【76】チート過ぎる復活
オスクリダド全員は大惨敗を喫し、何処にあるかも不明な、全く知らぬ村へと集められていた。
意識があるのはキアの分身だけという惨状。
俺はというと限界を超えた暴走と戦いの激しさにより、メストが枯渇した状態と身体もボロボロになり、目を覚ますまで相当数の時間がかかると夢の中で水龍達に言われた。
解放しろと言ったのはお前らだけどな。って強く思ったのを鮮明に覚えている。
順番に一撃KOされた連中は数日で目が覚めたようだ。案の定というか俺はやはり時間を要してしまい、俺だけが目覚めない日々が何日も続いたようだ。
その間にキアが分身キア俺の中に入れ回復を早めようとしたようだが、暴走を完全解放した為か拒否され入れなかったと後に聞いた。
今キアの分身は本体に戻っている。
完全体となったキアが俺の回復に専念してくれてたらしい。
ありがたい話だ。
目覚めてからはロスト、ベールが周囲を警戒しロウガンとアサドが俺を守っていたようだ。
周囲は天をも貫く程高くそびえる岩壁に囲まれヴァンパイアや眷属の住居があり、中央正面に中級貴族程度の屋敷があった。
「色々探知してみたけど、あの中央にある屋敷にアイツがいるんじゃないかしら?」
「まだコイツも回復してねー。勝手に動くなよ」
「ザハルがこんなになるなんて……ねぇキアいつ目覚めそうなの?」
「消耗が激しすぎて正直何も分かりません。もしここにマイムが居れば、まだ少しは何か変化があったかもしれませんが……」
「そうは言っても早く目覚めさせないとこのままじゃまずいんじゃない?」
ベールが焦った口調でキアに問い質す。
「分かりませんよ!私も産まれてからずっと見てきてますが、こんな主は初めてなんですから!」
キアも焦りを隠せなかった。
「ごめん……」
ロウガンがキアの肩にそっと手をやる。
「キア、大丈夫だ。コイツは絶対目覚める」
「うん……」
誰もが経験の無いこと。誰も見たことがなかったズタボロのザハル。
死んでいてもおかしくない傷や骨折。
俺はずっと皆の声は聞こえていたが、暴走空間から抜け出せずにいた。
「おい、水竜。いい加減俺を帰せよ。皆が心配してんじゃねーか」
「だから無理じゃと言うておろうが!
我らの力を使いすぎて、今お主はメストが枯渇してる。復活したとしても、精神体のお主は消えてしまうと言うておるんじゃ」
「突然じじぃくせー喋り方しやがって。
じゃーどうすんだよ!」
「何か別の魔物を取り入れるしか方法はないじゃろうな。でもここでは何も出来んし困ったもんじゃのう」
「ちっ。せめてキアとリンク出来ればなー」
「焦っても仕方なかろう。時を待つのだ。
今お前が出来るのはそのくらいだ」
場面変わって謎のヴァンパイアと一族の会話、
「姉様!ザハルと戦ってきたけどめちゃくちゃ強いじゃない!腕折られちゃったじゃない!」
「あたしは弱いだなんて一言も言ってないわよ。忠告しようとしても何も話聞かなかったじゃない。自業自得よ」
「まぁでも倒してきたわよ!姉様の仇を取って連れて来たから、如何様にもしてちょうだい」
「あらあら、全く貴方はやることが荒いわね。分かったわ。少し会いに行ってみましょうかね。貴方は治療をしてなさい。貴方が来ると、その……ややこしくなるから」
「酷っ!」
姉は当主である妹の感情をフル無視してザハルの元へと向かった。
姉はザハルの姿を遠目から見た瞬間に確実に妹がやりすきてしまったことと、ザハルが極めて危険な状態と言う事を即座に探知した。
そうあの暴走妹と違い姉は癒しのヴァンパイアであった。
警戒心を強めるオスクリダド。
ヴァンパイアは優しく微笑み警戒心をを一瞬で解きザハルの横に座った。
「安心してちょうだいね。今からザハルさんを目覚めさせます」
姉ヴァンパイアの身体が白く光り、ザハルを包み込む。
どうやら何かしらのスキルを発動するようだ。
「スキル:時間停止
スキル:古種の根源
ふぅ……これで大丈夫。後は彼の生命力次第です。その内目を覚ましますよ」
ヴァンパイアはそう告げてまた屋敷へ戻っていった。
一方現在のザハルの世界では。
「おいじじぃ、何か届いたぞ。なんやこれ?」
「おー!これは古代種の種じゃないか!
