【29】親
拷問の訓練を受けた人間に口を割らせるには、痛みというものではなかなか口を割らないものである。と、なんか生前に聞いた記憶があったので、俺は暗部の連中には徹底した1つの拷問を繰り返した。
もちろん拷問なので休むことなくね。
簡単だったよ。
実に5時間くらいで口を割ってくれた。
その方法は傭兵団に所属する魔物のサキュバスへ依頼し、”快楽”という人間の三大欲求である性欲を徹底的に刺激し続けた。
“絶頂”に達するこの瞬間だけを徹底的に続ける事で脳がバグる。
最初は止めて欲しいのに体は求めるというバグ。
次に気が狂いそうなのに体は変わらず求める。
最後は殺してほしいのに体は求めてしまうという地獄のループを繰り返す。
快楽に落ちた人間の口を割らせることなんて、正直簡単すぎて笑える。
口を割った人間たちは生ゴミとして処理する必要があったので、しっかりと魔物の食事として再利用させて頂いた。
俺は最近1つのルールみたいなものを知ることが出来た。
魔物は人間を食べる事で急激に強くなる。
人間もまた同じで、魔物を食べることで大幅なレベルアップに繋がるということだ。
この人体実験で力を発揮してくれたのがコモル王国国王と、残りの暗部連中である。
ただし、絶対的レベルアップする訳ではなく、レベルが違いすぎる魔物を食わせると猛毒になるらしく、のたうち回って死に至る。
近いレベル、言っても上限3までがどうやら限界のようだ。
あとは……
人間の最大レベルはどこなのか?
人間が限界突破するにはどんな条件が必要なのか?
そんな事を俺はキアと淡々と調べていた。
さっき上限3が限界って言ったよね?あれはあくまでもレベルアップの話でね。
限界突破に関しては自分のレベルが現状MAXなこと。
自分のレベルより5以上高い魔物を食さないと限界突破の条件は満たされない。
でも適合しなければ死んじゃうんだけどね。
んで、今回はただの人体実験だったので全員死んだ。
まぁどっちにしても殺す命だったんだ。
有効活用させてもらったことには素直に感謝しよう。
王には微毒から毒素を上げていき、どのタイミングで死ぬか実験してみた。
どうしてもやはり人間というものは神経毒に弱いらしい。
結局簡単に死んだんだけど。
死んだ暗部のボスと王から有益な情報を聞き出せた。
母のベリーの一族はジェンノ王国にとってとても重要な役割を果たしていた。
外交の役割を担っていた。
コモル王国が魔王軍と接触するのを控えるために各国に働きかけをしていた母上達。
それを邪魔に思ったコモル王国が強行突破で各国の外交関係者を暗殺した。というのが事件の全貌であった。
まぁよくある話ではあるよね。
あるんだけどさ、手を出した相手が悪かった。
今回はそれに尽きる。
そして俺は子供の頃から守りたくて仕方なかった人を守れなかった。
これもまた事実。
結局俺とレーニアは両親をとても早い時期に失ったのだ。
嘆いても仕方がない……今は親父と母さんの葬儀が先だ。
エコーの当主継承式もある。
レーニアの出産もある。
アイツももう臨月だ。
1つだけ間違いないことが言える。
魔王軍が動き出すのが近いってことだ。
レーニアは勇者だ。
魔王軍が動き出せば、レーニアは必然と戦場に駆られる形になってしまう。
時間が足りない!圧倒的に!!!
俺は暴発しそうな怒りを抑え王都に戻り女王陛下へ今回の全貌を全て話した。
レーニアは俺の事を当然心配していたが、国家としての対応で全部隊へ厳戒態勢を敷くことを命じる。
その後俺はシガレット領へ戻り両親の遺体を王都へ移動させ、先代王より2代に渡って王を支えた子爵、アルコ・シガレットの国葬を行う運びとなった。
同時にベリー・シガレットの葬儀とエコー・シガレットの継承式を行った。
エコーはアルコとベリーの遺灰をシガレット領へ持ち帰り、少し高い丘の上にある花畑へ墓を建造した。
親父と母さんはいつも仲良しだったからね。
一緒の墓に入れてあげるほうがいいだろう。
恐らく死んでも、毎夜毎夜……いや想像しただけで吐きそうになるのでやめておこう。
破天荒な親父と優しいけどスケベな母親。
転生して戸惑いまくった俺の人生において、結果としてこんな両親で良かったのかな?と思える親だったと思える。
感謝しかない。
無念なのは、孫を抱かせてあげたかった。
「親父、母さん。本当にありがとうございます。
ただやり過ぎには注意ですよ。言っときますけど、子供ながらに気付いてましたからね。
でも今はどうぞ安らかに。
後のことはお任せください」
「兄上、陛下からの知らせで陣痛が始まったようなので、すぐに戻ってきてほしいとのことです!」
「分かった。
エコー……シガレットを頼んだぞ。
お前、ナスビの事を好きか?
