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第7話:原因は俺

「別にお前となら気にはならない」とは言っていいものなのか、と悩んでいたら、先生が戻ってきた。

ナイスタイミング、先生!


「お茶淹れましたよ、図書室閉めますか?」

「あ、そうしましょか……王子様も行きましょ?」

「おう……」


とりあえず、俺のことを王子様って呼ぶのを止めて欲しいんだが。

一体なんで王子様なんだ?

非常に気になるところなのに、タイミングをつかめなくて、聞き損ねてばっかりだ。

ふと春世の方を見てみたら、ちょうど目が合う。


「……先生が淹れた緑茶、おいしいんですよ」

「へぇ……」

「ちょ、春世さん……あなた何言ってるんですか……」

「先生のお茶の宣伝です」

「…………もういいですよ」


この二人の会話、むちゃくちゃ面白い。

なんか先生と生徒の関係っていうよりも、友達同士とか兄妹みたいな感じ?

……俺が越してくる前からずっとこんな感じだったんだろうな。

なんか羨まし――って俺、何考えてんだ!?


頭を軽く振って、急いで図書室を出た。

鍵を閉めた先生の後ろを、斜めがけの鞄を持った春世と並んで歩く。

向かったのは階段を上がってすぐの辺りにある、国語準備室。

……俺が分かる、数少ない部屋のうちのひとつだな。


「リーズくんもその辺りに座っておいてくださいね」

「あ、ありがとうございます」


言われるがままに春世の隣に座ると、なぜか春世がちょっとだけ楽しそうな顔をした。

……今だったら聞いてもいいかな。


「なぁ春世……王子様って?」

「え」


なんでそんなきょとんとした顔するんだ。

少しのあいだ静かになる。

グランドの方からホイッスルの音が聞こえた。サッカー部だろうか。


「なんというか……微妙な理由が」


微妙な理由ってどんな理由だよ、とか突っ込むのは心の中だけにしておこう。

と、思ったら先生が戻ってきた。……バッドタイミング、先生。


「普通に淹れちゃいましたけど、リーズくんは緑茶平気ですよね?」

「え? あ、はい、ありがとうございます」


目の前に置かれた湯飲みを持ったら、予想以上に熱くて、一瞬落としそうになった。

……どうせペットボトル入りの冷たい緑茶しか飲んだことしかないさ、俺は。


「……やっぱり御煎餅食べたい」

「いくらなんでもそれは無理ですって……一応ここ学校ですよ?」

「へぇ、そうだったんですか?」

「だからぁ……そんな無表情で冗談はきついです~」


春世……明らかに先生のこといじるの、楽しんでるよな?

無表情は無表情でも、目が生き生きしている。

なんていうか、先生どんまい?

そういや、どんまいって、英語からきてるんだってな。日本語ってすげぇ。


「で、例の噂の方はどうするんですか、結局」

「無視します」

「……なんでそんな急に方針が180度変わるんです!?」


「…………」

「…………」


春世がこっちを向いたから、先生の視線もこっちに流れてくる。

え、なんで?


「……俺のせい!?」

「王子様が『いいよ別に』って」

「成程それは素て」

「ネタにはしないでください」


なんなんだよお前ら。

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