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第三十六話 偽りの愛

偽りの愛を受けてきた人は、どこかで薄々気付いてくる。

『自分は周りとは違う』と。


周りとは区別され、まるで別世界で生きているかのような体験をする。

真実ではない、偽りの愛。


「僕は、偽りの愛を受けてきました。だから、僕には人間の心がない」


ざわめく体育館。

マイクを渡された京也が突然語り出したのは、自分の人生についてだった。


「気付いたのは小学校の頃。僕は家柄が、周りとは違う。だから、周りから区別され、普通に接してくれる人がいなかった。正直、僕も過度に気を遣っていることもある。そして、真実の友情と言える、ほどの親友がいない」


「、、、」


落ち込んでいる裏方の俺をチラッと見る。


「北条くん、出てきてくれる?」


「あ、はい」


舞台上に俺はたち、京也と線対象上に立った。


「家の方針で、生徒会長に立候補したんだ。実際、僕は生徒会長なんてやりたくないし、やったところで周りに迷惑をかける一方だということもわかる」


「あ、はい」


「だから、君に生徒会長になってほしいんだ」


「え、、、?」


「真実の愛、真実の友情、そして、人間の心を持っている君が、僕は生徒会長にふさわしい人だと感じている。そして、票も実際のところ、君の方が圧倒的に多い」


「え?何言ってるんですか?ほら、前のグラフに書いているじゃないですか」


「親が仕込んだんだよ」


よく、アニメで聞いたことのあるようなセリフだった。

【仕込み】という言葉に、俺はまた惑わされ、真っ白になりそうだった。


親がそこまでするの、、、?


一般家庭で生まれ育った俺は、見当もつかない話であり、不平等なことをされても、理解が追いつかなく、怒りよりも、彼に対しての哀れみの感情の方が多かった。


かわいそうだ。

目の下のクマ、痙攣している手。

全て努力の証拠であり、彼が親の期待に応えようと、必死でもがいた証である。


「前会長、問題ないですよね?」


「はい、大丈夫ですよ」


「それでは、改めて。新学期からは北条和也が生徒会長となることになりました」


体育館からは、拍手が送られる。

そして、安堵のため息をついた。


緊張からの解放と、今まで答えれなかった期待に答えれた嬉しみの感情。

全てがこもったため息だった。


そして、京也はマイクを口元から離し。


「この学校をよくしてくれ、俺はもうすぐ、この国を飛び立つ」


「え?」


「生徒会長になれなかったら、海外へ留学するって約束なんだ。僕もそれは拒否してたけど、親もそれは奥の手として用意しているだけで、実際、僕の当選を確実にしていたからね。今日の夜の便でアメリアに行くことにするよ。じゃあ」


そう言って、京也は体育館から去っていた。

そして、この国からも。



★☆★☆★☆★



「私、本当、何してるんだろ、、、」


すっかり、彼氏も友達もいなくなってしまった夏美。

もう、クラスにも居場所がなく、休み時間はいつもトイレに逃げ込んでいる。


ここ1ヶ月、一緒に昼食をとる相手すら見つからない。

人生で、経験することがないと思っていた【便所飯】を始めた。


何を食べても、美味しくない。


ーーーあの陰キャが生徒会長で、健斗くん、、、?嘘も甚だしいわ。


そう思うことしかできなかった。

もしも、彼が天才配信者だとするならば、あの時、惜しいことをしてしまったことになる。


そして、神童と呼ばれた人を、傷つけてしまうことになる。


夏美に吐き気が襲った。


「あぁ、、、もう嫌、、、」


あの日の失態が走馬灯のように、流れる。


『オタク無理!』


それだけを口実に別れてしまった。

実際は優しく、気がつかえる人。


後悔の念に押しつぶされそうになりながら、夏美は口に米を押し込んだ。

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