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星持ちと弁当屋  作者: 久吉
第一章 星持ち様と弁当屋
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星持ち様、危機一髪?

 星持ち様が初めて来店されてから、ちょうど八日目。


 閉店ぎりぎりにやってきた彼はサービス弁当を買い、1つ頼みごとをしていった。

 これから鉱山に入らなければならないため、明日は弁当を買いにくることができない。可能なら、昼の鐘の頃に鉱山の入口まで弁当を届けてもらえないか、と。


 ちゃんと長くしゃべれるんだ、と妙に感心しつつ、にっこり答える。

「いいですよ。その時間ならちょうど手もあいてますから」


 鉱山で『ごはん』の出張はありえないが、弁当を持っていくくらいよくあることだ。


 魔石鉱山は下へ下へと階層を下りるたび、魔物が出たり磁場があったりと危険が多くなるらしい。だが、人がよく出入りする一階層ならまず危険はない。子どもが遊びに行くこともあるし、家族が食事を届けることもある。


 実際私も先ほどロットさんに肉弁当を持って行ったばかりだ。


 どうせなら、明日届けるついでにいくつか余分に弁当持っていって、小腹がすいた鉱夫さんに売りつけよう。


「入口の鉱夫に、アルドに頼まれたと言えば取り次いでくれるようにしておく」

「はい。わかりました」


 実はもうとっくにあなたの名前は知ってたんだけどね、とはおくびにも出さず頷き、アルドさんを見送った。




 翌日、鉱山へ行くと入口に立っていたのはロットさんだった。


「よお! アルドの旦那から聞いてるよ」

 私が口を開く前にロットさんが話しかけてくる。


「アルドの旦那、毎日リリアんとこに通ってるんだってな! 惚れられたか?」

 え? どうなんだ? と肘で小突いてきながらにやにやしているロットさん。


 小さい村に現れた美形のエリート様はどこへ行っても注目されている。毎日うちに通ってるのも噂になっているのだろう。

 弁当を買いもしないのに、店の近くを若い娘さんが徘徊しているのもそのせいに違いない。


「単に鉱山に持って行きやすい弁当作ってるのがうちだったってだけですよ」

 なるべく嫌そうに見えるよう鼻にシワを寄せながら言う。

 毎日弁当を買いに来てくれるお客さんはありがたい。美形だから目の保養にもなる。だが、恋仲だと思われて妬まれるのは本当に勘弁してほしいのだ。どこの世界も女性の嫉妬は恐ろしい。


「へえへえ。そうかねぇ。まぁいいけどよ。アルドの旦那は一階層の階段あたりにいると思うよ」

 にやにや笑いは引っ込めずにロットさんが教えてくれる。


 あんまりからかってくるようなら、今度こっそり激辛弁当にしてやる。それか肉の下にロットさんの苦手な野菜をぎっしり詰めてやろう。


 半泣きになるロットさんを妄想して溜飲を下げつつ、教えられた階段へ向かう。


 ほどなく、一階層の階段に座り魔石のチェックをしているアルドさんを見つけた。


 声をかけようと足を踏み出したとき、遠くの方で雷のような音がした。あれ、今日は快晴だったけどな、と首を傾げているとすごい形相でアルドさんがこちらへ走ってくる。


「伏せろ!」

「えっ、な…っ!!」


 時間にしたらきっと瞬き二つ分くらいだろう。

 耳をつんざく聞いたこともないような音。立っていられないくらいの振動。


 一体何が、と言いかけた声も自分の耳にさえ届かなかった。


 アルドさんの伸ばした手が私にふれた途端、無数の雷が落ちたかのように、ガラガラと激しい音をたてて地面が崩れ落ちる。


 ひゅっ、と内臓が浮く感じがしたところで、私はあっさり意識を手放した。

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