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第25話:そう、たった一カ月

双子が一組、兄弟が一組。

もう訳が分からない。

というかもともと、人と交流するのが苦手だったはずなんだけど。

……スターチスと出会ってからだよね、いろんな人が話しかけるようになったのって。


「えっと……黒沢さんが兄で、名前は睦月(むつき)で、黒沢さんは二年生で、その弟が葉月(はづき)で、葉月は俺の隣のクラスで、市井姉は黒沢サツキと同じクラスで、市井姉は市井樹菜で、市井妹は市井陽菜で、市井妹は……あれ?」

「スターチス、なんか違う。市井姉が陽菜で、そっちが黒沢葉月と同じクラス……じゃない、あれ」

「……あー、無理しない方がいいんじゃないか?」


姉と弟と妹と兄が絡み合う。

それから名前が似すぎだ。

なんなんですか睦月と葉月って……一月生まれと八月生まれか。

ひねりの無い名前だな!


パニック状態に陥っているわたしとスターチスを見て苦笑いしたのは、黒沢先輩の弟――睦月だっけ、違う、葉月だ。


「春世さんとか、人の名前覚えるの、絶対苦手でしょ」

「だって覚える必要なかったですし」


だって話もしなかったしさ。

スターチスの複雑そうな表情は……うん、わたしは何も見ていない。

けど、本当にずっと誰も話しかけてこなかったし、こっちからも用があるとき以外話しかけなかったし。

それがずっと普通だったから、何も違和感無かったんだよね。

けど……この一カ月、そう、たった一カ月しか経ってないんだよ、スターチスと出会ってから。


あぁ、なんか思考回路がおかしくなってきた。

わたし絶対こんなにセンチメンタルな性格じゃなかったはずなのに。


「……帰る」

「えーっ、もっと話したかったのにぃ!」

「はいはい、チビは黙っとこうな」


お腹も空いてきたし、ちょうどいいや。

鞄に筆箱とノートを放り込むと、再び言い合いを始めた兄姉組を一瞥してからさっさと図書室を出た。

……そうか分かった、黒沢先輩にじゃれつくのが市井樹菜で、黒沢の弟と苦笑いしてるのが市井陽菜か。


下駄箱で靴を履き替えていたら、図書室のほうからパタパタと走る音が聞こえた。

振り返って見てみれば、鞄を肩に引っ掛けて走ってきた王子さ……こほん、スターチスの姿。


「どしたの」

「あー、俺も帰る……腹減ったし」


そこからはしばらく無言。

だって何話していいのか分からないし、スターチスも何も言わないし。

校門を出たところで、互いに合図した訳でもないのに同時に足を止める。

ついでに言うと、顔を見合わせたタイミングも、口を開いたタイミングも全く同時だった。


「春世って家何処?」「スターチス何処から帰るの?」


「……そこの角を右」「……一つ目の角を右に曲がる」


さらに付け加えると、二人指差した方向も同じ。

ということは、わたし達の家の方向って同じなのか。

……何で気がつかなかったんだ。


思わず互いの顔をまじまじと見つめる。


「……一緒に帰るか」

「……そだね」


「っていうかなんで今まで気づかなかったんだろう」


しばらく何も言わなかったけれど、全く同時にふきだした。

まぁ、その間も普通に歩いてた訳なんだけど。

そんなこんなで、ちょうど角を曲がった辺りまで来た途端、突然後ろから強い衝撃。


「りりり梨亜姉ちゃん、たた、たっ助けてぇっ!」

「わ、琉生(るい)くん……どうしたの」

「……弟?」

「ひぃっ」


後ろからぶつかってきたのは、竜也の隣の家に住んでる白夜(はくや)琉生くん。

背負ってるランドセルが黒じゃなかったら、女の子って言っても正直不自然じゃない……ちょっと失礼か。

目をウルウルさせて抱きついてくる様子を見る限り、多分また誰かに追いかけられたんだろう。

この子の人見知りっぷりは尋常だから――今もスターチス見てびくびくし始めた。

それと残念ながら、わたしに弟はいないんだよスターチス。

厳密に言うならば一カ月ではないけど、二ヶ月は経っていないので切り下げた模様(笑

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