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盗っ人  作者: 日寝暮者
14/26

スライム






それにしても…



「誘ってるのか?」



それ以外に『ラ』の理由を教えて欲しい。

いや、可能性で云うなら――



「?何のこと??」



――ラ族という可能性があるのか…



「念話使えば解るんじゃないの?」



是非とも使って欲しい。俺の日々および心の平穏のためにも。




「イヤよ。変態って移るのでしょう?」




なにそれ。変態は……否定できないな(爆)

でも移るのなら移っても…



いやしかし軽度なら歓迎だけど、重度になったら困るな――じゃなくて、



「移らん。いつもラなのか?」


ってか、もしかして移る?

長年連れ添うと似るっていうよね?

――気付かなかったことにしよう。そうしよう――



因みに俺は寝るときは下着だ。…聞いてない?そりゃスマン。



「だって気持ち悪いじゃない?」



多少は分かるけどさ…

これからは別々に寝たほうがいいのか?

我慢できる気がしない。



ついでに今まで「ラ」と気付かなかったのは、気にならなかったからだ。脱がしてたり、盛り上がってたり、だったからなぁ。




「んじゃ別々で――」



寝るか、と言おうとしたらガシッと掴まれベッドに押し倒された。そして服を脱がされ――










そして特に色っぽい話には成らなかった。

チョット期待したけど……目を見て諦めた。



最後の抵抗とばかりに、

男の前でそんな格好してると……そう言ったが優しい笑顔で「なにが出来るの?」と聞かれ、撃沈した。



腕力その他、身体能力全般で劣っている俺に、出来ることはない。



一緒に寝る理由だが『抱き枕』兼『湯たんぽ』役であることが発覚した。

『吸血鬼』全体がそうなのか『ユイナ』個人がそうなのかは判らないが、体温が低い。


そして俺は寝るときなど体温が高い。別に異常というほどじゃなくて新陳代謝がいいだけだと思うが…。



俺のお役目だが、冬の布団に入るイメージだ。

最初は気が滅入るが、最初だけだ。逆に煩悩も霧散するし丁度良い。



柔い肢体、潤う肌は理性が危険だが抱き枕と考えれば幸せだ。




とは言え――










日課の狩りに出掛ける。

が、今日は何時もと向かう先が違う。そう思いながら歩いていたら沼に着いた。



「コッチ」



何処へ行くつもりだ?

そう思いつつ追う先には……




青色生物がいた。ゲル状と言えばいいのか、如何にも雑魚っぽい。



コレに遭わせたかったのか?色が濃い箇所が有ったからそこを槍で突くと溶けて染みとなった。



うん。ファンタジーならよく居そうなスライムだよね?さっき突いたの核だよね?



槍の見た目に変化はないけど、念のため沼の水で洗い布で拭く。――石突きでも良かったか?



「それにしても、どうしたん?」



狙いはスライム?いや、沼の案内か?