お前これで古代種の力を取り入れることが出来るぞ!」
「そしたらどうなるんだよ」
「元の世界に戻れるし、更に化け物じみた強さを手にできるって事だ」
「おー!え?でもこんな豆粒をどうやって開花させるわけ?」
「お前が望む物を想像するのじゃ!古の魔物でお前が必要だと思う物じゃ」
「ヴァンパイア」
「ヴァンパイア!?今対峙してる相手ではないか」
「ああ。それでもあの力は全てに相性が良い。絶対に必要な力だ」
「いいじゃろう。おいベヒモス!お前も手伝え。そうと決まればさっさと発芽させて、お前は皆の元に戻るがいい」
「すまんな。助かるよ」
「なーに気にすることはない。前も言ったじゃろ?お前と過ごすのは案外楽しいのじゃよ。これからもお前の行く先を沢山見せてくれ」
「ああ」
「スキル:時間加速開始」
アクセルレートをされた種子はザハルの中で大きく大きく変化していった。
ザハルの姿もまたエルフ形態からヴァンパイア形態へ進化を遂げたのである。
「これは凄いや。全ての力が溢れてくる」
「既に成長限界に達していたレベルも貯まっていた経験値で大きく伸びるじゃろう!さぁ行って来いザハル!」
目の前が白くなり真ん中から光が差し込んできた。自然と導かれるように足を踏み入れると、オスクリダドのメンツが勢揃いし俺の名前を叫んでいた。
「タバコーーー!!!激甘コーヒー!!!」
俺の雄叫び復活により笑う仲間も居たがロウガンは呆れながら頭を抱えていた。
キアさんの目が気になったが……キアは俺に抱きついてきた。
「主……主、よくぞ、よくぞお戻りいただきました。
キアは……キアは……」
「キア……すまなかった」
俺は糖分切れとニコチン切れのダブルパンチ状態により手が震えている。
キアがタバコを咥えさせ、ロウガンが魔法で火を付けてくれた。
その瞬間訪れたのは愛しきヤニクラ。
とまぁ冗談ではないが冗談はさておき、新たに得たヴァンパイアの身体に俺の身体が隅々まで馴染んでいくのが分かった。
瞬間俺のメストが跳ね上がり、貯蓄された経験値によりレベルが跳ね上がっている。
現在のレベルは6200。
いや上がりすぎだろ!どんだけ貯めてたんだよ!今まで努力してきたことが一瞬で超えられてるじゃねーか!
逆を言えばそれだけ古代種の種が凄すぎるという事か……
「主、新しい力を手に入れたのですね。次の種族は?」
「ヴァンパイアだ」
「そうでしたか、それであればこの力も納得です」
「おいおい、やられた相手の種族になりたいってなんで思えるんだよ」
「必要な種族だったからだ。それ以上でもそれ以下でもない」
ロストは少し青ざめた顔で質問した。
「って事はよ、あんた血を飲むって事でしょ?ウゲー気持ち悪い」
「今の所俺は欲してないぞ。多分これからも」
「何でよ」
「知らねーよ」
新たな生物を発見したマスコミや科学者レベルで質問攻めを食らっているところに、2人のヴァンパイアが俺達の元に近寄ってきた。
正確に言えば俺もヴァンパイアだから3人とカウントされるのかもしれんがね。
1人は穏やかそうで1人は敵意剥き出しのアイツである。
「ザハルさん目が覚めたのですね。
一先ず安心致しましたわ。名乗るのが遅れましたわね。
私はエリン・ロズウェル。ここにいるノクターン家当主セリーナ・ノクターンの姉でございます」
「ザハル目が覚めたのなら付いて来なさい」
「あらあら、セリーナったらプリプリしちゃって。ザハルさん気にしないで下さいね。さぁ皆さんもご一緒に」
「プリプリしてないわよ!それに姉様、そのプリプリって言い方止めて下さい!
威厳も何もなくなってしまいます!」
エリンはニコリと笑い、セリーナの頭を撫でていた。
俺達はこのとき思った。
もしかしてエリン・ロズウェルの方が結果的に最強なんじゃねーのか?と……
古代世界編の後にでも少しマイムとか別キャラ視点の話とかも挟む予定です。




