【28】暗殺と報復
レーニアのお腹も大分大きくなってきたように思う。
俺達は産まれてくる子供が男の子なのか女の子かで予想したり。
名前は何がいいかな?などと話を膨らませていた。
いつもと変わらない日常。
穏やかな時間の流れが過ぎていた。
マイムは新しい部下を経てスライム治癒部隊を変性。このスライム治癒部隊は王国でも、レーニアにも大いに役立っている。
アイツ曰く毎日汗だくらしいが、元々魔物状態はつるんつるんなので、どれが汗なのかなんて全くわからない。
昨日、弟のエコーから久しぶりに会いたいと連絡があり、エコーとナスビが王国へ本日到着することになっている。
シガレット領は俺が王国人になった事もあり多少は大きくなったようだが、エコーが未成人ということもあり、まだ親父が実質シガレット領の当主であった。
破天荒な親父でも、俺が前世で死んだ年齢くらいの歳になってきた。
しかし人の性というものは元来変わらないものだ。
親父もまだまだ元気いっぱいで破天荒な初老のオッサンである。
母上との営みも盛んであり3人目に意欲的なオッサンとオバサンだった。
そう……エコーが、王国に到着して二日目が過ぎるまでは。
シガレット兄弟で懐かしの話を咲かせている時に急報が俺の下に舞い込んできた。
―――――シガレット領より急報!―――――
昨日!シガレット領にて!当主アルコ・シガレット殿、及びベリー・シガレットさまが夜襲に遭われました!
うち、ベリー・シガレットさまは死亡!
当主アルコさまは重傷!
ただ今より、医療部隊を編成してシガレット領に向かうようであります!
「母上と父上が!?
マイムとマイムの部隊を呼べ!」
「父上……母上……」
動揺を隠しきれないエコー。
無理もない。
俺も同じ気持ちだ。だが俺が冷静さを失えば父上は助からないかも知れない。
今は迅速に動くことだけを考えるんだ!
「エコー!落ち着け」
「ザハル!スライム部隊を集合させたよ!」
「マイム、お前は残ってレーニアの護衛も同時に任せる!
今は緊急事態だ!ナスビ!何があってもエコーを守れ!
これは命令だ」
「承知しました。ザハルさま」
「キア!クラーヌと傭兵部隊に伝達を。
アリ一匹たりともシガレット領に入れるな!」
「承知」
「スライム部隊とエコーとナスビは俺の元に来い!転移する!」
俺達は転移をし、シガレット領、シガレットの我が実家に到着した。
景色は何も変わらない。しかし玄関開けた時、景色が一変する。
血の海。血の海。血の海。
変わり果てた姿の母上。
覆い被さるように倒れる父上。
でも虫の息だ。
スライム達はすぐに状況を察する。
父上を最大威力のスキルで治癒を開始。
スライムの一匹であるピムが母上の元へ駆けつけ、泣き別れになった体を一片残らず修復していく。
血に染まった体を綺麗に吸引していく。
ピムは俺の元に寄って来て一言だけ伝えた。
「ママ上さまは無理みたいなの。
ごめんなさいなの」
「よい。ここまで綺麗にしてくれたことを感謝する。
スキル完全清掃・特殊清掃……母さんごめん
間に合わずに。
あなたから受けた多くの愛、笑顔、心に刻み生きていきます。
あなたを祖母に出来ずに……間に合わずに申し訳ありませんでした。
そして必ず私ザハルが仇を打たせていただきます。
シガレット家嫡男としての最後に責務を果たしますゆえ、どうぞ安らかに……」
エコーは母に抱きつき号泣している。
無理もない。
俺もそうしたい。
マイム父から伝達が来る。
「アルコさまは一命を取り止められましたが、いつまで持つかは不明でございます。
ただ今はお眠りになられました」
「分かった。俺は母上をそっと包み俺のマジックバックへ、その他のものを一旦全員、王国へ連れて行った。
理由はレーニアを動かせないからである」
「ザハル!」
「レーニアか……すまん。1人にしてくれ。
マイム、レーニアの治癒をお前の父に、護衛をクラーヌに任せて、すまないがお前にアルコを任せたい。
今アルコを死なせるわけにはいかん。
誰が主犯か、聞き出させねば死なせられん」
「そんな……ザハル。辛すぎるよ」
「辛いさ。辛いに決まってるだろ!だが今やらなければいけないことは、助からないアルコの延命ではない。犯人を聞き出すこと。それだけだ。それだけでいい。それだけ分かれば!」
「主」
「ああ、すまない。お前たちは何も悪くないよな。すまん」
俺は怒りを制御できていなかった。
マイム達でさえ死に至るレベルのメストが垂れ流しになってしまったようだ。
「俺の力は何のためにあるんだ……
大切な……大切な人達を誰も守れてないじゃいか!何のための最強レベルなんだよ!