「さっきのはスライムっていう魔物ね。人間とか獣と違って魔核があるから回収忘れないでね」



「魔核?」



スライムがいたところに落ちてる、この青色の石のことか?魔核……



「え―っと魔具は、正確には魔法具と魔導具に別れるの。魔法具は使用者が魔力を込めて、魔導具は魔核や魔石の魔力で使うのよ」



「風呂は魔石だよね?…魔核は魔物が、んで魔石は鉱物ってとこ?」



「魔核でもお風呂は使えるわ。ただ、魔核は使い捨てで、魔石は再利用可能なのよ」



「乾電池と充電池?―魔石のほうが便利そうだな……」


「そうでもないわ。魔石は使わなくても自然に魔力減るし、補充すればいいと言っても、魔石と同じ属性の魔力じゃないと補充出来ないもの。」



要は用途別に使い分けることが大切ってことか?などと話ながら歩いていたら、


「あそこ」



ユイナが指差したほうを見るとスライムがいた。

慌てて姿勢を低くしたが、ユイナは普通に浮いていたので気まずくなったが、槍を構え警戒しつつ普通を装った。




どこかのゲームみたいに、デカイ目があれば何処を向いてるかが判るが、目も口もない彼のスライムは全く判らない。



「スライムは見ての通り移動力が低いわ。だからこそ、土地毎に適応、進化してるの。」


たとえ見た目が同じに見えるスライムでも土地によっては別物だから気をつけろってことらしい。




――…




俺はスライムを狩る。そして狩る。奴らはカタツムリみたいに鈍くさい。


調子にのって槍を突かずに柄で殴ったり、色々実験するぐらい調子にのっていた。








だからこそ気付かなかった。




ユイナに聞かずともスライムを見つけられる。――沼だから沢山いるんだろうと勝手に判断してた。




色違いでも気にせず挑み、スライムを染みへと変え魔核を回収する。






慢心していたからこそ、黄色のスライムが吐き出す液を避けきれなかった。



トドメを刺してから、大慌てで水洗いをし確認する。どうやら酸性の攻撃だったようで色が落ち革装備がモロくなっていた。ゲーム知識もバカに出来ないようだ。





今度は――と気を引き締めて係る。それから二、三匹倒してからソイツに出会った。



失敗を忘れず、けれど特別だとも思わずに緑色のソイツに警戒しながらも突こうとして、腹が痛む。


――ユイナに突かれた箇所が…。訳が解らず中途半端に突こうとしたまま固まり…ユイナに突き飛ばされる。



突然のことに茫然としながらも緑色スライムを見るとカタツムリのように槍が出ていた。



1メートルと云った所か、ユイナに突き飛ばされなければ突かれていただろう。


ユイナは危うげなく避けていて、爪をナイフのように投げ、核を貫いた。



ユイナはへたり込んでいた俺に近付き起こしてくれると、人差し指を立て

「貸し一つ、ね」


と言った。

失敗を二回冒し(おかし)三度目は無いと意気込んでスライムを探し遠目に見付ける。




俺はユイナより遥かに弱い。それはハッキリ分かっている。だが――いや、だからこそ、か?



ユイナの前でカッコつけたい。強くないくせに…そう思うかも知れない。


だが例え弱くても、女の前ではカッコつけたいと思うことは男として、それほど不思議ではないだろう。



この時、当然冷静ではなく、結果的に――






スライムに近寄る。液体攻撃、槍攻撃など攻撃される可能性を考慮して慎重に、尚且つ狙いを絞らせないようにジグザグに。



そして気付く。――青色のソイツは核が二つあった。



目はスライムを離さず足も止めず、深く深く深呼吸する。ビックリしたがやることは変わらない。




ひとまず一突きし、核の一つを壊す。もう一つも壊そうとしてソイツの変化に気付く。



なんと濁ったのだ。構わず記憶の通り、もう一つあった場所を突くがスライムは消えない。


面倒なことになったと思いつつも何度も突く。青色は濁るのか…?



