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盗っ人  作者: 日寝暮者
8/26

ユイナ

ハッ、


ハァハァ…はぁ〜っ




夢をみた。





美人さんと一晩を過ごし、金を含めた身包み全部持って行かれて裸でホテルを出て行くんだ。





…裸で外は無理だよ。新しい性癖に目覚めるかも知れん。恐ろしい。いや怖いお兄さんが出なかっただけマシなのか?




原因はこの子だな。釣り合ってない、という思いがあの悪夢を見せたんだろう。美女と野獣ならともかく、俺は体格も“もやしよりはマシ”レベルだし。




逆恨みだが少女にも責任を取って貰おう。

若い男の前でそんな格好(上下防具なし)なのも悪いんだよ。




…それにしても静かに寝てるなぁ。寝返りもない



「なに?」




「おはよう」



悪戯をしてたら起きたみたいだ。これでも起こさないよう最大限に気をつけてたつもりなんだが…



「おはよう、すっかり元気ね」



「ちょっ「はい?」くっ、お陰様でね。」




攻撃は最大の防御と云うことか。だが、やられはせんぞヽ(゜ロ゜;)ノ俺のこの手が激しく求める!勝利も掴めと姦しく囀る。はーくねつ(白熱)ゴッフィンガーー


――……・


―…・




とそんなことより

「そういや、ちっパイで思い出したんだけど縮んだ?」



彼女から少女へ。同一人物かどうか。ぷらす

残念だ、という気持ちを込めて聞いてみた




「あなたのせいよ?」



「はい?」訳が解らない。




「桜の影響なんだけど…。後で説明するわ。」





「ふーん。そういや昨日言ってたお風呂、入りたいんだけど?」




寝る前の雑談の時にお風呂のことを聞いていた。


拭いたり水を浴びたり。悪くないけどやっぱり浸かりたい。








う〜ん…小さい。

城内調査の時に見かけなかったからそこまでは期待してなかったけど…



着替えるスペースと合わせても20畳前後じゃないのか?




洋風映画である白いむき出しの浴槽だ。



というか上下水道も繋がっているように見えない。本当に浴槽だけだ。まさか水汲んでくるのか?





「水を出す魔具で浴槽に水を満たし、浴槽は魔法を維持するような魔具にすることで必要な時にお風呂に入るの」





「魔力で魔法は発動するんだけど、魔法は時間の経過と共にマナに変化、自然の一部になるの。それを利用するから水道とかは必要ないのよ」





「…浴槽の魔法維持って言っても遅くするだけなんだけど、お風呂に入るぐらいなら問題ないわ」




「ふ〜ん。…綺麗だな」



湯気のように蒼い煙が昇っていて水自体も光っている。


さっきの話から考えると煙はマナに還る現象で光る水は維持の影響なんだろうけど。




とは言え、使う人間に仕組みはさほど必要なく、ただ綺麗だと思った。





ただ、我が儘を言うなら…温かいほうがよかった。決して冷たいわけじゃ無いけ―ハッ…一緒に入れとの思し召しか!?




…。なんか視線を感じたような気がするけど気のせいだろう。背中を洗ってもらう。勿論、御礼(?)にしっかり洗うことにする。




話は変わるがどうやら俺はマッサージ師には向かないようだ。ムラムラが止まらない。




――…・




水がだいぶ減ってしまったので新しく入れてもらい二人で入る。




上に乗ってもらい抱っこする。そして抱っこした不審者を見る。




…どう考えても可笑しい。俺と少女の関係だ。いくら人の好みや価値観も人それぞれだといっても、拒絶を一度としてされないことを考えると普通に考えたら裏があると考えたほうが自然だ。




