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第4章 クライカードが蔓延る町

 魔王に支配されつつある異世界グランドジービア。当然支配された町も存在する。大和とフリイヤそしてタートルがやってきた町はそんな町だった。

 コンビニのような小売店へと入ると客の姿がちらほらあり、クライカードのパックを手に取りレジへ持っていく姿も。そんな客の腕には黒い召喚板が装着されている。

 女神のフリイヤはひどく嫌悪感を抱く表情で店の風貌を一見した。

 クライカードは法律違反ではない。なぜなら科学的根拠も呪術的根拠もないからだ。異世界と言っても魔法ですぐ解決とはいかない。だとしたら勇者はいらないからだ。

 大和はフリイヤに「さて、どうしたものかね」と言っている間にも店員が目に入った。

 小売店の女性店員が赤い血の涙を流していたのだ。

 大和は突然のホラー映画のような場面を前にしてあっけにとられる。

 するとタートルが「悪魔だ」と言い店員を見る。大和は訳が分からない。

「悪魔って、店員が?」

 フリイヤが突っ込む。

「違うわよ。悪魔が憑いているってこと」

 店員は赤い涙をハンカチで拭いながら「おかしいなあ」と呟く。商品として何を取り扱っているのかも理解していないのであろう。冷静な態度からも血の涙を流すのは今回が初めてではないのかもしれない。

大和は一度店から出て小売店の店名を確かめた。

 ――デビルメイト。

 確かに侵略された町らしい。


     〇


 とりあえず国家警護所へ行って町のクライカード普及率などを調べるのがよいだろうとフリイヤは提案し大和は承知した。

 クライカードの普及率によっては仕事の量がとんでもないことになる。機械のようにデュエルを挑み勝ち、そしてまたデュエルを挑み勝つを繰り返していくなんてことになりかねない。

 そうならないためには聖女の力を使ってデュエルする国家警護団の仕事に頼るしかないのだが。この町の様子を見る限りでは間に合っていないのだろう。


     〇


 国家警護所に着き窓口まで行くと女神フリイヤが町の様子やクライカード没収率について聞くことに。目の下にくまがある国家警護団の女性が疲労困憊な様子で答えてくれた。

「今現在でいうと没収率は30パーセントです。実際浄化が追いついていないのが現状です。毎日聖女様がお勤めされています」

 フリイヤはお疲れ様やお礼を伝えてタートルと大和を連れて去った。これからどうするか。手当たり次第にクライカードを持つ者を捕まえてカードゲームを挑むか。

 大和は「手当たり次第か」と呟きタートルも思考する。

「どうかな。それが現実的に可能かどうかだ。クライカードの流通を止めることが不法じゃないためほぼ不可能だし。悪魔の魅了により自分から手放すのもほぼ不可能」

 この状況をいかに改変していくか。それが難しいところだ。


     〇


 一旦休憩がてらカフェに入り珈琲を飲むことに。三人が窓際の席に座り女性店員がやってきて注文を聞きに来る。

「ご注文は?」

 フリイヤと大和は珈琲を、タートルはカフェラテを注文した。

「珈琲が2杯とカフェラテが1杯でよろしいですね」

「ええ」

フリイヤが受け応えし注文が確定される。三人は店の中で充満する珈琲の匂いで心と体がリラックスしていくのを肌で感じた。

 ここで大和は仕事の話に戻す。

「で、どうするかだな」

「難しい話題ね」

 しばらく静まり返るがタートルが意見を出す。

「簡単にすると、小売店の店長にデュエルを挑めばいいんじゃないかな」

 飲み物が届いた瞬間、大和とフリイヤは声をあげた。

「「それだ!!」」

 そして飲み物をいただきしばらくまったりティータイムを満喫するのであった。


      〇


 クライカードを売る小売店デビルメイトへとやってきた。このお店が問題なのはクライカードを売っていることだ。

 店長を呼び出し三人はレジ前で待機する。

 女性店員がレジ裏のバックヤードへと戻り店長を呼んでくれている。店長がやってくると「店長のローキです」と眼鏡をかけた男性が自己紹介し何の用事で呼び出したのかを聞いてきた。大和はデュエルを申し込みたいことを告げる。白い召喚板を見せる。

「デュエルしろよ」

クライカードを取り扱っていることで悪魔の魅了による影響があるならばデュエルをして大和が勝つことで解放されるはずだ。店の名前もきっと以前に戻ることだろう。デビルメイトなんて名前なのは完全に影響を受けている証明なのだから。

