【39】覚醒(前)
キアさんからの要望で1つ目の種族は”ハイエルフ”に決まった。
まず最初の器としてハイエルフへ種族変換を行った。
スキルやレベルはそのまま引き継ぐ形になってるようで一安心。
動きやすさはヒューマンの時より格段に軽い。
というか、全てにおいてヒューマンなんて比じゃなかった。というのが本音である。
「へー、1つしか取り入れてないのに、こんなに違うんだな」
「ハイエルフは異種族の中でもスタンダードタイプになりますし、応用が非常に利くので気に入っていただいて何よりです」
「うん。なかなか気に入ったよ」
「それで主、他の2種は何にされるので?」
「1つは大型形態変化をしたかったから、”ベヒーモス”を選択した。
もう1つは、これらを組み合わせて統合することでより強力になり、後に上位種族へ変換しやすく何より水中での活動ができる種族。
“水龍”だな」
「なるほど。蹂躙王のベヒーモスとフェンドラゴンですね。
確かにこの3種類はいい組み合わせですね」
「最初はさぁ、ヴァンパイアがいいかなーとか思ったんだけど、ハイエルフがあるなら現状不要かな?って思ったんだよね」
「そうですね。ヴァンパイアの方が強さはありますが、この組み合わせなら不要ですね」
「これって形態変化も出来るし人型を維持も出来るんだよね?」
「はい。統合することにより上位魔物になりますので、基本的には人型での活動をメインと出来ますよ」
「よしよし」
「早速始めますか?」
「うん。順番はどうしたらいいんだ?」
「水龍とハイエルフを統合し完了したら直ぐにベヒーモスと統合しましょう。
全て完了した後に主はいつものように眠りについていただいて、私自身のアップデートを開始します。
今回は覚醒準備ではなく本当の覚醒になりますので、正直どのくらいの日数を要するのかは不明です。
なので少し主にお願いがあります」
「なんだい?」
「私自身の分身体にアップデート構築をさせようと思いますので、その間は主の護衛が出来なくなりそうです。
なので、主は覚醒が終わり眠りに付かれた後は、脳内の私だけになってしまいます。
その私も当然ながらシステム構築に忙しくなっておりますので、少し護衛が疎かになってしまいそうです」
「構わんよ。
というかさ、そもそも覚醒して制御が全く出来てないメストを垂れ流しにしている化け物に近づけないでしょう。
近づいても即死だし。
それで構わんよ」
「ありがとうございます。
確かにそうですね。では始めますか?」
「だな。ダラダラと話し続けるより速やかに始めよう」
俺はキアから渡された通販レベルのカタログにチェックを付けキアへ注文書を渡し、キアから注文品である魔物の魂をもらった。
配達員が箱に梱包された商品を配達しに来ないだけであって、やってることはマジでネットショッピングなんだけど……これなに?
細かいことは気にしないでおこうとか思ったけど、これ細かくないよね?
絶対時代背景がおかしいよね?
というか、異世界ですよね??
と、まぁそんな事を考えながらも水龍の魂を喰らいスキル統合によりハイエルフと融合されていく。
スリムでありながらも頑丈な体皮、水龍の時は水中でも鼻呼吸で地上と同じように呼吸が出来るようになったようだ。
鱗は要らないので排除した。
というよりも防御の時にだけ使えばいいと思い、鱗は防御スキルに変換してみた。
次にベヒーモス。
圧倒的なパワーと魔力を兼ね備えた能力と暴走スキルを取り込むことに成功した。
流石にイカツくなってしまうのかなぁ?って思ってたんだけど、さすがキアさん。
ハイエルフの力により思い通りに体型を変えられる。
単純に欲しいスキルや特徴だけを吸収できるようだ。
ハイエルフ、超有能じゃん。
全ての取り込みが完了した瞬間に前世のブラック企業で62時間連続で働いた後のような眠気に襲われ、俺は意識をぶっ飛ぶ感覚で眠ってしまった。
起きた時にどのくらいパワーアップしてるのか。
どのくらいレベルアップしてるのか。
まったく読めん。読めないが、恐らく超越者としての道を歩むことになるんだろうな。
或いはまだ足りないかもしれん。
まぁ現状では何もわからんって事だけは自信を持って分かる。
しかしながら、今は素直に眠っておこう。
「よし。主の統合が完了しましたね。
もう1人の私、始めますよ。
最高速度の演算領域を展開しなさい」
「リミッター解除。
マキシマム・レートを発動。
完了しました」
「主、聞こえてるかどうかは分かりませんが、10日持ち堪えて下さい」
どうやら俺は最長でも10日以内に起き、活動をしないとキアの負担が大きくなるようだ。
例え暴走しても構わん。
10日以内に目覚め、今度は俺がキアを支えなければな。
待っててくれ。キア。
―――8日後―――
俺は思ったより早く目覚めることが出来たようだ。
しかしなかなか理性が保てていないが、キアを見て即座に思った感情だけを優先した。
“ キアを守らねば ”
「キア、システムの事だけに専念しろ。
お前がシステム構築している間はどうにも本調子になれないが、お前の仕事が終わるまで今度は俺が守ってやる。
今はやるべき事に専念してお前も休め」
「御意……感謝致します」
「何言ってやがる。何時も助けられてるのは俺の方だろ?
だから今回は交代だ。
俺とお前は共存し、ギブアンドテイクだろ?」
「はい。
では、しばしお任せいたします」
そう言い残すとキアの意識が俺の中から一時的に消えた。
キアが常に頭の中に居るときと居ないときでは、ここまで感覚が違うものなのかと思えた。
「なるほど……キアの重要性がより明確に分かるな。
やり過ぎないように守らねばなるまい。
キア……いつも感謝している」
空間範囲として球体にして直径100mの霊層結界を展開した。
この結界はなかなかエグい。
敵と認識した相手の魂を喰らい、より強力になる結界だ。
俺が作ったアニマだ。
コイツにキアを守らせ、俺は自分の体を馴染ませる為にもアニマの外に出て少しだけ準備運動をすることにした。
「ちょいと運動をしてくるか」
少し短いですが、次で覚醒編が一先ず一区切りします。




