第27話:次元が違う
「…………う、そ」
「……採点ミスとかは無かったけど?」
わたしの目の前にある、二枚の紙切れ。
大半の学生からすれば迷惑極まりない代物――今回の中間考査の成績表だ。
勿論、二枚ともわたしのって訳じゃない。
右のがわたし、左のがスターチス。
……言っておくけど、無断で見てる訳じゃないから。
「な……何で、王子様、英語満点じゃないの……!?」
「春世だって国語満点じゃないだろ? つーか呼び方、」
もとに戻ってる、とでも続けたかったんだろうか、まぁそんなことはどうでもいい……いやよくないけど。
非常に残念ながら、今回は思ったより出来が良くなかったらしい。
全体的に。
いや、けど順位的には前回と変わってないけど・
英語 98点 90点
国語 92点 95点
「なんでネイティブより英語がいいのに国語がネイティブじゃない人に負けてるの」
「え、英語に関して言うなら、俺問題文の意味が分からないとこがあって……!」
あ、そっか。
わたしたちの場合なら、国語とか理科の問題を英語で解かなきゃいけないのと同じなのか。
何か普段問題なく日本語で会話してるから何も思わなかったけど、よく考えたら……よく考えなくても、スターチスの母国語は英語な訳だし。
「そういえば、何でそんなに日本語喋れるの?」
「へ!?」
「あ、それアタシも気になってました!」
「……へ?」
「いきなり会話に突っ込むな! ……けど確かに、上手いよな、日本語」
「…………あの、」
何でここにいるんですか、黒沢先輩、市井さん。
気配がまるで感じられなかったんだけど、いつの間に入ってきたんだろう。
というか、二人のテスト結果大公開中だよね今。
と、いうことは……
「うわっ、春世さんもスターチスくんもすごーい! 大スクープですね先輩っ! アタシ初めて見ましたよ、こんなに高い点数!」
「この学校の定期テスト、難しいことで有名なのに……」
「「…………」」
へぇ、そうだったんだ――じゃなくて!
大スクープって何!? 何事!?
「次号のトップ記事は決まりですねーっ!」
「おいぃぃぃぃっっ!?!?」
市井さんの爆弾発言に叫んだのは黒沢先輩。
容赦なく首を絞めた後――さすがに女の子なんだから、ちょっとは加減してあげるべきだと思うんだけど――謝罪をして、市井さんを引きずって図書室を退出する。
暫しの沈黙。
「で、何でそんなに日本語うまいの?」
「あー……なんていうか、俺の従兄の彼女の影響、かな?」
「従兄の彼女……?」
何だその微妙な関係。
従兄の彼女が日本好きとか?
外国では日本食がブームだったりするらしいし、そこから日本文化に興味を持ったとかなのかな。
そうじゃなかったら、
「日本人なんだ、従兄の彼女」
「……え?」
「あ、違った、もう結婚してるから……」
義理の従姉か。
なんかちょっと意外だ……あれ、もう結婚してる?
「……従兄って何歳?」
「えっと……俺より10歳ぐらい年上かな?」
「あぁ、それなら私と同い年じゃありませんか」
「…………」
なんか嫌なデジャヴ。
突然会話に混ざらないで下さいよ先生!
というか、先生ってわたしたちの10歳も年上なんだ……。
「国際結婚ってやつですよね」
「あ、はい。深雪さんっていう方なんですけど」
中学の時に出会ってから、必死に英語勉強して、ロンドンの大学に入学したらしい。
で、従兄さんのほうも日本語勉強して、再会した時には、お互いどっちの言葉で話しても問題なく通じるようになっていたんだとか。
……なんかもう次元が違う。