【48】ザハルの企みと利害が一致した魔王
家に戻ってからも俺なりに色々と考えていた。
元々魔物しか居なかったって、考え方によっては白亜紀に人間が誕生してしまったみたいなもんだよなぁ。
そりゃ魔物に勝てんわな……って考えるのが普通だよね。
寧ろそんな中で文明を築いて曲がりなりにも魔物と戦ってる人間は大健闘なんじゃないのか?
というか、原初の人間たち凄すぎるやろ!
ちなみにロストとの戦いの後、勝利した事だけは家族に伝えた。
喜んでくれたけど、黙って行っていたので我が家の女王陛下からは、めちゃくそ怒られたのは言うまでもない。
始祖のハリネズミから色々と問い質されたが、黙秘を貫いた。話しても何の生産性もないからだ。
俺の中で家族でもある一定のラインが何となく引けたので、結果だけ伝えればいいだろうと言う考えに変わったとも言える。
話した所で何も変わらないし、何か出来るわけでもない。余計な心配をかけるだけだし、それに、皆先に逝ってしまうのだから……
そんなことよりもちょいと気になることがあるので、突然ではありますが魔王城へ行ってこようと思っています!
何を話すかって?
そんなもん同じ日本人でっせ。
話したいことは山程ありまんがな。
と、まぁ魔王に会いに行く前に少し用意していきたい物もあり、ダンジョンの手頃な階層で必要物資を掻き集めた。
そうそう、最近は全然触れてもいなかった話だが、冒険者たちもスタンピード発生後からは積極的にダンジョン探索を始めたようだ。
強くならないと何も守れないことに気付いてくれて何よりだよ。
さて、必要な物も全て揃ったし魔王城へレッツゴー。
俺が魔王城に着くと、当然ながら大騒ぎになり無数の衛兵などに取り囲まれる事態となった。
そりゃそうだよね。
しかし今回は宣戦布告でも戦争をしに来たわけでもない。
本当に個人的な用事なので、内容を伝えて取り敢えず魔王に話してもらうことにした。
当然その間も物騒な物で取り囲まれているが、全く問題ない。
暫く待っていると聞いたことがある声が聞こえてきた。
「貴様はイカれてるのか?単身で城に乗り込んで来るとは、ここで殺されても何も文句も言えんぞ」
「大丈夫。お前たちには絶対無理だから。
それよりも俺はお前に個人的な話があってきたんだよ」
「全く虫唾の走る人間だ。
それになぜ余が貴様の話を聞かねばならん?」
「そうだな。義務はねーな。
だけどお前にも得な話だと思うぜ。
俺が思うにこれに関しては俺とお前で利害は一致してると思うんだけどな。
話でも聞いてみないか?」
魔王は少し考え衛兵に武器を降ろさせ、ザハルの話を聞く態勢に入った。
「……まぁ聞くだけ聞いてやろう」
「すまんな」
「場所を変えよう。流石にここでは話しにくかろう」
魔王はごく近しい側近だけを連れザハルを会談部屋に案内した。
「して、何のようだ?」
「取り敢えず戦争とか領土とかの話ではない」
「俺たちの間にそれ以外の話が必要なのか?」
「ああ!必要だね!」
魔王は少し笑う。
「ふっ……申してみよ」
「お前さぁ、転移前は日本のラーメン屋で修行してたって行ってたよな?」
「ああ。だが突然世界が変わり、訳のわからんこんな世界に連れてこられたのだ。
帰るには全ての人間を殺さないと帰れないと聞いた」
「どうしても帰りたいわけ?」
「当たり前だ!俺は独立の一歩手前だったんだぞ!
ラーメン屋として生きていこうと決めて、やっと願いが叶う瞬間にラーメンの材料すら何もない、興味のない世界で生きて行くなんてお断りだ!」
「例えばさぁ、必要な材料、道具があり材料は常に供給できる状態があれば別に無理に帰る必要もなくない?
それとも残してる大切な人とか居たの?」
「それは居なかったが貴様の言うように、そんなご都合よく材料等がある訳無いだろ」
「それがあるんだなー。というかお前が必要な物の詳細を言ってくれれば、俺が全部揃えれる。
勿論代用品でしか補えない物もあるけどな」
「なんだと!?」
「実はさぁ、俺も元日本人だからよ。
時にふと食べたくなるのよ。とんこつラーメンをね」
「とんこつだと!?お前九州人か?」
「おう!福岡人よ!」
「まじか!同郷じゃないか!」
「そっ!だからよ、魔王としての仕事も大事かもしれんがよ、作ってくんない?