もしうまくいけばクライカードの入荷が止まるかもしれない。


      〇


大和が白い召喚板にデッキを装填すると自動でシャッフルが始まり、同じく店長のローキも黒い召喚板にデッキを装填し自動でシャッフルされる。

 お互いにカードを4枚引き勝負が始まる。

「「デュエル!!」」

 勝負を挑んだ大和からターンが始まる。

「俺のターン! ドロー」

大和はデッキからカードを1枚引き手札を眺め短い思考のちに1枚のカードを召喚した。

「俺はミニチュワダックスフント鎧フレーキを召喚!」

ミニチュワダックスフント鎧フレーキが召喚される。コストの3枚がデッキから休憩エリアに流れていく。ミニチュワダックスフント鎧フレーキの能力は相手の場のカード1枚につき2枚休憩エリアからデッキに戻すことができる。本来であれば序盤で出すカードではない。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数36。大和のデッキ枚数32。


「これで俺はターンエンド!」

 店長ローキのターンが回ってくる。

「私のターン、ドロー」

 カードを1枚引き手札に加えるとしばらく思考したのちに召喚した。

「私はクライニホンオオカミを召喚する」

 遠吠えとともに黒いもやが発生し黒い煙がオオカミの形を形成していく。

 ――ワオォーーーーーーーーーーン!

 召喚されたクライニホンオオカミの赤い目が光る。コストは5。5枚のカードがデッキから休憩エリアに運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数30。大和のデッキ枚数32。


 問題なのはオオカミデッキは犬デッキに比べてパワーが高いことだ。そして、

「まだ終わりじゃない。」

 クライニホンオオカミの能力が発動した。

 ――ワオォーーーーーーーーーーン!

「群れを成すクライ二ホンオオカミは数を仲間を呼ぶのさ」

 デッキと手札からクライニホンオオカミが1体ずつ召喚される。これで場に3体のクライニホンオオカミが揃った。コスト5の3体に攻撃されたらひとたまりもない。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数32。


「戦うからな! クライニホンオオカミ1体目でミニチュワダックスフント鎧フレーキに攻撃!」


 クライニホンオオカミがミニチュワダックスフント鎧フレーキめがけて突進していく。

「させない! 手札から能力発動! 自分が攻撃を受ける際にジャーマンシェパード鎧ララを召喚できる! さらにこのターンの攻撃はジャーマンシェパード鎧ララにしかできない!」

 ジャーマンシェパード鎧ララが召喚されコスト5枚がデッキから休憩エリアに運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数27。


 クライニホンオオカミたちとジャーマンシェパード鎧ララが睨みあう。

「ならばクライニホンオオカミの能力発動! クライニホンオオカミの能力により自身含む場の同名カード1枚につき相手のカードはコストは1減ることになる」

「なんだと?!」

 タートルが「まずいこのままでは」と呟く。女神フリイヤもこの状況に「何やっているの? 手札事故起こしちゃったの?!」と声を上げる。

「うるさい奴らだな、もう」

 大和の場のミニチュワダックスフント鎧フレーキのコストは0になり、ジャーマンシェパード鎧ララのコストは2になってしまった。

 タートルは知った。すべての人が犬デッキを使うことにはならない理由を。なぜならば犬デッキのパワーが高いバージョンのオオカミデッキの方が有利となる場合があるからだ。そしてそれはオオカミデッキに限った話ではないのだから。

 店長ローキが攻撃の指示を出す。

「クライニホンオオカミ1体目でジャーマンシェパード鎧ララに攻撃」

 クライニホンオオカミに突進され攻撃を受けるジャーマンシェパード鎧ララ。さらに自らの能力で自身よりもコストの高いカードと戦っても休憩エリアに運ばれることはない。2度目、3度目と攻撃を受けてしまう。コスト5の攻撃をコスト2が受け止める、これが3回分。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数23。


 赤い目のクライニホンオオカミに囲まれる中、立ち上がるジャーマンシェパード鎧ララに声をかける大和。

「すまない。ジャーマンシェパード鎧ララ。何とかするからな」

 今までにないピンチである。店長ともなればカードを売る立場なので強いのは当然のはずだ。

 ローキはターンの終了を告げる。

「ターンエンド」


      〇


「俺のターン」

 大和のターンが始まる。カードを1枚引きデッキの枚数も残り22枚となる。攻撃を受けると召喚するカードのコストも重く感じざるをえなくなってくる。ピンチをチャンスに変えるにはこのターンで何ができるかが大事になってくる。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数22。


「俺は変幻召喚する」

 タートルが「セイントドッグガールが来るのか」と呟く。

「俺はミニチュワダックスフント鎧フレーキの上にカードを重ねて変幻召喚! いでよ! セイントドッグマン!」

 大和の新しいカード。ミニチュワダックスフント鎧フレーキが光の粒子へと変わり、光の粒子は人の形へと変わっていく。犬の耳と尻尾が生えた美青年へと変わりセイントドッグマンが召喚された。

 セイントドッグマンのコストは8。8枚のカードがデッキから休憩エリアに運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数14。


