【43】スタンピード(前)
ファンタジーをよく知る人たちであればスタンピードがいかに恐ろしいものかは理解しやすい事であろう。
そもそもスタンピードとは魔物や獣たちが群れを成して暴走したりする事である。
パニック状態になり暴走しまくる事で人間界が大混乱になったり、多くの犠牲者を生む謂わば天災のようなものなのだ。
ただでさえ天災のような現象を作為的に起こし自由に魔物を操り人間界を襲わせたとしたらどうだろうか?
それはもう天災ではなく、ただの悪意の塊でしかないだろう。
そしてこの日、ある者により作為的にスタンピードは引き起こされた。
その者とは……
勿論……
他ならぬ魔王である。
あの日魔王軍は俺に完全に淘汰され軍編成を見直していた。
魔王ロウガンは最初に着手したのは勿論自身の生命維持であった。
その月日には1年ほど費やしてしまい、予想外ではあったが、その後は側近のダラル閣下・ゲンズ将軍・ドイデン将軍の蘇生と能力の復元に全力を費やし、一応の体裁を保つのに2年の歳月を費やしたのである。
ダラルは己の力を注ぎ自身の回復をしてくれた魔王を労っていた。
「魔王様、何もご自身のお力を費やさなくても……勿体のうございます」
「そうでもないさ。ダラル、それにゲンズとドイデンは我が国にはなくてはならない柱だ。
お前たちを失うことは余にとってみれば、もう魔王でいる意味がないのだ」
「恐悦至極にございます」
「しかし、あれはなんと言ったか……
ザハルとか言ったな……余も力を蓄えてきたと思ったが、全く歯が立たなかったな。
何だあの化け物は……本当に人間なのか?」
「分かりませぬ」
「ダラル、ゲンズ、ドイデンに命じたいことがある」
「は!いかなる命令でも遂行してまいります!」
「同じく!」
「陛下の意のままに」
「うむ。このまま、まともに戦っても奴が邪魔をして我らは衰退と復活を繰り返すだけで何も変わらんだろう。
そこで嫌でも勇者を引きずり出す作戦に出る。
ドイデンはこれよりダンジョン5階層の階層主になり5階層以下を貴様の管轄下に置け」
「御意!」
「ゲンズは5階層〜10階層を管轄下に置け」
「承知いたしました!」
「そしてダラル、君は20階層までを管轄下に置け」
「は!」
「期間は10日以内だ。
統治下に置いたら人間共に対しスタンピードを起こす!
レベルの低い弱き人間たちをダンジョンの魔物で淘汰するぞ!
さすれば、嫌でも勇者も……奴もまた出てこよう。クックックックッ」
ここからの魔王軍の動きはとてつもない速さで動いた。
魔王の指示通り側近たちは10日と言わず半分の5日でダンジョンを踏破し、フロアマスターとしての権限と魔王の特権により20階層までに巣食うダンジョンの魔物が完全に統治下へ入ったのである。
「魔王様。全て完了致しました」
「よくやった。思っていたより早く事を進めてくれたことに感謝する」
ダラルは平伏した。
「勿体なきお言葉です」
「ドイデン!それではまず貴様から人間の城へ向かえ。奴らは精々レベル3とかだ。
皆殺しにせよ」
「しかと承りました」
この日作為的に魔王の手により第一次スタンピードが発生した。
当然ながらダンジョンの魔物はレベル1から6の魔物たちである。
魔王城付近にあったメク城は簡単に陥落した。
メク城管轄の村や町も全て魔物によって、無惨に蹂躙されたのである。
魔王はそのままゲンズへ指示を出し時間差で波状攻撃を続けスタンピードを継続させた。
それにより魔王軍はザハルに蹂躙される時より更に版図を拡大させた。
拡大させた場所には奴隷に落ちた人間以外に生きている人間は存在しない有様であった。
鬼畜の所業は留まる事を知らずジェンの王国と友好国となったラマグリダ王国の斥候から知らせが届いた。
知らせを聞いたジェンノ王国国王は直ちに兵の編成を行い援軍を送ろうとしたが、ザハルにより止められる。
「レーニア!気持ちは分かる。だが兵を行かせても無駄死に終わる」
「でも見捨てれないでしょ!」
「わかっている!こうなっては仕方ない……
レーニアはラマグリダ王国へ向かってくれ。
フィリックス!お前は第一王子だ!色々言われなくても何をすべきなのか分かるな」
「はい。父上、女王陛下、お任せください」
「ペスカを置いていく、ペスカ俺との約束はここまででいい。
人型になり子供たちを王国を守ってくれ」
ペスカは人型に変身した。
「承知致しました」
「ペスカ!そんな能力があったのかい?」
「実は……黙っていて申し訳ございません」
「とっても心強いよ!宜しくね!ペスカ」
「はっ!」
「マイムはレーニアの下にいろ。色々と助けてやってくれ」
「わかった」
「俺は1人で行く。レーニア、今回は勇者として戦うときがあると思う。
1つだけ約束しろ。
無理な時は絶対に引け」
「女王として勇者として引けない環境なら戦うわよ」
「それでもだ!異論は認めん!
いいな!!」
「でも!……」
「マイム!意味は分かるな!」
「大丈夫だよ」
ジェンノ王国から各地に精鋭部隊が旅立っていった。
ディゼル率いる部隊は滅ぼされたメク城付近まで出兵させた。
万が一にも生き残りの人間がいれば一人でも多く救うためである。
勿論、戦闘は禁止にしている。
ディゼル君でも無駄死にになってしまうからである。
レーニアとマイムにはラマグリダ王国へ早急に向かってもらった。
マイムが付いていれば万が一の事もないだろう。
それに今のレーニアとマイムであればゲンズ程度であれば十分倒せると俺は踏んでいる。
さて問題は恐らくこの流れであればダラルが出てくるであろう、このジェンノ王国付近だろう。
ジェンノにはフィリックスが残っており、一見危うくも見えるがペスカがいる以上負けはない。
だが、まだアイツに殺し合いを見せるのはまだ早いであろう。
ゆえに領内には入れずに倒す事が先決だと思う。
キアの分身を潜ましとくか。
―――――――一方魔王城では―――――――
「ダラルよ。そなたには特別な任務を与えよう。
奴とも再戦したかろう?」
「宜しいのでしょうか?」
「構わん。奴はジェンノ王国に居る。
そなたにはジェンノ王国へ攻め込むことを許可しよう」
「ありがたき幸せ!此度は必ず奴に目にものを見せてやります!」
ダラル率いる魔物は最低レベルが20。
人類では太刀打ちできない魔物の集団。
率いるダラル閣下は再誕しレベルは90。
普通に考えれば人類絶滅の危機。
だがしかし王国には最強の戦士がいる。
超越者ザハルが居るのである。
頼んだぞザハルさん!
少しここからバトル系のお話が続きそうです。
最近、仕事の休憩時間にもポチポチと書いていますので可能な限り早めに投稿できるようにしますね笑
あまり期待せずにお待ちくださいませm(__)m




