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第7話 地下牢



聖王国の首都ティファナの王城の地下。


罪を犯した罪人や他種族に拷問や処刑までの間投獄しておく場所、地下牢だ。


その地下牢の奥にある特に厳重に魔法によって封じられている2つの牢屋の中には、魔族の少女と獣人の男性が鎖に繋がれていた。


「貴様の処刑は明日だったか?」


少女の声に男性は閉じていた目を僅かに開く。その目はかつて青空のように澄んでいたが、現在は怒りや憎悪によって濁っている。


「3日後だ」


獣の口が開き、無愛想に応える。


「ククク、では、賭けは私の勝ちだな。私の処刑は4日後の昼だからな!」


少女の勝ち誇った声が地下に響く。


「煩い」


男性はまたもや無愛想に応えた。


だが、少女の方は気にした様子もなく笑っている。


「まぁ、お互い死ぬのだ。そうカリカリせず仲良くしようではないか」


「断る‥‥。俺は、魔人族が嫌いだ」


「カッカッカ!そうか?私は、獣人族の事は嫌いではないぞ」


「チッ‥‥」


舌打ちをし、反対側の牢屋の中で自分と同じように捕まっている少女を睨む。


「おー、恐い恐い」


「‥‥クソッ。‥‥人間共、絶対に許さねぇ」


男性の握りしめた拳から血が滲む。


その時、男性の耳に聞きなれない足音がこちらに近付いて来るのが聞こえた。


少女も気が付いたようで、先ほどの飄々とした雰囲気はなくなっていた。


そして、その足音は牢屋の前に来て止まった。


濁った目で男性は、その者を見る。

そして次の瞬間、その目は僅かな驚きに見開かれる。


そこに立っていたのは、どうにもこの場に似つかわしくないと感じる黒髪黒目の少年とまだ幼く見える白髪赤眼の少女だった。


2人から目が離せなくなっていると、黒髪の少年が魔法を発動させたのを感じた。


「提案なんだけどさ、お前ら俺に協力しないか?」




ーーーーーーー



召喚されてから5日間。


俺たちは訓練や授業を受け異世界の常識について学んだ。


その合間は、最近過激になった海堂たちの虐めを耐え抜きながら、この王城の内部に付いて調べていた。


と言っても100年前に何度かこの城に招待されたことがあったので時間はかかったが思い出す事が出来た。構造もどうやらあまり変わっていないようだった。


そして、案外簡単に目的の場所を見つけ、騎士たちの交代の時間を見越して中に入った。


その場所は王城の地下牢。


地下牢は、空気が悪いが思っていたよりは清潔だった。


だが、薄暗く、ジメジメしており、1つ1つの牢屋が必要最低限の大きさであり、圧迫感を感じる。牢に入っている罪人たちの呻き声とも取れないような声が先ほどから聞こえる。


ここで寝泊まりはしたくないな。


「気持ちの悪い場所ですね」


俺に声をかけたのは、白髪赤眼の幼女にして白蛇の聖獣メデルだ。


報告に戻った次の日に呼び出すと何故かこの姿で現れた。事情を聞いてみると、アスレティアから姿などを偽る為のスキルを幾つか貰ったの出そうだ。


「嫌なら、帰って良いぞ」


「その程度の理由で、僕である私が帰る訳には行きません」


そして、ついでに服も貰って来たそうなのだが、何故あえてパジャマを着ているのだろうか?


それとも、そういうのしか無いのか?


パジャマは薄緑色を基調とした落ち着いた物だが、アスレティアの趣味と思われるリボンの装飾がしてある。


‥‥果たして寝巻きであるパジャマにリボンの装飾は必要なのだろうか?


俺には分からん‥‥。


「分かった。なら、さっさと用事を済ませるか」


「はい。こんな気持ち悪い場所早く出ましょう!本当に気持ち悪い」


どんだけ嫌なんだよ。


ところで、そんな場所にどうしてわざわざ俺たちが来たかと言うと、簡単に言えば聖王国に嫌がらせをする為だ。


俺は近々この国を出るつもりだ。


だが、普通に逃げては面白くないし、追っ手がかけられるかもしれないので手を打っておく。


奥へと続く石造りの道を脇目を振る事なく進む。

この作りの牢屋は、奥に行けば行くほど罪が重い奴がいるのが常識だ。


だが、それは聖王国にとっての罪人であるから他種族の場合が多い。

だから、気が狂った人間よりも話しが通じる可能性がある。



地下牢の奥。


そこには向かい合う様に2つの牢があった。


見た目は、今まで通って来た牢屋より少し広い事以外同じだ。


だが、魔法に精通している俺がこの牢を見れば魔法が込められている事が分かる。更に、牢屋だけでなく罪人を繋ぐ鎖と手枷にも幾つもの魔法が込められている。


『主』


頭にメデルの声が響く。


これが、アスレティアから貰ったスキルの1つ『念話』だ。


ちなみにこの数日で俺も取得している。


一見便利そうだが、遠くに飛ばすには魔力を相当使うので一言に便利とは言えない。


『何だ?』


『あの鎖と手枷は魔法以外にも呪いがかけられています』


数日話して知ったが、メデルは頭が良く知識も豊富なので色々と俺の知らない事を教えて貰った。


『何の呪いか分かるか?』


『‥‥おそらく、スキルを喪失させる類のものかと』


喪失か、厄介な呪いだな。

喪失とは、耐性スキルやスキルのレベルを低下させ、喪失させてしまう強力な呪いだ。ただし、固有スキル以上のスキルを喪失させる事は出来ない。


『分かった。今後も気付いた事があれば教えてくれ』


まっ、呪いを消すだけなら簡単なんだけどな。


『お任せ下さい』


メデルは見下ろす俺に目礼をする。


うーん、最近メデルの忠誠心が上がっている気がする。‥‥気の所為だよな。


ここで、一旦メデルとの念話に区切りをつけ牢屋の中の2人を見る。


左の牢屋に入っているのは赤髪に金色の瞳の少女だ。

おそらく魔力からして魔人族だから見た目では年齢が分からないが、体格はメデルが小学生低学年くらいだとしたら、こいつはギリギリ中学生くらいだろう。


顔は整っているし、女性の特徴的な部分も身長のわりには適度にある。


次に右の牢屋の中を見れば、獣と人を合わせた様な生物、獣人がいた。白虎の獣人は手枷と鎖によって繋がれていた。獣人の男の鍛え抜かれた体には、魔人族の少女よりも拷問で受けただろう傷が多く、その瞳も濁っている様に見えた。


こっちは期待薄だな。


今の所、2人からは殺気や敵意は感じない。


様子を見ているんだろうな。


俺は〝静かなる音(サイレント)〟を発動する。前の様に、魔力にモノを言わせて無理矢理発動した訳では無いので精度は高く効果は充分期待出来る。


俺はあまり交渉が得意では無いが、やれるだけやってみようと口を開く。


「提案なんだけどさ、お前ら俺に協力しないか?」


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