とそのときユイナに名を呼ばれる。そしてユイナを見、何を見てるのかと視線の先を見るとスライム達がいた。




慌てて周りを見ると囲まれつつあった。しかも、そのスピードはカタツムリではなく、人間の1才から3歳児が走るぐらいのスピードがあった。




遅いことには代わりないが、的だと思っていたものが沢山たくさん動き出す、となると話はガラリと変わる。



しかも色も様々であり、よって攻撃手段も様々だ。慣れれば「所詮スライムだろ」と言えるかも知れないが…素人である。



二核という亜種、そして手抜きが本気になり、更に圧倒的な数、また包囲されたという事実……


動揺した心は冷静な判断力を奪い、隙を作る。





――目の前に居るスライムが槍を伸ばしたのだ。速度は緑色より遅いが、そもそも気を取られているのだ。関係ない。



当たる、と思われた攻撃は、だがしかしユイナによって外れることになる。



空を飛ぶユイナに回収されたシンは自分が青色二核に攻撃されてたことを知り失敗を知る。




目の前に魔物が要るのに棒立ちになったのだ。

更に包囲されないよう速やかに突破を図る必要もあった。



悔しげに見つめる中、青色二核の濁りが薄れる。そうして見ると貫いた筈の核が健在であった。



つまりヤツは濁して治していたのだ。



飛ぶユイナに後ろから抱えられ、城への移動中、更なる事実を聞く。



一番始めのスライムが仲間を呼んだ、と言う。


そうして考えると、つまりスライムを倒していたのではなく、誘い込まれたと云うことを意味する。





そんな馬鹿な、そんな知能が、と思うがよくよく考えればミツバチとか、ワザと見つかることで気を逸らしたり、たくさん集まり格上の外敵から防衛することもある。




そう考えればそこまで可笑しな行動ではない。




弱ったフリをして獲物を誘い包囲して襲う。弱く数の多いスライムらしい戦い方だ。


まぁ何にせよボロクソに負けたことにかわりない。




スライムに負けてショックを受けていたが、ユイナはお気に召さなかった。



「鬱陶しい」



そんな気は無かった(つもりだ)がユイナには〈慰めてオーラ〉に感じたらしい。



開き直って抱きつこうとしたが、普通に拒否された。スライム敗北の積み重ねと併せると、地味にダメージが大きかった。



いや、自業自得なんだけどさ。肉体的精神的疲労により、シャワーすら面倒なのでふて寝することにしたんだが……



「今日は別々ね」



その一言に追い討ちを掛けられた。枕を涙で濡らすことになりそうだ。


思いっきり泣こうと一人覚悟を決めると、自棄だが、お休みの挨拶をして部屋を出ていこうとする。



――また否定が入る。ユイナ様のベッドの足元で寝ろと、仰られた。何故に?



地べたに布団を重ね寝る。監視の目があるので静かに枕を濡らした。自分でも気付かずに甘えまくっていたのだろう。すぐ側に居るとはいえ、久し振りの独り寝は堪えた。




◇ ◇ ◇




調子に乗るとトコトン乗るのが、この男だ。



キツメに対応すると反省するが、良くも悪くも引きづらない。


放っておいても大丈夫だろうが……


「シン?」


静かに確かめる。さっきまでスンスン鳴いていたが寝た?なんだかんだ言って寝つきはいい。



近くに居ると大抵の事では起きないが、少し離れただけで眠りが浅くなるのは特技なのかと思うほどだ。



とりあえず何時もより温かいのを確認して、考える…が、直ぐに答えはでた。




◇ ◇ ◇





う…ぅん、んー


目覚めて伸びをする。

今日はよく眠れた。




流石に昨日は悔しくて悔しくて仕方なかったが、一晩寝て冷静になれば感じ方も変わる。



相手の力量を勝手に過小評価したのが全ての敗因だ。また、こっちに来てから自分より弱いのを目にし調子に乗った。




冷静に考え実力的には、そこまで問題は無かった。と考えていたら、



「シン何故こっち(ベッド)で寝ているの?」


その声に自分がベッドに居ることに気付いた。



「あれっ…?!いやっ、ちゃんと下で寝てたんだよ!?」


俺は焦った。咎めるような目で見られれば仕方ない。しかも自分では、ベッドに入った記憶がないのだ。



「言い訳?」



「ウッ?!―スマン…」


昨日のことは覚えてないが俺は元々、寝相は悪い。しかもトイレとか行けば、意識せずにベッドに行くことも考えられる。


ならば素直に謝るのが大切か。――そう思っていた時もあった。




「貸し一?」


「ん。借り一。」




だから素直に(安易に)貸し借りを認めた。認めてしまった。



「じゃあ今日もスライムね。リベンジしなくちゃ、だもんね?」



縋るような視線を送ったが微笑みと共に無視された。


出来ればスライムは期間を空けたかった。視線だけでなく口にしようと思ったが、頬に感じたキスと共に消えていった。




――まぁ、いいか…



かえって良かったのかも知れない。時間を置いたら怖じ気付くかも知れないしな。





―――………





「そう言えばシン」



「ん?」



「昨日は寒かったから、シンをベッドに引き上げたかも知れないわ」



「エ?」



「だから確認したかったのだけれど――シンが悪いのよね?確か…認めたものね?」



「……はい」




教訓。



イエスマン駄目絶対。








スライムの核は、カタツムリの殻のようなもの。壊れると死ぬ。



魔核は死んだらマナが凝縮して出来るもの。




ゆえに核と魔核は別物。




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