俺に誇れるようなところがあれば話は違うが残念ながら平均以下だ。




降って湧いた幸運とばかりに楽しんできたが、そろそろ聞いてもいいだろう。





…何故かは分からないが直感がそう告げている。危険だと。…手遅れ感も半端ないが。




「私、吸血鬼なんだけど気付いてた?」




少女はそう言いながら俺の左側の首筋を舐めた。



複数の意味でゾクッとした。慣れない感覚と身の危険だろうが、少女に求められるのも…とか考えたのも強く否定できない。



吸血鬼だとは思わなかった。そう告げた。




うん。欲望は思考力の低下を招く。気づかなくとも俺個人に責任は無いはずだ。




特に抵抗しなかったからか、それとも内心を読みとったのか。少女はニコッと笑って俺の肌に牙を突き立てた。





うまい話には裏が有るという。対価、そう考えていたから特に抵抗しようとも思わなかった。




もし吸血鬼になっても、少女と主従になってエロエロなら嬉しいとか思った俺はゲームに毒され過ぎたのか。




さすがに殺されそうになったら抵抗するが。




少女の髪を撫でながら『援助交』という単語が浮かんできた。気にしないことにする。




何時の間にか少女の食事は終わっていたようだ。もたれ掛かってきたので二人でのんびり過ごす。




幸せだなぁと思った。

吸血鬼って言っても献血をしたと思えばエロエロなだけだし文句ない。





浴槽からでる。身体を拭いてもらうと偉くなった気がするのは俺だけか。



それにしても尽くされると嬉しいものだ。少女の身体も拭かせてもらう。賢者な俺は、我を失うことも無い。





部屋に戻り服を着る。

「気になってるかも知れないから先に言うけどあの程度(の吸血)なら百回吸っても吸血鬼にならないわ」




「いやあの程度って言われても、今一どのぐらいか分からないんだけど?」




何時の間にか終わってたしな。




「うん?ならステータスにある浸食率が40%でハーフヴァンパイアになるわ」




ステータスを表示し、項目を探す。




「0.4%?百回…か」



「慣れれば一回一回がもう少し少なくなるからもっと余裕持って貰って大丈夫よ」




何時の間にか恒常的に吸われることに同意したことになってる?

まぁそれは良いとして




「ハーフヴァンパイア?」




「そうハーフ。70%でハーフが無くなってヴァンパイアに100%で私と一緒の純血になるわ」



「ん?純血って生まれながらとか両親が純血とかじゃないのか?」




「勘違いしてない?純血って言うのは身体が100%血液のことよ。」




「はい?」



ごめん。意味が解らない。




「えーと。人間は血液が10%未満だけど吸血鬼は100%だと?」




出来の悪い生徒に少女は頷いた。




「だからこそ性質を変えることによって霧になったり出来るの。」




つまり吸血鬼は気体、液体、固体と自身の構成を変えることが出来るらしい。今現在というか普段は人間と同じぐらいの割合なんだとか。




「ん。40%?」




てっきり血液の40%かと思ったが全体の40%なのか?血液は全体の10%未満なのに?




「血液関連の内臓とか牙、爪とか血液以外も浸食されるに決まってるでしょ。100%になったら純血(ALL血液)なんだから。」




「先に言っておくけどハーフは血も飲める程度だけどヴァンパイアは血液以外は嗜好品。純血に至っては血液以外、口にしないわ。」




「それを聞いてどうしろと?」




「血液以外の食事を勧められても困るから先に言ったのよ」




「あー。なるほど。そういや太陽の光を浴びたら灰と成って消えるのか?」




「夜行性の動物と同じぐらいには苦手ね。それと死んでから太陽に焼かれれば灰になるんじゃない?」




「問題なし、と。十字架と聖水は?」




「十字架は何の意味があるの?聖水は…霧状の時はキツいね」




「あとはニンニクと木の杭、流水かな?」




「ニンニクは意味不明、木の杭というか心臓部への一撃は人型の時は耐えられない、流水は霧の時だと悪夢ね。川とか流されると元に戻れないまま、直ぐに死ぬわけでもないし」




「成る程。そういや血液ってことは乾燥とかヤバいの?」




「人間と同程度じゃないの?でも完全に固体になれば問題ないし。ところで吸血鬼に興味津々なの?」



「だって吸血鬼になるんでしょ?」




「?成りたいの?」




「?」




話が噛み合わない。血を吸われ続けたら吸血鬼なんだよね?




「ハイヒューマンになればいいじゃない?」




「なにそれ?」




「ヒューマンが100レベルで昇華するのよ」


はい?


「其処も知らないか。えっとね―」




話によるとレベルが100未満を下位種。100以上を上位種と呼ぶらしい。上位種はハイヒューマンなどや吸血鬼、ドラゴンなど。ヒューマンがハイヒューマンになるように100になればどの種族でもハイになる。吸血鬼、ドラゴンは生まれた時から上位種(100以上)なんだとか。




「勝ち組め。」



少女を妬んでも仕方ないと思う。



…・・

「…今の私はマイナスだけどね」…・・




「そんな訳で浸食率40%になる前にハイヒューマンになれば何の問題もないのよ。」





ハイヒューマンも吸血鬼も同じ上位種だから抵抗が出来るらしい




「吸血鬼に成るという選択肢もあるけど、どちらにしても直ぐに決める必要はないわ」





直ぐに決める必要ないならノンビリでいいか―





「話変わるけど名前決まったの?」




「シン・K(京介)・呉四!!名字は怒りと悩んだけど呉四にしたんよ」




「??そう、じゃあ次は私の名前を決めて」




はい?




