【56】再始動という名のセカンドキャリア
――――ダンジョン100階層――――
「なんだかここに来るのも懐かしい気分だねー」
「主はそうかも知れませんね。私はちょくちょくロウガンをシバキ……可愛がりに行ってますよ」
「シバいてるって言いかけたよね?というか、何なら可愛がりも同じ意味だから、やってること一緒だよね?
キアさんや、やめてあげなさいな。
ブラック企業(財団法人)的な言い訳はやめなされ」
「ですが、アイツ言っても聞かないんですよ」
「だからとて、反社的解決はダメですばい!
というか、お前を怒らせるってさ、アイツ何をしたのよ?」
「行く度にラーメンばっかり作りやがって、訓練そっちのけなんです。私の顔を見れば、直ぐに試食させようとし、お陰で最近少しお腹周りが……許せん!」
強く拳を握りしめ、キアは鋭い眼光をしていた。
「完全に八つ当たりですやん!
こっわ!ダメだ!この人ダメな人だ!」
「だってですよ。私も元は転生者でラーメン大好きっ子だったんです。あんなに美味しいブヒブヒ様の匂いを嗅ぐと替え玉しますよ」
「それ自己かんりぃーーー。
同情するぜロウガンには……」
「あ、主はロウガンに付くんですね!?」
「付くも何も、お前のはただ自己管理の問題だし何より八つ当たりMAXじゃねーか。
替え玉しなけりゃいいじゃん。んでそんな事だから恐らくはスープまで飲みほしてんでしょ?」
「そんなの当然じゃないですか?ラーメンを食べる上での義務です」
「個人の自由だよ!義務教育みたいに言ってんなよ。無茶苦茶ロウガンが被害を受けてんじゃん。
勘弁しちゃれよ」
「じゃー今後は主が私を止めてください。それなら我慢できるかもしれないので」
「圧倒的他力本願に恐れ入るよ!」
「まぁまぁ私と主の仲ではないですのん」
「何?急に背中が凍る喋り方」
「あれ?似合いませんか?」
「一応確認だけどさ、お前システムなんだよな?機械が〜なのん?なんて喋る訳?」
「それはですね。チョチョイっとシステムを変えればお手の物です」
「やっぱりお前が最上級に自由な生物なんじゃないかと、最近引くほど思ってきたわ」
「そうですか?でも私基本的には主の脳みそに住んでますからねー。以外と自由ではないですよ」
「寄生虫みたいな言い方は止めてくんない?すんごい気持ち悪いから……」
「そんな些細な事より主、着きましたよ」
適当・自由・我道・超越者・実は最強・転生者にしてシステム権限者・必要に応じて単独行動。
こいつマジでエグくない?皆さぁ俺が主人公って思ってるよね?いやまぁ主人公なんだけどね……主人公、意外と出来ないこと多いのに対してキアさんときたら、人の体に出たり入ったり出来るし、一体化してるときの演算能力もエグいけど、この方は単独行動も制限なく強いのよね。
ガチで無双してるんだけど……
新章はこの方が主役で良くない?
あたち、スローライフしたいんだけど……
どう考えても巻き込まれ系主人公の地雷踏みまくりだよね。
っていうか、主人公って皆巻き込まれ系なのはなぜなんだろうね。
生前見たアニメで俺は衝撃的なセリフを覚えている。
○空が居なければ悪者は地球に来ない。
いや!そもそもの主人公否定!って子供ながらに思ったのを覚えている。
でも結局いっぱい来てるし!って思ったりもしたけど、大好きなアニメすぎて見た上に録画して何回も見てたなぁ。
作者マジでリスペクト。
で、まぁ結局何が言いたいかというと、超越者としての仕事が終わったら、本当にのんびりスローライフを楽しませて下さいって切実に願ってるって事かな。
だってキアさんだけで成り立つもん。
「何さっきからぶつぶつ言ってるんですか?全部聞こえてますからね。さっきも言いましたけど、着きましたよ」
「あ、はい……」
すんごい無表情で言われて俺は従うしかなかった。だって目の奥が笑ってないんだもん!あの目嫌い!怖いよ!
生殺与奪の権利を持たれてる気分!
「主……?」
「はい!着いたね!着いた!で、ん?あれ?ロウガンいねーじゃん」
「居るじゃないですか。目の前に」
目の前に居るのはゴリマッチョになり顎髭と長髪を後ろで束ねた、結構なイケメン。
確かにステータスを見るとロウガンである事を示している。
キアZAPで変わりすぎだろ!
俺は密かにリバウンドしろ!と、強く願った。
し、しかしまぁここは敢えて、敢えて平静を装って……
「よう!ロウガン!久しぶりだな」
「おー!ザハルではないか!久しいな!
