第四十九話 これからは、大丈夫。
有闇はあの後、救急搬送された。
カフェ内は混乱しており、美鶴も慌てふためいていた。
近くにいた人が救急車を呼んでくれ、事が進んだ。
生死には異常はない。
現在、病院のベッドで寝ている有闇の介抱をしている。
「はぁ、、、無理しすぎですよ、、、」
意識が戻っていない有闇に対し、俺は独り言のように呟いた。
もちろん、返事は返ってこない。
しかし、俺にとっては胸の内を晴らせた気持ちで、少しスッキリした。
「大丈夫!?はぁ、、、はぁ、、、」
「木葉、病院は走る場所じゃないぞ」
「うるさい!今、緊急なんだから仕方ないでしょ!」
「いや、ルールぐらいは守ろう」
俺だけでは介抱が間に合わないので、助っ人として木葉を呼ぶことになった。
木葉と有闇の繋がりは、薄く、電話で話したことがあるぐらいだが、美鶴の専属マネージャーだと言うことで、きてくれた。
マネージャーじゃなかったこないってこと?
裏を返した考え方をしたが、ちょっと怖かったのでやめた。
「異常はないですか」
「あ、はい。異常はないです」
「では、引き続き意識が戻るまで、お願いします」
「分かりました」
部屋を出ていく医者を見送り、そして有闇さんの介抱をした。
現在、美鶴は本社へ抗議へ行っている。
有闇さんが倒れてから、6時間ほどが経過した。
ネットには事務所を批判するようなコメントが多数寄せられ、警察のメスまで入ることになった。
3時間後に、社長自ら記者会見を開くと言っている。
「なぁ、木葉。お前は将来何になりたい?」
「?」
俺の突然な問いかけに、木葉も真剣に答えた。
「今はわからない、、、かな、、、」
「そうか」
木葉もつられて、深刻そうな顔と声色になる。
そして、沈黙が続いた。
時計の秒針の音がただ流れる部屋に俺と木葉、そして有闇がいた。
ずっと彼女を見つめ続け、意識が戻るのを待っている。
「大丈夫!?」
木葉の様に病室に入ってきたのは美鶴だった。
注意しようとしたが、今の状況を考えて辞めておいた。
さっきの木葉の一件で、俺は何かが吹っ切れたかのように、一つのことに対して、いちいち気にするのを辞めた。
「まだ、意識は戻ってない、、、」
「そう、、、」
「でも、すぐに戻ると思うよ、、、!」
「うん、、、」
小さく頷き、病室のパイプ椅子に腰をかけた。
そして、美鶴は小さく呟いた。
「私、事務所辞めたんだ」
「え、、、?」
「私、事務所やめたんだ。だから、今日からフリーになって、私が七香ちゃんを雇うことにした」
そして、美鶴の目からは涙が溢れた。
目の前の有闇を前にして、彼女は感情を露わにした。
美鶴は彼女の手を握った。
「これからは、もう大丈夫だよ」
「ん、、、ん、、、」
聞き覚えのある声が聞こえた。
ベッドを見ると、有闇の手が少し動いていた。
そして、目がじんわりと開いていくのがわかった。
「有闇さん、、、!」
「あ、、、う、、、あぁ、、、」
「声は大丈夫なんで!今は安静に」
美鶴が目を輝かせて。
「ねぇ、七香ちゃん。今日からは、和也くんの家の隣、私の家に住まない?そこで、働いて欲しいんだ」
有闇の無表情な顔から涙が溢れた。
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