4話 門番
今回もゆったりお話が進みました。
やっとマスカレイド到着です。
「……きろ、お……だ、シノ……」
揺すられる感覚に私の意識が浮上する。ぼんやりとした視界に誰かの顔が映る。
「なーにーお母さん。今日は休みなんだからダラダラさせてよー」
「誰か母さんだ。起きるんだ、シノン」
「あと5時間」
「日が暮れる」
するとビシッという音とともに私の額に凄まじい痛みが走った。
「いったぁぁあああい! デコピンすることないでしょお母さん!」
「だから誰が母さんだ。俺はお前を育てた覚えはないぞ」
「うーうー」
あまりの痛さに呻き声しかでない。絶対額赤くなってるよね、破壊力が半端ない。でも痛さで完全に眼が覚めた。
「やっと目覚めたか。今は門で検問を受けるところだ。後少しで俺たちの番だ」
レグルスの視線の先をみると、二組が私たちの前に並んで門番らしき人が検問をしていた。
「レグルス、降ろして。あともう大丈夫だよ」
するとレグルスは暫く考えたあと頷き、私を降してくれた。
「勝手に一人でふらふらするなよ。お前はすぐにトラブルに巻き込まれそうだ」
トラブルって……。私は一体にレグルスに何だと思われてるんだろ。私日本では問題児じゃなかったんだけど。そんな主人公体質じゃないよ私は。
「拗ねるな」
レグルスは面白いというような顔をして私の頭をぽんぽんと優しく撫ぜた。レグルスって人の頭を撫でる癖でもあるのだろうか。というか私のこと子ども扱いしてない?
暫くすると、検問は私たちの番になった。門番はレグルスを見ると吃驚としていた。
その門番を私はしげしげと見つめる。くすんだ鳶色の柔らかそうな髪と瞳をした、少し無邪気さが感じられる明るい青年だった。かわいらしいワンコ、それが私の第一印象。私と同じくらいの歳だろうか。
「ルージェミアさん! 今回はいつまで町に滞在するんです?」
「暫くはいるつもりだ」
「珍しいですね! こっちとしてはAランクの冒険者に滞在してもらえるのはありがたいですけど」
そう言った後、門番は隣にいる私に視線を向けると目を見開いた。
「レグルスさん、こちらのお嬢さんどうしたんですか? ルージェミアさんが女性を連れてる所なんて初めてみましたよ」
「拾った」
「いや、そんな犬猫を拾ったみたいに言わなくても……」
確かに拾われて保護されたわけだけどもっと言い様があるだろうに……。門番さんも苦笑しちゃってるし。
とりあえず名乗っておこうか。
「えっと、シノン・リーンミヤです。森で迷っていたところ、レグルスに拾われて保護されました」
「森で?! それは大変でしたね。俺の名前はルッツと言います。ルッツって読んでください。いやー、それにしてもシノンちゃんすごいですね」
感慨深げに見つめられるものだから私は首を傾げた。というかちゃん付けなんですね。
「ルージェミアさんを呼び捨て出来るなんてルージェミア夫妻ぐらいなんでよ? それを君みたいな女の子が……」
え? どういうこと、という表情でレグルスの横顔をみる。しかし反応はなかった。それに夫妻って、レグルスのお父さんとお母さんとかかな?
というか聞き捨てならないことを聞いた気がする。……女の子? さっきのちゃん付けと良いそんな風に呼ばれる歳じゃないんだけどな。
「私って幾つくらいに見えますか?」
「え? 13、14ってところじゃないんですか?」
そんなに若く見えるの私?! 確かに日本人って童顔ってよく言われるし私自身も顔は幼いって言われるけど、普段は落ち着いていた雰囲気出してるから年相応に見られてたんだけど!