「セイントドッグマンの能力は、相手のカードの能力を一切受け付けないこと」

 店長は「なにやら出してきたか」と呟いた。

 さらに大和はコスト1のボーンソードをジャーマンシェパード鎧ララに装備させる。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数20。大和のデッキ枚数13。


「いけっ! セイントドッグマン! セイントフラッシュ!」

 セイントドッグマンの手のひらに光の粒子が蓄えられ、その手のひらをクライニホンオオカミへと向けると光の粒子でつくられた光線が発射された。

 クライニホンオオカミは光線を受け光の粒子となって消えていく。コスト5がコスト8の攻撃を受け3枚がローキのデッキから休憩エリアに運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数17。大和のデッキ枚数13。


 さらにこれだけではない。

「まだだ! セイントドッグマンは2回攻撃できる! いけ! セイントドッグマン!」

 2回目の攻撃で2体目のクライニホンオオカミが攻撃を受け光の粒子となって消えていく。この攻撃でローキのデッキからまたもや3枚のカードが休憩エリアに運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数14。大和のデッキ枚数13。


 ローキの場のカードは残り1体のクライニホンオオカミのみとなった。ここまできても大和は攻撃の手を緩めなかった。

「ボーンソードを装備したジャーマンシェパード鎧ララでクライニホンオオカミに攻撃」

 ジャーマンシェパード鎧ララがボーンソードを加えてクライニホンオオカミへと突進していく。二体はじゃれあうように転がっていくと、相打ちをして光の粒子となって消えていった。

 これで店長ローキの場は空になった。一体でも残すと変幻召喚に使われかねないため、その発生を防ぐためにジャーマンシェパード鎧ララには頑張ってもらい相打ちという形となった。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数14。大和のデッキ枚数13。


 大和の場にはセイントドッグマンのみが残されている。

「ターンエンド」


      〇


 次のターンはローキのターンとなる。

「私のターン」

 デッキからカードを1枚引き次の手を思考する。

「場面の展開の切り替わりが早すぎる。どうするか……」

 一枚のカードを選択し黒い召喚板に配置する。

「私はクライホッキョクオオカミを召喚する」

 真っ白な毛皮のオオカミが召喚される。コストは4。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数9。大和のデッキ枚数13。


「クライホッキョクオオカミの能力発動! クライホッキョクオオカミは召喚されたターン中に攻撃するとコストが2上がり、さらにこのカードに攻撃されたカードはコストが2下がる」

 大和は怯むことなく説明を聞いている。

「この攻撃が通れば相打ちとなる!」

 大和は「ならないんだなそれが」と返すもローキは攻撃を仕掛けてくる。

「クライホッキョクオオカミで攻撃!」

 クライホッキョクオオカミがセイントドッグマンへと突進してくるも、セイントドッグマンが両手のひらで受け止め、跳ね返してしまう。

「何?!」

「セイントドッグマンの能力は相手の能力を一切受け付けないことだ。デッキによってはこのカードを出されただけで勝てないデッキもある」

 クライホッキョクオオカミは戦闘で負け光の粒子となって消えていく。だがしかし自らの能力でコストが2上がっており、クライホッキョクオオカミのコストは6となっている。コスト8のセイントドッグマンとの戦闘はコスト6で行ったことになりその差分の2がデッキから休憩エリアへと運ばれていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数7。大和のデッキ枚数13。


 大和のターンへと切り替わる。

「俺のターンドロー!」

 カードを一枚引き抜きカードが場に一枚もないローキに手のひらを向ける

「セイントドッグマンの直接攻撃! セイントフラッシュ!」

 セイントドッグマンの手のひらに光の粒子が蓄えられそのエネルギーがローキへと発射される。攻撃を受けるローキ、水が流れるようにデッキからカードが休憩エリアに流れていく。


※現在のデッキ枚数。店長ローキのデッキ枚数0。大和のデッキ枚数13。


 この攻撃で大和の勝利となった。


      〇


 店長ローキは女神フリイヤの洗礼を受けていた。女神フリイヤの手のひらから光を浴び浄化されているのだ。

 その間にタートルは「一時はどうなるかと思ったがな」と言ってくるも大和は「セイントカードで勝つのが仕事だから」と言い返していた。

「もしかしたらタートルが言うようにいつか犬デッキをみんな使うようになるかもしれないな。だがな、良い手札がくるかどうかはっきり言って運だ。運に強いも弱いもない。シャッフルされたデッキから何がくるかは自分で選べない」

 タートルは女神フリイヤを見てほほ笑んだ。

「手札に何がくるかは神のみぞ知るって感じかな」

 大和も続いて女神フリイヤと洗礼を受けるローキを見た。

「そうかもしれないな。まあ何がともあれって感じだ」

 何がともあれ今回は倉間大和が勝利し、そのおかげで町も悪魔の手から守られていくに違いないのだった。


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