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盗っ人  作者: 日寝暮者
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プロローグ





妹(美桜)が死んで一年になった。




その後、寂しさを紛らわすように俺と燎と付き合い始めた。






そして俺は三年に、燎は美桜と同じ一年になった。



特に生活も変わらずに、旅行の時期になった。



うちの学校は、一年から三年まで一斉に旅行がある。



一年は遠足で日帰り

二年国内、三年は海外で泊まりと違いはあるが……




ところが直前にドタバタがあり、その影響で三年も、一年と一緒に遊園地になったのだ。



一応、遊園地で日帰りと泊まりの差があるし、人によっては喜んでたりしているが……



そんな出発の日、そのトラブルは発生した。





バスで向かっている途中に突如、目の前で光が迸る。



突然のことに呆然としている間にバスは急停車した。


急ブレーキの衝撃で悲鳴があがりクラスメートが騒ぎ出す。




騒がしいなか話を聞くと――前のほうに座っていた人の話では――



前を走っていたバスが(燎の乗っていたバス)が消えたと言う。



確かに光が落ち着くと、前方に裂け目が出来ていた……









「――なんつうか……本当に行くつもりか?」




「おう。ドキドキしないか?」




行き先不明――だから心配する気持ちも分かる。逆に心配されないと、友達だよね?って思うし。



だが、未知への探求って言うの?そーゆーのも分かって欲しい。俺の我が儘か??





「何処へ行くのかも分からないのに?」



「あー確かに怖い、でもさ『燎』が巻き込まれたんだ、しゃーないだろう?」




俺は不謹慎にもちょっとばかり、いやかなりワクワクしていた。



異世界の冒険物語とかが好きだ。もちろん『行ける』としても色々と不安があるし、機会があるとしても行かないだろう。



だが今回に限って言うなら身内―恋人―が巻き込まれ、行く『理由』がある。なら行くしかないだろう。



俺は前方の小さくなりつつある『光り輝く裂け目』から目を逸らし背後に停まっているバスに向かい歩き出す。



小さくなりつつはあるが縮小率から判断して、まだ余裕がある。




「ん?どこへ行く?」




「荷物を取りに。少しは役に立つだろう」


修学旅行用に準備した荷物だ。何処とも判らない場所へ行くには頼りないがそれても“無いよりはマシ”だろう。




「取ってきてやるよ」




「ん?」




「代わりに親御さんとかに電話しろ、今生の別れになるかも知れんだろう?」




「えぇー…」



気持ちは分かるが、面倒臭い。いや、親不孝なのは判るんだけどさ。




我が親友殿は俺の言葉に頓着せず、バスに向かってしまった。



うーん。気遣いは感謝だが、正直余計なお世話だ(爆)(=_=;)




……………………………





「電話したか?」




「おう」






結局気まずくて電話してない。創作物なら家族の情を大切に描いたりするんだろうけど…



年をとると、言わなかったことを後悔すると聞くが……



別に盛り上がってる訳じゃないし、そこまで思い入れもない。


後悔しても別にいいと言い切れるぐらいには、若かった。



目を逸らしたまま荷物を受け取り頷く。




「…」




「…」




「後は任せた!」



俺は、逸らしたままの目を親友にあわせ、過去最高だろう笑顔でそう言いながら『裂け目』に向かった。




背後から



「達者でな」と苦笑したような声を聞きながら、、










親友と別れ、

目の前に『裂け目』がある


入ってすぐに死ぬかも知れない。入っても燎は居ないかも知れない。



考えれば考えるほどに、碌でもないことが思い浮かぶ




燎もひょこり帰ってくるかも知れない。



――でも








…でも、

待っていて失敗するよりは、行って失敗するほうが後悔はしない。



――そう確信できる。



ネクタイを緩め、シャツのボタンをはずす。



隠していたネックレスから指輪を外し、薬指につける。



隠す必要は―もう無い。



一年間バイトしたとは言っても所詮は学生だ。



指輪も高い物は買えない――だが、それでもダイヤを選んだ。




チタンのそれなりに幅のある指輪に無数のダイヤが煌めく。



役立たずになったネックレスを投げ捨てようかと思ったが、貧乏性ゆえに捨てるのを拒む。



…まぁいつかは役に立つかも知れないしな。



そんなくだらない事を考えてたら、一気にバカらしく思えた。




為せば成る。

俺は気軽に踏み越えた。






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