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第3話:王子様と先生と

また明日、だって。


思わず笑顔。気づかれてないといいけど。

うん、明日からは屋上で弁当食べよう。

今日気が向いてたまたま行っただけなのに、なんかついてる!


放課後、図書室に向かうときもまだ嬉しい気分が残ってて、足取りがいつもより軽い気がした。

昨日と同じ様に本を読んでいたら、やっぱり昨日と同じ様に人が入ってくる気配。

けど、今日の足音はよく聞き覚えがあるものだったから、ちゃんと顔を上げる。


「先生、こんちは」

「こんにちは春世さん、いつもありがとうございます」

「どーせ図書室にいるので……」


今年教師になったばかりのクラス副担任は、図書委員会の担当に当たっているらしい。

……わたし、委員会には入ってないから詳しくは知らないけど。


「春世さん、今日何かいいことでもありました?」

「え?」

「いつもより楽しそうだったので」


あちゃ、ばれたか。

できるだけ顔に出さないようにはしてた筈なんだけどなぁ。

もしかしてわたし……顔に出やすかったりする!?

うわぁ……そうなら恥ずかしいな……。


「ん……たいしたことじゃないんですけど……昨日、王子様に会いました」

「はぁ、王子様」


目を点にする先生。

今のだと昨日の話だけだし、今機嫌がいい理由にはならないから、もう少し続けることにする。


「今日は王子様とお昼一緒に食べました」

「王子様と」

「はい」

「はぁ」


よく分からないという顔の先生。

まぁ普通は分からないよね。

けど先生もこれ以上突っ込むつもりはなさそうだし、ま、いっか。

最初っから説明するのも面倒だし。


「あ……もしかして、リーズくんですか?」


ビンゴ。

こくこくと小さく頷くと、先生は成程と笑った。


「昨日、本借りに来ました?」


またもやビンゴ。

……ちょ、まさか、王子様に「舞姫」勧めたのって。


「えぇまぁ。日本の文学でお薦めの本を尋ねられたので」


さすが国語教師。

あ、そういえば国語の教科書に「高瀬舟」が載ってたっけ。

やっぱり森鴎外つながりか、そうなのか。



「で、なんでリーズくんが王子様なんですか?」

「……見た目?」


うん、簡潔に言うならばそうだろう。

見た目が王子様っぽい。


「まぁ……分からなくもないですねぇ」

「ですよね」


先生は分かってくれた。分かってくれたとみなすぞ!

なんとなく先生の顔を見たら、なぜか素敵な笑顔だった。

…………何、企んでんだこの人は。


「いやぁ、『王子様』なんて普通に言える中学生なんて、そういないと思いますよ?」

「書かないでくださいね」


先手必勝。はっはっはー。


確かに……普通に王子様なんていう人はいないだろうな。

まぁ、わざわざ人に言うことなんて無いから気にしないけど。

多分この先生ぐらいだよ、わたしが自分から言うのは。

なんか知らないけど、気が合うから……。


なんだかんだいって、この先生と話すの、楽しいんだよね。

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