第七十一話 この世界の頂点
この世界には、どの業界にも頂点が存在し、それは崇められる。
周りを引き連れ、その道の先導者となる人は、周りからの信頼も厚い。
が、しかし。
その分、責任が重くなり、失敗した時の代償が周りと比べ物にならないほどだ。
「最近、配信、してないなぁ、、、」
その道の先導者は、時に頭を抱えて悩む。
周囲に迷惑のかからないように、自分の価値を下げないように、周りを楽しませるために。
色々なことが、頭の中で張り巡らされる。
しかも、その難題を一人で解決し、答えを出さなければならない。
責任は分散できない、全て一人で抱えなければならない。
ーーー失態は許されない。
俺の脳では、ずっとそんなことを思っていた。
奇跡的に、俺は環境に恵まれている。
親からも、愛されながら生きてきた方で、人の感情が欠如しているわけではない。
今回の件では、俺が失敗すると、他の配信者の方が本を出す時、イメージがマイナスの方向へ向いてしまう可能性が高くなってしまう。
編集者の方にも「素晴らしい作品」と言っていただけたが「万人受けする作品ではなさそう」とも言われてしまった。
この作品が刺さる、一部の層が、俺の視聴者に全員いるわけでもない。
ここで、出版するのはかなりのリスキーな行為ではある。
しかし、ここで諦めれば、この作品に込められた想い、関係者に失礼だと思う。
俺の頭の中では、さらに葛藤が起こる。
「あぁ、、、どうすれば、、、」
ポツリと独り言を漏らすが、それは誰にも届かない。
自室で籠っている俺の問題は、誰にも投げかけれない。
ブーブー。
机の上の携帯から、着信のバイブレーション起こる。
俺はすぐさま、携帯を見ると、マネージャーからだった。
「はい、俺です」
「誰ですか?」
「健斗です」
「今回の件ですが、一回、出版社内の全ての編集者の力を合わせて、万人受けする作品に仕上げるそうです」
「俺の作品の、原型は止まりそうにないですね」
「原型は残すって言ってましたよ」
「流石、プロですね」
「流石ですよね、憧れます」
たわいもない話を織り交ぜながらも、書籍の件について、触れる。
途中「絶対、深夜テンションで書いたでしょ!」と編集に怒られ、過激なシーンが一部全消しされたこともあったりなど、色々とやらなければならないこと必死にこなしていっていた。
マネージャーから指示を受け、意味のわからないファイルを、10個以上送られてきた。
「え、、、これなんですか」
「あ、説明は編集から」
「変わりました。編集です」
「これ、なんですか」
「書籍化に必要な契約書的なやつだよ、面倒くさいの多いから、よろしくちゃ〜ん★」
プチッ。
言いたいことだけを言って、俺の電話を切っていった。
多分、俺からキレられるのが怖かったのだろう。
「まぁ、、、やるかぁ、、、」
部屋で一人、呟き、作業に戻った。
カタカタとキーボードのタイピング音が響く、部屋の中。
書類は配信者としての・・・みたいな、完全に俺の本業に触れる感じの書類だった。
「頑張るかぁ、、、」
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