表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

家庭


「――これで名実ともにキミカは童ノ宮の氏子の一人、塚森家の一員だ」


そう上機嫌に言ってうちの隣――ソファーの背もたれにお父さんは深く身体を預ける。

『御穴』での儀式は無事終了し、来た時と同じようにうちはお父さんに手を引かれ、家へと帰っていた。


「何しろ、正式に神様から認めてもらったわけだからね。これから先もずっと」


「……それはつまり、」


少し考え、うちは言った。


「いつの日か、うちも童ノ宮の神様に連れて行かれるってこと?」


ほんの二秒か、三秒。

短い沈黙の後。


「……まあ、端的に言えばそうだね」


そう答えたお父さんの声は明るかった。


「だけど、キミカが神様のところに行くのはずっと先のことだよ。大人になって、お母さんになって子供を育ててお婆さんになって――とにかく、ずっと先だ。だから、そんな顔をしなくていいんだ」


思わずうちは自分の顔に片手で触れる。

お父さんに気をつかわせるほど、不安そうに見えたのだろうか?


「神様のところって……、前にお話してくれた天狗道のことなん?」


「よく覚えていたね。そう、天狗道。……どんな世界なのか、塚森家に伝わる古文書にも具体的な描写はないけれど、そこは苦しみも痛みもなく、神様に帰依した者達がただ寄り添い合うとでも静かな場所だと伝えられてる」


「寄り添い合う……。仲良しってこと?」


「そうだね。そう言うことだとお父さんも思うよ」


そう言ってお父さんはニッコリと笑った。

胸の奥がジンワリ温かくなるような、とても優しい笑顔だった。


「だから、いつかはキミカも――お父さんの両親や上の妹、それに奧さんだった人とも友達みたいになれるかも知れないね。そうなってくれるといいんだけどなぁ」


「……うちも。仲良くできたら嬉しい」


本心だった。

数年前、この家に迎えられるまでうちはいつも不潔で真っ暗で狭くて不愉快な場所にずっとひとりぼっちで閉じ込められていた。

いつもお腹を空かせていた。

そして、いつも泣いて怒っていた。


そこでそのまま朽ち果てることと比べれば――、神様に連れて行かれる方が何百倍もマシだからだ。


「それに当然だけれど、いいことだって沢山ある」


お父さんの声はあくまでも穏やかで優しかった。


「童ノ宮の神様は見た通り、まだ小さなお子様でいらっしゃるからね」


屈託のない笑顔のまま、お父さんは続けた。


「ご自分のものには凄まじく執着される。欲張り屋さんだ。手を出そうとする者には人であろうと怪異であろうと、否、たとえ神仏であろうと容赦されない。そのご気性に訴えかければ――キミカに手を出そうとするヤツはみんな滅ぼしてくれるはずだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