大学生なのに中学生に間違われるなんて……。微妙すぎて喜ぶべきか怒るべきが反応に困る。
「どうかしましたか?」
「何でもないです! ちなみにルッツとレグルスっていくつなの?」
「え? 俺ですか? 20ですよ」
20歳?! 私より2歳も上だったの?! 年下ワンコかと思ったのに。ワンコなのにはかわらないけど。
「レグルスは?」
「…………」
「レグルスは?」
無言を貫くものだから、言えやごらーとレグルスを見つめる。そんな私を見て、ルッツは何やらハラハラしているようだ。
「17だ」
「……え?」
私は耳を疑った。ルッツも私と同じなのか、身を瞠っていた。
レグルスが17歳?! え、私より年下だったの?! 年下に子ども扱いされてたのっ? なんてこった……。
「なんだ?」
眉に皺をよせて訝しげに私たちを見る。
「えーと、思ってた年齢より若かったものだから」
「ちょっ、シノンちゃん!」
それは言っちゃダメだというように、私を制止しようとするルッツ。ビクつきすぎだよルッツ。レグルスそんなので怒んないって。
「それよりも検問、いいのか?」
「あっ! そうだった」
おいしっかりしろよ門番。話逸らしたの私だけどさ。
「じゃあ話は戻しますね。ルージェミアさんの家は町にありますし、家に滞在でいいですか?」
「ああ。こいつも一緒に連れていく」
「わかりました。ルージェミアさんは顔パスで大丈夫なんですけど、シノンちゃん、何か身分証とか持ってますかね」
「あー持ってないです」
「身分証がないと手数料なしでは門通れないんですよ。何処かのギルドで身分書を発行した方がいいですね。」
手数料かかるの?! 払うのはレグルスだけどさ、申し訳ない。
「手数料は銀貨1枚あるいは銅貨が10枚ですね」
どのくらいの価値があるのかよく分からないけど、あまり安い値段だとは思えない。だって銀だよ? かなり高価だと思うのは私だけだろうか。
レグルスは気にした風にもなく銀貨1枚を支払っていた。
「シノンちゃん、俺が言うのもなんだけど、気にしなくていいと思うよ。ルージェミアさんは稼ぎが良いから、銀貨1枚なんて大したことないですから」
そうだと言うようにレグルスも頷いた。
「でも……」
「気になるならお前に何かできることをしたらいい」
私は一体レグルスの為に何ができるだろうか? 追々考えていかないと。
「うん、そうする」
「それじゃあ話もまとまったことですし、どうぞ門を通ってください。マスカレイドへようこそ、シノンちゃん」
レグルスに一言言った後、私に視線を向けて優しげに微笑むルッツ。
「何か困ったらここか自警団の本部にまでどうぞ。シノンちゃんみたいな可愛い女の子なら喜んで助けますから」
うわっ、可愛い女の子って……ワンコなのに軟派なこと言うとか。見た目にそぐわずけっこう女なれしてるなこのワンコ。
とりあえず笑みを返す。そして手を振られ、見送られながら門を潜る。
私はレグルスに手を引かれ、街中を歩く。どこか中世のヨーロッパのような街並み感じられるが、どこか田舎っぽくて暖かい。レンガ造りの家があったり木でできた家があったりして、屋台も軒並みに並んでいた。
歩いている人たちの格好も、RPGでよく見るような町人の格好だったり冒険者のような格好だったり魔術師っぽいローブを着ている人もいた。
そして町の人たちの髪と目ががすっごいカラフル。緑とか赤とかオレンジとかピンクとかがあって、染めたっていう色でもないごく自然の色だった。
ただ一つ気になるのは私と同じ黒髪がいないこと。嫌な視線は受けていないから、黒髪黒目が忌み嫌われる存在でないのはなんとなくわかるけど、目立っているのは感じられる。まぁ、目立っている要因が私だけないだろうけど。
だって待ち行く女の人たちがレグルスを見た瞬間振り返ったりして頬を赤く染めて見惚れている。それで一緒にいる私に対して嫉妬むき出しで睨みつけてるからね。女って怖い。
「レグルス、どこ行くの?」
「一旦家に戻る。お前も住むことを家にいる婆さんと爺さんにお前の事を話さなければならない。誘拐犯に関しては俺がそのあと自警団に報告しておく」
「分かった。それにしても、婆さんと爺さんって……レグルスのお祖母さんとお祖父さん? 一緒に暮らしてるんだ」
「ああ。この町で神殿長と自警団の団長をしている」
「え」
神殿長と団長とか結構なポジションじゃないの? そんな人たちに私会っちゃっていいのだろうか。
「そろそろ着く、あそこだ」
レグルスの視線の先には、3人で暮らしているには少し大きめのい屋根の煉瓦の家だった。
いつ通りグダグダ感が半端ないですね。
これからも見守ってくださるとうれしいです。平日は忙しく来週の休みはテストがあるので更新できるか分かりませんが、できたら更新したいと思います。
これからもよろしくお願いします。
どこか文章で可笑しいとかろや誤字脱字があればお気軽にご報告ください。