこで目に入ったのは、海堂が凍夜君に初めて見る火の魔法を放つ所だった。


俺は咄嗟にアイテムボックスから、最近使っている槍を取り出し魔法に向かって放った。

槍は『戦の武皇(アー・レクス)』の補正を受けている事もあり、見事に魔法を貫いた。


その後、何とか凍夜君と会話をしたが、彼は俺たちを側に置きたくない様だった。


そうしている内に、凍夜君は城の中に入って行ってしまった。


「‥‥はぁー、俺は」


結局謝れ無かった。


その時、隣からチョンチョン、と突かれたのでそちらを見る。


そこには、クラスNo. 1美少女、学校の女神など、様々な二つ名で呼ばれる風巻雫さんが俺を見上げていた。


さっきまで全く意識していなかったが、一度意識してしまうと胸がドキドキと高鳴る。


俺を見上げる綺麗な黒目、僅かに汗をかいている首筋、服を押し上げる胸ーー


目のやりばに困る!


誤解がない様に言っておくが、俺は彼女いない歴=年齢。つまり‥‥18歳童貞だ。


そんな俺からしたら、今の状況は、ヤバイ!


そんな事を考えてるとも知らず、風巻さんは平常運転で俺に話しかけて来た。


「彼は相変わらずね」


「‥‥あ、あぁ」


あーもう!どうして俺はいつもこんな無愛想な返し方しか出来ないんだ!


だから、周りから何を考えてるか分からないって言われたり、恐がられるんだろうが!


「それにしても、深海は一乃瀬と仲が良かったのね」


そう言われた瞬間、俺は後悔や自己嫌悪、自分への怒りの所為で顔を顰めてしまった。


「……幼馴染だ」


「そうなの」


気を使ってくれたのか、それ以降風巻さんが俺と凍夜君の事について聞いて来る事は無かった。


その後も2人で話しながら城の周りを歩いていると、凍夜君が城門から出て行くのが見えた。


俺たち異世界人は行動の制限を受けてはいない。


でも、妙な胸騒ぎがした。


「追ってみる?」

「勿論だ」


珍しく俺は即答していた。


俺たちも凍夜君の後を追い城門から外に出る。


それから先に、恐怖と絶望が待ち構えているとも知らずに俺たちは歩き出した。




向かっている方向から何となく王都の外に向かっているだろう事は予想できた。


しかし、城壁の外の魔物は強い。召喚されて2日目に、魔物との戦闘を見せて貰ったが、正直戦闘に特化した固有スキルを持つ俺でも勝てるか分からない。


そんな危険地帯に、回復の固有スキルしか持たない友達が行こうとしている。

声をかけ止めるべきだと距離を詰めようとした所で、凍夜君は道の脇道に入って行った。


俺は友達が外に向かっていないのだと思い安心した。


そして、俺たちも脇道に入り進んで行く。


道幅は奥に行くほど広くなり、その奥は人気が全くない。


その時、俺の勘が危険だと警報を鳴らしたが、既に遅かった。


「‥‥よぅ、人を尾行するとは良い趣味してるな」

「「!!」」


角を曲がった所には、凍夜君が俺たちを待ち構えていた。


驚く俺たちに凍夜君は刃物の様な光を宿した瞳で聞いてきた。


「それで、俺に何の様だ?風巻、深海」


「いや、私たちは、その、何となくーー」

「帰れ」


刃物の様な光を宿した瞳が凍えるような冷気を放っているように感じ、無意識に体が震えた。


「これ以上俺に関われば、容赦しない」


城で話した時とはまるで雰囲気が違う。


それでも、


「‥‥断る」

「私も、ここで退く訳にはいかないわ」


「‥‥ここで、凍夜君を見失ったら.....2度と君に届かない気がする」


ここで少しだけ凍夜君の放っていた冷たさが緩んだ。


しかし、次の瞬間、二つの魔法が発動された。


「‥‥はぁー、しょうがねぇな。

第三階梯魔法〝静かなる音(サイレント)

第四階梯魔法〝濃霧ミスト〟」


まずこの場を音が漏れない空間に変わり、水の第四階梯魔法〝濃霧ミスト〟が俺たちを囲む様に現れ、外側からの視界を封じた。


魔法の連続発動に、この領域を作り出す程の高レベルな魔力操作。


風巻さんも驚きで目が見開かれている。


「何ていう魔力操作、しかも第四階梯魔法まで.....」


「‥‥!?」


驚いている俺たちを尻目に、凍夜君は自分を抑えつけていたスキルを解放した。


「〝実力偽装〟、〝魔力偽装〟解除!」


その言葉と同時に、凍夜君から放たれる魔力が物理的な圧力となり俺たちを襲った。


「‥‥くっ」


「何て魔力量なの!?もしかして、澤輝以上ーー」

「はぁ?俺をあんな三流エセ勇者と一緒にすんじゃねぇ!」


圧力に敵意が混ぜった。


それだけで俺の息は荒くなり、足が震える。


恐い。頭で理解する恐怖とは違う。俺の体と魂が凍夜君に怯えている。


「どうした?俺を止めるんじゃないのか?」


その言葉に反応し、俺は直ぐ動ける様に少し大きめの片手剣をアイテムボックスからスキルで瞬時に装備し構える。


隣で風巻さんも武器を構えたのを感じた。


「ふーん、構えは上々、戦意はギリギリ及第点、覚悟は合格ラインだな」


武器を向けられているにも関わらず、凍夜君は気にした様子もない。


確かに物理的な距離はそう離れていない。

だが、そこにあまりにも圧倒的な開きがある様に俺は感じた。


それでも、目の前に立つ凍夜君だけを見て剣を構える。


正直、目線を外したら腰が抜けそうだ。


「お前らの覚悟に僅かな敬意を表し、俺も少しだけ全力を出そう」


「「!!」」


今、何て言った?


俺の額に大粒の汗が流れる


これ程の威圧を放っておいて、まだスキルを何一つ発動していないのか。


ここでやっと俺は理解した。

俺たちが今対面している人物は、自分程度の矮小な弱者では触れる事さえ許されない、絶対強者なのだと。


そして、自分の力の全てに絶望した。


何て小さな力なんだ。


俺はこの異世界に召喚された事を不快に思う裏で、力を貰った事を喜んでいたのかもしれない。


だが、今やっと分かった。


俺は、周りのクラスメイトよりほんの少しだけ強い力を貰い、自惚れていた井の中の蛙、愚かな子供だったのだ。


そして、また現実は俺に無情にも突き付ける。


俺はあの時と何も変わっていない。


瞬き一つせず見ていた凍夜君の突き出した右手に、魔力が集まり剣の姿に変わって行く。


そして、あの言葉が紡がれた。


「 底なき欲望宿りし聖剣よ 我が手に顕現せよ!

万物を喰らい尽くせ【聖剣・暴食王ベルゼネス】 !!」


始まった。


一瞬にして長い、俺の絶望の瞬間が。



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