教えてくれよ!キア!」
「主、落ち着いてください。たしかに奥方は救えませんでしたが、父君は生きてます!
最低でも情報言い出さなければ、無駄死になります!」
「ザハルさま!アルコさまが、お目覚めになりました!ザハルさまお急ぎくださいませ!!」
―――――スライム診療所―――――
「父上!」
「ザハル!こっちだよ!」
そこには力なく横たわる父親の姿があった。
肉体の欠損は綺麗に修復されている。
マイムの全力治癒をもってしても命をギリギリ繋ぎ止めているのが
限界だった。
「父上!父上!」
「ザ、ザハルか……すまん。しくじった。
ベリーを助けられなかった」
「何があったのです!?」
「コモルだ。コモルの毒部隊と暗殺部隊にベリーが突然狙われたんだ。
なぜそうなったのかは俺にもわからない。
ごふっ……」
「親父!」
「カッカッカ。親父ってやっと言ってくれたな!」
「うるせーよ。こんな時に何言ってやがる」
「こんなときだからだよ。デカくなったなザハル」
「う、うるせーよ……」
「お前の孫を抱きたかったぜ。楽しみにしてたんだぞ」
「ああ」
「実はな、俺はお前がどっからかの転生者だって気付いてたんだぜ。
だってお前生まれてからずっと異次元の能力だったもんな」
「そうだな」
親父の顔がどんどん白くなっていく。
終りが近づいている。
「ザハル、エコーの事を頼む。
最早、王族となったお前に頼むのは違うかも知れねー。でもアイツはまだ子供なんだ。
頼む!」
「勿論だ」
「すまん……ザハル……お前が息子でよかった。ありがとうな愛する息子よ」
「親父!」
死んだ。たったの1日で親父と母さんの2人を一気に失った。
コモルって言ってたな。
「キア!場所を調べろ」
「承知」
俺はもう怒りを抑えられない。
とりあえずレーニアにだけは伝えていこう。
アイツにだけは心配かけたくない。
「レーニア、俺は今から単身でコモル王国に行ってくる。当然国1つを壊滅させるつもりだ。俺が大きく行動を起こすことで各国の動きも慌ただしくなるだろう。
クラーヌを最終防衛ラインに配置し、ディセル将軍に俺の全隊の指揮を任せるつもりだ」
「わかったわ。こっちのことは心配しなくて大丈夫。ザハルは大丈夫なの?」
「正直大丈夫じゃない。なのですまんが俺は報復をしにいく。
誰も止めてくれるな」
「主!場所のデータを送ります!」
「なるほど、シガレット領からそんなに離れてないのか。キア、行くぞ」
俺とキアはまずはシガレット領まで転移し、父と母の棺を使用人のエルダに預け、コモル王国の王城へ転移した。
勿論メストはフル全開で。
レベル550のメストである。
王城にいる兵士・貴族・王族もバタバタと泡を吹き白目を剥き死んでいく。
100人・200人レベルではない。
幾千、幾万単位で人に限らず生物の全てが死んでいく。
「キア、王と暗部の人間は全部捕らえろ。
確実に吐かせる。裏の背景、親父、いや寧ろ母親を狙った理由。
その全てを吐かせる」
「御意」
「さて、全てを灰にしようか。
業球炎帝」
別にこんなスキルを使わなくても灰には出来るんだけどさ、敢えてよ、敢えて。
こいつらには瞬時に死ぬことはさせないよ。
この技はさ、強弱を自由に付けることができるんだけど、当然俺はこの国に対しては最弱の威力にしている。
しっかりと苦しむがいいさ。
「主、生物反応、消滅。
国王、及び、暗部の人間全てを確保完了しました」
「ありがとう。助かったよ」
「よし最大威力で燃やし尽くすか」
コモル王国の大きさは日本でいうと四国くらいの大きさになる。
まぁ単純にその大きさの王国が数時間程度で一面焼け野原どころか灰に変わってしまったのだ。
「キア、そいつらをマジックバックに詰め込んだらシガレット領に戻るぞ」
「承知」
「お前ら楽に死ねると思わんことだ。当然だが思考加速もかけるから、何10年、何100年ほどの拷問を味わってもらおう。
まぁ楽しみたまえ」
「待て!慈悲を!」
「当然だ。最大で最高の慈悲と愉悦を与えよう」
そして俺による死んだほうがマシだと思い続ける地獄の拷問により、1つの真実が浮き彫りになった。
結構迷いました。このタイミングで親を死なせるかを。
死なせることは決めてましたけど、今後の展開を考えて早めに死なせることにしました。
でも正直僕自身好きなキャラだったので、残念ではあります。