すべて片が付いたのか?」
「おう!だから来た。そんでよぉ、久しぶりにお前のラーメン食わせてくれよ。
オラわくわくすっぞ」
「やめれー!お前BANされるぞ!」
久しぶりに食ったラーメンは圧巻の美味さだった。
待ち合わせ場所でロストたちを待っていたが一向に来ないので、俺たちは暇を持て余しダンジョン踏破することを決めた。
前回踏破階数の101階層からスタートし、順調に109階層まで辿り着いた。
順調と言えど、100階層以下とは魔物の強さメスト量は圧倒的に差があり、正直俺たち以外での踏破は無理であろう。
ギリギリ、ペスカも来れるかな?ってレベルだ。
やはり彼らを残してきて正解だった。
そして辿り着いたボス部屋110階層。
ロウガン、キアと俺の3人は躊躇無くボス部屋に入り驚愕した。
まず最初に声を上げたのはロウガンであったが、直後に冷静さを取り戻し眼前の生物に対して議論が始まった。
「なんだこれ!ケルベロス!?ん?いや違うな……おいザハル、これなに?」
「うん。確かにな。一瞬ケルベロスって思うよね」
「ここの魔物って絶妙に変ですよね」
「ロウガンさぁ元は魔王じゃん?
地獄の番犬がケルベロスだよね?じゃーこれは……」
「元魔王的に言わなくても、地獄の番猫じゃねーの?顔ごしごしして手をペロペロしてるし」
「って事は私たちが来る前に何か食べたんでしょうね。尻尾もピーンとなってますし、今から食後の運動って感じですかね?」
「ただあれだな。こいつ見た目の面白さに惑わされたらダメなやつだな。1つの頭でレベル600で、合計したら1800もあるな」
「1800!?俺より強いやんか!」
「だな」
「主、私よりも強いです」
「だったらさ、キアとロウガンで協力して倒してみたら?
あたち見てる」
「なぁキアの姉御よ。あんたの主は無責任だな……っ!お!あぶね!」
ロウガンの皮肉を遮るようにネコベロスの猫パンチ。
なかなかの衝撃に思わず笑いが出てしまった。
ロウガンは寸前の所で交わすことに成功するが、ギリギリの戦いを強いられている。
実はロウガンが必死に戦ってるのには理由がある。
何を隠そう、キアさんが戦いを放棄しロウガンの育成に役立つ相手と考え一切のサポートをしていないのである。
鬼畜姉御!
本当に危険が迫れば助けるんだろうけど、どうやら覚醒を促してるようだ。
まぁ死ぬことはあるまいし、好きにしてくれ。
俺もキアさんも既に気付いているが、あれは同時に3つの首を落とさないと何度でも復活する。
ロウガンも色々試すうちに、ようやく気付いたようだが方法とタイミングを見出せないでいるようだ。
「あのー!すみませんけど!そこで優雅にお茶してるお二方!
助けてもらえませんかね!?」
「ん?」
「そう!羊羹を頬張ってるあなたに言ってますが!」
「主、甘いコーヒーと至福の1本です」
「サンキュー。やっぱりキアさんは気が利くね」
「いえいえ、それほどでも」
「あのー!聞いてます!?あぶね!死ぬ死ぬ死ぬ!これマジやばいですって!」
「待て待て。一服するまで待ってくれや」
「いやいや、人が死にそうなときの一言!?」
「死なないって。うん。大丈夫!君なら大丈夫!ね!キアさん」
「ええ。ロウガン。甘えたことを言う暇があるなら倒し方を死ぬ気で考えなさい。
手数で負けてるなら何をするの?
あなたは鈍足だったかしら?」
キアの的確且つ厳しい一言がロウガンに命中。
ロウガンは少し正気に戻り、スピードを最大限に高めて、3つの猫首のある1点に集中して攻撃を仕掛け最大限弱体をしたのを確認し、スマートに3頭の首を切断。
15分に及ぶ戦いに終止符を打った。
「はぁはぁはぁ」
俺は一服しながら冷静に答えた。
「ふー……ほら、勝てたじゃん」
「勝てたじゃん。じゃねーわ!」
「いやいや、その程度の魔物で死んでたら、この先お前は何億回死ぬわけ?
このタイプの魔物は戦い方さえ分かってれば、チンパンジーでも勝てる。お前も超越者なら、そのくらい自覚したほうがいい」
「そう言いながら、無傷ではないですか。何か大きな問題がありました?ロウガン?」
「いえ、ないっす……」
「よろしい。主、それでは111階層に足を踏み入れて100階層に戻りましょうか」
「だね。そろそろ来てるといいけどなぁ」
「流石に来てるでしょう」
我らがボス、キアの姉御の言うように111階層を踏破し、そのまま100階層へ戻るとオスクリダドのメンツが揃っていた。
先頭にロストちゃんが腕組みをして待っていた。
もはや見た目は女子プロレスラーですやん……
「待たせてすまない。改めて紹介する。
我らがオスクリダド。この世界を変えるために発足した組織だ」
遂に揃ったオスクリダド。超越者6人による新たな冒険の開始である。
ちょいと体調を崩してました。すみません。