とんこつラーメン。
いいじゃないか、ラーメン魔王って店でも開いたら」
「受け入れられるわけねーだろ!」
「大丈夫。美味けりゃ皆食いに来る。
魔王軍と人間の垣根なんて、俺たちが仲良くしてれば何れ緩やかなものになるんじゃねーか?
まぁ俺の嫁が勇者で、お前たちと敵対しているけど、言うてアイツも元日本人だから、ラーメンが存在するなら食いたいはずだよ」
「分かった。いいだろう。
しかし、1つ材料が足りない」
「なんだ?」
「辛子高菜だ」
「確かにあったほうが100倍美味いな!
激辛か?」
「激辛だ」
「OK。直ぐに用意してやるから、仕込みとかしていてくれ」
「いいだろう。不思議なものだ……
最大の仇敵とまさか食文化で繋がることになるとはな……」
「食は大事な文化じゃねーか。ただ高菜ってのは存在しねーから、代用品になりそうなものを何種類か取ってくるから、お前が判断してくれ」
「任せろ」
「じゃー行ってくるわ」
俺はラーメン作りという専門的なことは職人である魔王に任せ素材探しのために、再びダンジョンへ潜った。
キアに聞きながら、代用できそうな野草を6種類ほど採取し直ぐに魔王城へ行くと、懐かしい……まじで懐かしい香りが漂っていた。
この豚臭い香りが食欲を掻き立てる。
魔王の顔は生き生きしてるように見えた。
直ぐに採取してきた野草を渡すと、一目見ただけで1つの野草に手を伸ばした。
「これだ!これなら出来る!」
「っしゃー!じゃーコイツは俺が漬け物として直ぐに作り上げてやる」
「おう!頼んだ!」
俺のスキルで発酵を最速に促し、一瞬で高菜漬けの代用品が完成した。
更に隠し持ってた香辛料で激辛にし、激辛の辛子高菜が完成したのである。
「魔王!出来たぞ!」
「入れてくれ!それで、完成だ!硬さは?」
「バリカタで!」
「おっ!?俺もバリカタ派だ。よし出来た。
食ってくれ!」
「ずるるるーーー……ゲロ美味!!!
何よ何よ!お前天才やないか!クッソ美味いぞ!お前も食ってみろよ!」
魔王は一口食べ懐かしのあの味が完璧とは言えないが、限りなく近く再現できているラーメンに一雫の涙を流した。
「美味い……なぁ、やっぱりラーメンっていいもんだな」
「ああ、そうだな。
で、このラーメンの名前は何にするんだ?
異世界ラーメンか?ワッハッハッハッ!」
「そうだな。
“魔王ラーメン”だな」
「まんまじゃねーか!
ネーミングセンスなさ過ぎだろ!」
「う、うるせーな!美味けりゃいいじゃねーか!」
「おい、たまに食いに来ていいか?
めんどくせー立場とかは抜きにしてよ」
「ああ、待ってる。
もっと腕を磨いて、もっと美味いもん食わしてやるよ!」
「期待してるぜ。じゃー今日の所は帰るとするよ。
あ、そうだ。これ持ってろ」
「なんだこれ?」
「俺と会話ができる。食材調達の時とかに使え。俺がここに行けないときは、このホムンクルスを向かわせるから、攻撃禁止な」
「分かった。城の者にも伝えておく」
「それとこれはまだ俺とお前たちの中だけで留めておいてくれ。人は直ぐに大騒ぎするからな」
「そうだな。元来人とはそういう性質だ。
それに俺は、この世界の人間に対しては今更何もなかったような顔は出来ん。
それだけ多くの人間を手に掛けてしまった」
「それはお互い様だろ。お前にとって魔王軍は魔王国の国民で、俺たちも大量に殺してる。
戦争だからな。
だから戦争は何も生まない。恨み憎しみ悲しみという負の感情だけしか生まない。
何処かで誰かが変えるしかないと俺は思ってるぞ」
「そ……そうだな」
「俺はこういう繋がりも1つのきっかけになればいいんじゃねーかな?って思ってる。
結果、この代で変えれなかったとしても、いつの日か必ずってな」
「そうだな……お前の言う通りかもな」
多分というか、この会談と俺と魔王の繋がりが漏れればレーニアは激昂するだろう。
国民も皆が恐怖するだろう。
まだ時期ではない。時期ではないけど、俺と魔王のように色んな柵がなくなり、皆が1つになれば魔王が居ようと勇者が居ようと、平和な世界というのは簡単に訪れるんじゃなかろうか……って俺は今回の事で、より強く思った矢先、事件は起きてしまうのであった。
何処にでも空気とタイミングを読めない馬鹿は居るということか……




