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超短編

犬と猿?なんのこと?

作者: しおん

大いなる100作品目。

過度な期待はしないでください。

「通行の邪魔なんだけど、バ会長さん」



「邪魔なのはそっちだろ、クソ風紀」



これはこの学校の日常風景だ。

この学校では代々、生徒会と風紀委員は犬猿の仲。

目が合えば、罵詈雑言の罵り合い。

すれ違うなんて事は絶対に起きず、相手が道を譲るまでそこを退こうとはしない。

そして今、我が校が誇る生徒会長と風紀委員長は廊下のど真ん中で対峙していた。


先に口を開いたのは、長い髪を後ろでひとつに束ねあげ銀縁メガネにすべてのボタンを止め膝丈にまでおろされたスカートを履いた、みるからに優等生だと言わんばかりの格好をしている、大渕(おおぶち) (さと)風紀委員長。


そして、それに反抗する様に口を開いたのは切れ長の瞳とウルフカットが特徴的で、不良の様にじゃらじゃらと着崩した制服姿で口端を釣り上げ妖艶な笑みをこぼす、林田(はやしだ) (しゅう)生徒会長だった。


どちらも組織を束ねる長として、常日頃から周囲に高圧的な態度を取る事が多い。絶対的な支配者のオーラを纏うそれに、進んで反抗する様な輩はいないのだが、ライバル的な存在である組織ならべつだ。それも、そこの代表同士ならば譲り合い精神など頭の隅にもおいてはいないだろう。


今この状況ですらお互いの眼光が混じるその先で火花が散り、今にも爆発し周囲を破滅しそうな勢いだ。それはもちろん比喩的な表現だが、実際にこの空間の空気は異常なほどに固まりついていて、息さえするのも億劫な程だ。


なぜ、このような状況になってしまったのか。それにはさほど深くもない訳がある。


風紀委員長として今月行った活動や今後の方針などを職員に報告しに来た大渕。報告は何事もなく終了し、いざ帰ろうと職員室を後にしたまでは良かった。

だがその後、生徒会長として今月の業務内容の報告及び教職員の確認印の必要な書類を職員室に届けに来た林田とばったり廊下で出会ってしまったのだ。

どちらも一歩も引かぬままその場は硬直状態を維持し、互いに罵声を浴びせ合う現状に至る。


今時の幼稚園児でも道を譲り合う事ぐらいできると言うのに、この二人は自らの立場上それが満足に行えない。

この二人は常識がない訳ではないのだ。そして、我が強いわけでもない。単に、慕ってくれる後輩たちを裏切るまいと必死になって応戦し合っているのだ。


「どいて下さらない?」


言葉とは裏腹に高圧的な態度の大渕。()けと、その顔にデカデカと書いてあるように見受けられる。


「それはこっちのセリフだ、往来の真ん中で突っ立ってんじゃねーよ。風紀委員なら端を歩け、端を」


自らも道の真ん中に居るというのに自分の事はさも当たり前だと言わんばかりのその態度。大渕が額に青筋をたてる意味がよくわかる。


そんな二人の維持の張り合いは、聞き慣れたチャイムの音色で終わりを告げた。


いくら校内での地位が高かろうと、所詮は生徒。どこか真面目な二人は、授業をさぼるなんて事はしない。

二人の発する空気とは違って、両者の表情はどこかホッとしたものに変わったものつかの間、


「チッ……仕方ねぇ、今回は多めにみてやるよ、クソ風紀」


「寝言は寝てから言いなさい?バ会長さま」


それでも互いに捨て台詞は忘れない。




大渕風紀委員長と林田生徒会長は、お互いが生まれた時からの幼馴染だ。

家が隣同士で親同士の仲が良い事もあり、物心ついた頃にはお互い隣にいる事が当たり前の状態だった。

きっと誰もが"嘘だ"と吐く様なそれが、紛れもない事実であり、現実に他ならない。


放課後の屋上。

立ち入り禁止とされているそこは、実は風紀・生徒会両トップの唯一の心休まる場所だったりする。


「昼間はごめんね、チサト」


「別にいいよ、私もしゅーちゃんの悪口言っちゃったし……」


沈みゆく夕日を背にチサトとしゅーちゃんは謝罪の言葉を口にする。

チサトとしゅーちゃん。

それは、幼き日から変わらない幼馴染を呼ぶ時の言葉。

大渕の"ち"と、彼女の名前であるさとをくっつけてチサト。

修という名前をそのままに、ちゃん付けされたしゅーちゃん。


修がしゅーちゃんならばさとちゃんと呼ぶのが妥当なのだろうが、幼き日の智が、"サト"なんて男みたいで変な名前だとクラスメイトにいじめられていた事を、修は忘れていない。それ以来智が自らの名前を嫌っている事も、小さな智が声を殺して泣いていたことも知っている。伝える事は、昔も今もそしてこれからも無いだろうが。

だからという事もあるけれど、何時の間にやら智を呼ぶ時はチサト(・・・)と少しでも女の子っぽく呼ぶようになっていた。


昼間の毅然とした雰囲気はどこへやら、二人はしょんぼりと肩を落とした姿で立ち竦んでいた。


「やめたいなぁ」


そう呟くのは、チサト。

いじめられていた。という過去もあり、人間不信とまではいかないが対人関係が苦手な彼女は支配者となり得るだけの器量を持ち合わせてなんていなかった。

誰かと会話をする事などこの幼馴染としか満足に出来ない彼女は、面倒ごとを押し付けられる様に風紀委員にされてしまった。

そして何故だか分からないが風紀委員長というものに推薦されてしまい、満足に反論の出来ない彼女はそのまま流される様に風紀委員長をやっている。


「僕だってやだよ、こんな事」


普段の強気な生徒会長は歴代の生徒会長に恥をかかすまいと修によって作られた存在で、その本性はヘタレ。

なんでもそつなくこなしている彼は、周囲のものからそう見られる様にと日々努力を欠かさない。もし彼に遊びに費やす時間があったのなら、その全てを勉強や鍛錬に変換しているだろう。

それ程までに、彼は努力を絶やさない。歴代の生徒会長の為、これから先の未来の生徒会長の為、今まで培って来たものを台無しにしない為に学校生活を送っている。


そんな気弱な二人は日の沈んだ星空を眺めて、深いため息をこぼす。直ぐに訪れてしまう明日という日常に、憂鬱さを感じて。




そんな二人の本音を知らない全校生徒は、日々災厄が訪れない事を願うのであった。



長く書いてみたつもりです!

ぐだぐだ感と、不完全さは否めませんが。


ここまで、読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 喧嘩するほど仲がいいとはこの事
2015/01/22 16:35 退会済み
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