【63】闇属性【前】
前回キアの絶妙に微妙な表情を見てしまった俺であった。いつもなら別段気にも止めない事であるんだけどね……今回は何となく胸騒ぎがする。
考えても仕方ない……キアに聞いてみるとするか。
「キア、キア。ん?どこにも居ない」
家や周辺地域に探知スキルを広げても、どこにもキアが居ない。
「どこ行ったんだアイツ」
「何ですか?主」
「うわー!!!」
突然後ろから現れたキアに肝を冷やした。
「何だよお前!居るなら普通に出て来いよ!」
「いい感じでビビってましたね。何よりです」
「最早隠すことすらしなくなった嫌がらせ、どうもありがとう!」
「いえいえ。して、何のようです?」
「アイツだよ。ケント。
以前キアが少し曇った顔をしてたやんか?あれ何?」
「杞憂かもしれませんしそうじゃないかもしれない事なんですがね、多分アイツ転生者や転移者ではないですよ。
何というか、もっと禍々しい物と言っていいかもです」
「禍々しい?魔物の類いか?」
「魔物の砲が可愛いかもしれないですね。何と説明すればよいのやら」
「何だよ!キアさんって人にも関わらず歯切れが悪いじゃないか」
「多分なんですけど、アイツ自分の力を手にするためだけに魔物を食らってます。しかも必要な部位だけ」
「え?グロ……」
「主も人のこと言えないですけどね」
「俺はもう別に人間じゃないし、精神体になってしまった俺には必要な養分でもあるから止むなしだな。
グロいのはさ、だとしたらアイツは人間の身体の時から食らってたことになるぜ。
普通食えないって。人間には反動がデカすぎて猛毒って言ってもいいからさ」
「ええ。そうなんですよ。ですが彼は食している」
「それガチ?見た訳?」
「見なくてもメストで分かりますよ。
主、本当に全く関心が無いのですね」
「だってよ、なるようにしかならんじゃんよ。言うてお前の気付きは薄々分かってたぜ。ただまた首を突っ込むとさぁ、俺のスローライフ目標がどんどん遠のくじゃんよ」
「この際ですが言わせてもらいますと……主、スローライフなんて物は諦めて下さい。現実的に考えて無理じゃないですか。
オスクリダドの件もありますし、何より主は最高ダンジョン踏破者&最高レベル保持者ですよ。
厄災なんて当然ながら向こうからやって来ますよ」
「分かっとるわ!それでも生まれ変わったなら自分の好きなように生きたいって願って何が悪いんじゃ!少しくらい希望を持ってもいいじゃねーか」
「主……諦めましょ」
「くっ……悲しすぎる主人公人生。分かったよ!じゃあ、あれだかんな!色々首突っ込むからお前も手伝えよ!全力で!」
「勿論ですよ。主の為ならば主のシステムとして生まれてきた私は全力でサポートします」
「じゃあ、あれだ。ロウガンの所に行こう。今20階層だっけ?」
「ええ。不吉なことが起きてなければいいのですが……急ぎましょう」
と、キアに急かされるように俺は転移でダンジョン20階層へ到達。
「なんだこれ?俺が知ってる20階層とは違う気がするぞ」
「魔物が殺気立っていますね。まるでスタンピードのように操られている感じがします」
俺は直ぐに理解した。
これは良くないと。今居る階層全てをサーチするためフルリサーチを発動したところ、ロウガンとケントを発見。
ロウガンはケントを止めようとしている。
「全くどうなってやがる!急ぐぞキア」
俺とキアは早急にロウガンの元へ向かい、ロウガンと合流。
「ロウガン!何があったんだ!」
「ザハルか。ケントをこのまま放置すれば間違いなく魔物よりたちの悪い物になる。自分が強くなるために幼少期より少しずつ自分の体内に魔物を取り入れていたらしく、この有様だ。所謂魔物暴食《魔物イーター》のスキル保持者だ」
「魔物イーターか。ケント!少し話そう」
「これはこれはザハルさま、如何なさいましたか?」
「お前いつからこんなことやってる?」
「そうですねぇ……5歳位の時からですかねぇ。最初は好奇心でして、祖母の脱皮した抜け殻を食べてみた事がきっかけです。食べてみてビックリしました。力が湧き出てくるんです。だから他の動物や魔物本体の味やスキルが気になり始めまして、食べる習慣を付けてみた事が始まりなのです。
どうですか?素晴らしいでしょ?」
「本来魔物を食らうと人間は死ぬ。
お前、まさかと思うが人間にして主属性が闇属性か?」
「はい!さすが良くお分かりで!」
「そうか。はぁ……結禁牢獄。キア、エコーを連れて来い」
「承知致しました」
俺にしか解除できない牢獄でケントを封印し、エコーに判断を委ねることにした。
言って、本来エコーの妻であるビッチの脱皮した抜け殻を食べているのだ。
禁忌中の禁忌である。
エコーにとってもビッチにしても許せることじゃない話だ。
これがきっかけで、コイツのイカれた心と考えが培われてる。
ここまでの見解で話すならば、俺・キア・ロウガンは殺すべきと判断している。
情状酌量の余地なし。
脱皮をする魔物は脱皮後の体と抜け殻に、とても神経を使う。簡単に言うとデリケートな問題なのだ。
それを食うなど、ましてや身内も身内である孫から食われたのだ。
許せるはずが無いだろう。
俺もビッチとは仲間だ。アイツを辱めた事は許せんし、何よりヒューマン属で闇属性は危険因子以外何物でもない。
本人が危険なのではない。必ず取り込まれて、もっとタチの悪い魔物崩れになることがよろしくない。
牢獄の中から何か言ってるけども、超防音対策をしているので無音。
「ロウガン、キアが戻ってくるまで待ってよう」
「そうだな。それしかない。最近はオヤジ、オヤジって言ってよ懐いてたから色々教えてやってたんだがな。ある時から壁にぶち当たると不思議な行動をして、壁を突破してきたんだ。
まさかそれが魔物イーターのスキル効果とはな」
「本当に面倒くさいよ!やっぱり殺しておくべきだったわ。腐ろうがカビが生えようがゴミはゴミだな。結局後回しにしただけだ」
「だな。ここらが潮時だろう」
俺とロウガンはキアの帰りを待っている。
キアはエコーとビッチを連れてくるだろう。もしかしたらケントの両親も。
うん。皆も現実を知った方がいい。




