双子
「美鶴?私、日鶴ですが」
「?」
唐突に家に押しかけた挙句、意味のわからないことを言う彼女。
見るからに、俺の彼女(仮)であり、違うところと言えば、眼鏡をかけているところぐらいだ。
「お姉様に合わせて欲しいのですが」
「いや、そんなこと言われてもですね・・・・・・」
日鶴の名乗る女性をリビングに通し、話を聞くことにした。
何を不審がっているのか、常時俺のことを睨んでいる。
「私は昔、親に捨てられ、施設で育てられました。お姉様は存じ上げておられないでしょうが、私は歴とした、美鶴お姉様の妹です」
顔立ち、身長、胸のサイズ、全てが美鶴と瓜二つの一卵性の双子なのだろう。
今、家には俺しかおらず、判断は俺に委ねられている。
「君のお姉さんは、今、会議に行ってるから、あと2時間程度で帰ってくると思う。ここで待ってる?」
「そうさせていただきます」
深々と頭を下げると、ポケットにあったスマホを取り出し、いじり始めた。
俺は来客用の紅茶を入れ、彼女の前に差し出す。
癖などは、育ちが違うので、全く違うが、それ以外の要素が本当に似ていた。
俺も正直、初めは美鶴にしか思えなかった。
ーーー美鶴ちゃん、早く帰ってこないかな、、、。
隠キャ根暗オタク(コミュ障付き)の典型的な、ダメ人間な俺は、知り合いでもない人と、リビングで二人で過ごすことに、苦痛を覚えた。
頭の中では「何か話題はないのか」について、常時思考を巡らせる。
しかし、話題が思いついても、それを彼女に話しかける勇気すらなく、考えた話題も、すぐに消えてしまう。
そんな、あたふたしている俺に対し、彼女は冷静。
コミュ力の差が、顕著に現れた瞬間だった。
俺も気を紛らせようと、スマホを取り出すと、、、。
ーーー0%、、、!
充電が切れていた。
咄嗟に、近くにあった充電器で充電を開始する。
人間は、理解や状況をうまく処理できなくなると、途端に何も考えられなくなる習性を持っている。
俺は空を眺めた、窓に一番近い、ソファに座り、ぼーっと。
「あの、、、私、邪魔でしたら、外へ出ておきますよ」
「いえいえ!大丈夫です!」
不甲斐ない、、、。
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