第12話 勇者が与えるモノ
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100年前に行われた人間連合軍による神導の勇者討伐作戦。
それは、各国の精鋭たちが集まり、力に溺れ魔へと堕落した勇者を正義の元に裁く戦い、と本の中に書かれているが戦闘で多くの国の精鋭たちが死に生き残った者たちも戦士や魔導師としての道を歩む事、あるいは極める事を諦めた。
その理由は単純。
身体と心に刻み付けられた恐怖と絶望だ。
人の領域を超越した魔法、自分とは次元が違う存在が放つ圧倒的覇気、全てを消し去る聖剣。
自分がどんなに努力しても、決して超えられない壁に絶望し、その全てが彼らの理解を超え心に恐怖として刻み付けられた。
特に、戦士や魔導師を辞めた者たちは口を揃えてこう言った。
「自分たちが今まで信じて築いた全てが、1つの魔法、剣の一振りの前に打ち砕かれた。‥‥‥俺 (私)は、この程度の力を誇って、一体何がしたかったんだ」
と。
そして、他にもこう言う声も多く聞かれた。
「あの聖剣は化け物だ!」
と。
第3者が聞けば何を言っているのか、理解出来ない。聖剣が強力な武器な事は、多くの人々がお伽噺や実話を通して知っている事だ。
しかし、だからといって見てもいない事を信じられる程、人間は甘くはない。「剣が化け物?剣が生きている訳でもあるまいに」と、良い笑い話しになるだけだっだ。
そう、つまり神導の勇者が振るった聖剣の恐ろしさを知っていたのは、その戦闘に参加し、生き残った者たちだけなのだ。
何故なら彼はその力を嫌い、否定し、滅多に抜く事が無かったからだ。
故に、神導の勇者の記録の殆どにその聖剣は登場しない。
だが、今 100年の時を超え、聖王国の首都ティファナにその聖剣が顕現した。
「底無き欲望宿りし聖剣よ 我が手に顕現せよ!
万物を喰らえ【聖剣・暴食王】!!」
顕現した聖剣は、白い刀身の真ん中に漆黒の線の模様が入っている事以外変わった所はない。
俺はこの聖剣が嫌いだった。
これは己の欲望の為に全てを喰らう力。かつての勇者だった俺は、奪うのではなく護る為の力を望んでいた。
しかし、今の俺は勇者じゃない。護るべき人も背負う責任もない。だからこそ、俺はこの聖剣を否定したりしない。
「聖剣!?澤輝と同じー」
「だから、俺をあんな三流エセ勇者と一緒にすんじゃねぇ!!」
澤輝のあれは聖剣じゃない。
何故なら聖剣はスキルではないからだ。幾つか説はあるが、歴史の中で全く同じ聖剣が存在しない事から、聖剣とは勇者の域へと達した人間の魂が具現化した姿だと言われている。
事実、俺のステータスには聖剣は表示されていない。
「それに、澤輝が使ってんのは聖剣じゃねぇよ」
「‥‥どういう事だ?」
「お前らに教える必要はない」
さて、そろそろ本当に時間がないな。
「一瞬で終わらせる」
「来る!」
「‥‥!」
2人の構えに戦意が宿る。
何をしても、無駄だ。