もちろん女としてという意味だぞ」
「はい!」
「アイツは元々は蜘蛛の魔物だ。
お前と生きお前の妻となっても、子が産まれる保証なんてないぞ。実例もない。
それでもいいのか?」
「……はい!ナスビを心から愛してます」
「そういう事はエニリカス後に言いやがれ。
今のアイツは俺の部下でもありお前の護衛でしかない。
エニリカス後もお前がアイツを本気で愛するなら好きにしろ。
シガレット家の当主として判断に間違いがないと思えば何でもやれ」
「はい!」
「じゃあなエコー。産まれたら連絡する。
その時にまた会おう」
「はい!シガレット家として祝福に馳せ参じます!」
「いい顔になったな。
ナスビ、エコーを頼むぞ」
「はっ!」
多分、結婚するだろう。
まぁ好きにしたらいいさ。本人たちが心から願ってることを制御しても、結果として選択する行為は同じ行動になるんだよね。
それだったら祝福をされない結果よりはさ、快く祝福してやる方が本人たちも幸せじゃない?
だからさ、全ての親たちに言いたいけどさ、納得行かない・許さないって思ってもさ。
結局選ぶ結果は変わらないんだから、渋々でも何でもいいから、優しく背中を押してあげるほうがいいんじゃないかい?
ってこれから親になる俺はそう思うかな。
生前は独身で初老のオッサンだったけどさ、その感情は同じのように思う。
ってそんな物思いに耽る暇なんてなかったわ。
うちの奥様が産気付いとったんや!
いざ転移!
―――――――王都―――――――
「んーーー……はぁはぁはぁ」
「陛下!もう一度です!」
「はぁはぁ……っていうか、ザハルはまだ戻ってこないの!?
クラーヌ!」
「はいぃーーー!」
「あのバカを連れてきなさい!」
「し、承知しました!!」
なぜだろう。なぜ俺は理不尽に怒られたんだろう……と、クラーヌは心から思ったのである。
クラーヌが飛び出して走り出すと、絶妙なタイミングでザハルが到着する。
「ザハルゥゥゥーーー!!!」
「な、な、なんだよ!気持ち悪いなぁ!
お前そんなキャラじゃねーだろーが!」
「だってよぉ理不尽なほど陛下に怒られたんだよ!
お前が帰ってくるのが遅いからだからな!」
「仕方ねーだろうが!
俺の状況も考えやがれ!
んで!レーニアはどんな状況だ!?」
「もうすぐ産まれるよぉ!
早く行けよ!俺は陛下の勇者スキルでケツを叩かれて、まぁまぁ重症なんだよ!
魔物には勇者スキルの暴力は絶大な威力なんだからな!」
「すまんすまん。これを使っておけ。
速攻で治るから」
「お前こんな激レアアイテムをどこで手に入れたんだよ!」
「作ったんだよ!じゃあな!俺は行く!」
「作った!?やりたい放題かよ!」
「レーニア!すまん遅くなった!」
「ザハル!はぁはぁ……お願い側にいて」
「勿論だ」
「陛下!もうすぐです!あと少し!」
「レーニア!でっけークソを出す勢いで気張りやがれ!」
「んーーーぐーーーあーーーあんた後でビンタ確定だからねーーー!!!」
「オギャーオギャーオギャー」
「産まれたーーー!!!」
「陛下!おめでとうございます!
王子さまの誕生でございます!」
「キターーー!!!さすがレーニアだ!
よく頑張ったな!」
「はぁはぁ……可愛い。なんて可愛いのかしら……ねぇ、ザハル。私たち、遂に親になったのよ。実感してる?」
「ああ。本当に大きな物を失ったけど……失ったばかりだけど、今度は俺たちが親としてこの子を育てあげるんだ。
育てよう。二人で。この未来の可能性を。
レーニア、この子は男の子だ。
男の子が産まれたらレーニアが名付けするって決めてただろ?名前を決めてあげないと」
「そうだったわね。実はね、もう決めてたんだぁ。
この子の名前は、フィリックス。
フィリックス・ジェンノ」
フィリックス?え?ガム?ってザハルは一瞬で認識したが、敢えて何も言わなかったのであった。
フィリックス・ジェンノ。
皆さんもご存知である10円ガムの名前をフィリックスガム。
不本意にもガムの名前を命名された王子は後に即位後、最もジェンノ王国を繁栄させた国王として世に名を馳せるのであった。
遂にザハルも親になりましたねー。
少し早い話数での親でしたが、結局の所ザハルの物語は人間界での生活物語ではないので、これはこれでいいのかと思ってます。
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