「教えてくれるんじゃなかったのか?」

そういう話だったはず。




「ステータス開いて。それで桜ね」



そういって指先を爪で傷つけて血を出すと、舐めろと突き付けてきた。




話が変わり訳も分からずステータスから名称なしをクリック、桜を表示して血を舐める。




葉桜になったばかりだった桜が緑に生い茂る。




「狼を思い浮かべて」




少女の言うことは意味が分からない。が、成るようになれ、とばかりに狼を思い浮かべる。




集中するため瞑っていた目をあける。狼の骨格標本が支えなしで立っていた。




いや、自分を偽るのは止めよう。狼がいた。




その後、説明は無しで小さい鼠を複数、創る。狼を殺し俺に狩られたネズミの手乗り版だ。俺が思うサイズだがやはり骨だけだ。





血を飲み、次に死体のある部屋に連れてかれ死体に触れるように言われた。




正直、死体には悪いけど触りたくない。五体満足のきれいな死体だって嫌なのに殺されたとわかる死体である。




だが少女はやることやらないと話さないとのことなので気乗りしないが恐る恐る触る。




すると触るそばから死体は干からびて骨になりそして消える。




早送りを見せられては、どういうことかいい加減聞こうとしたら少女は桜を見ていた。




終わったら話すとのことで試行錯誤を繰り返す。




最後に少女に触れて貯まった力を送るイメージをすると少女は彼女になった。








彼女の作ってくれた食事を食べる。その間、彼女は身体の調子を確かめているようだ。




実験を繰り返したので何となくは分かったが聞いてみる。





俺の力――猛る心に従いスキルと呼ぼうか。同じく桜は、『紅』は怖いから朱桜と呼ぶ。




朱桜の効果だが


傷付けたり血を飲むことで対象から魔力を吸収する。



魔力を消費し死体を吸収することで情報として取り込む。



魔力を消費し情報を基に骨の状態で召喚する。また召喚した骨に力を授ける。



この三つである。葉と花は魔力を表すようだ。葉を消費し召喚する。






尚、花は勝手に散る

無駄に絵になるのが何とも言えない。




憶測だと魔法が使えるタイミングじゃないか?とのことだが勝手にMPが減るって何?




更に俺は気付かなかったがMP自動回復がない。



この世界の住人は普通に持ってるらしい。魔力のない世界だったし仕方ないといえば仕方ないが、泣きたくなった。




血を飲ませて貰えばいいじゃないかって?





浸食率が上がりますが?






花が咲いて散って葉が芽吹いて散って花が咲く。




ゲーム風に言うなれば攻撃して魔力吸収。MPが全回復したらMP消費して骨召喚と骨強化。




MPが尽きたらまた魔力吸収で全回復。二度目に全回復した瞬間、自動でMP消費。魔法が使えるのは恐らくこの消費中のみ。


ゲームなら他のキャラ使うか物理特化だが、自分のことだからそうもいかない。




魔法なしで生きていければいいが、無理だろうな…。肉体能力ショボいし。




はぁ…・・と嘆いていたら少女、改め彼女のことを思い出した。




「つまりお前さんは…?」




強化出来たし名前つけろというからには普通に考えれば俺が召喚したんだろうけど…。




吸収、召喚するにはMPがネズミだけじゃあ足りないだろうし召喚した覚えもない。



「脳死かそれに近い状態だった私を吸収、無意識で召喚したんじゃない?」



「私が死にかけだからMPと死体吸収出来たんでしょう。それで貴方が死にかけたから無意識で召喚した…。まぁ相性が良かったのもあるんでしょうけど。」




「えっと恨んでる?」

トドメをさしたんだよな?




「貴方のスキルは基本的に生物を吸収出来ないみたいだし、あのまま人形として生きるよりはマシよ」




「なら良かった…のか?」




「ええ。一応、警告も兼ねて説明するけど記憶を情報として吸収、骨に記録として付与するだけだから蘇生とは違うわよ」



「惚れた人間が蘇る訳ではないということか」




良く出来ました、と言わんばかりに頭を撫でてきたが流石に子供扱いは勘弁なので払いのける。




「というか何で骨じゃないんだ?」彼女が骨じゃない理由が分からない。




「骨だったけど性質を変化させれば人になるでしょ?」




骨=固体。吸血鬼は性質を変化させられるから固体を幾らか液体に変える。更に元々相性が良くてプラス補正も有ったから少女になることが出来たと。




はぁ…と今度は感嘆で息を洩らす。じゃなくて名前か。生前の名前を聞いたら教えてくれなかった。あと名字は要らないと言われた。




「ユイナね。改めて宜しく」




散々ダメ出しされようやくOKが出た。




良かった。無駄に疲れた。





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