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第20話:そろそろ把握しとけ

「昨日、来なかったですね」

「あ、あぁ……えっと、そう、弟がちょっと風邪引いてて……」


え、大丈夫ですか!? と、少し慌てた様子で見上げてくる春世に、曖昧に頷きかける。

正直に言うと、別に昨日弟はかなり元気だった。

寧ろいつもより元気だったな、席替えで隣になった子が可愛かったらしくて酷くはしゃいでいたから。


安心したような表情になって、卵焼きを口に放り込む春世の姿に、少しだけ罪悪感を感じた。

だけど、昨日行かなかった――行けなかった理由を素直に口に出すのも憚られて、思わず口から出まかせのことを言ってしまったのだ。

まぁ……先週ごろには実際に風邪をひいていた訳だけど。


「風邪、そろそろ気をつけなきゃいけないのかな」

「あ、確かに……ちょっと寒くなってきたよな、最近」


ペットボトルを煽りながら、器用に単語帳を捲る春世を横目で眺めながら、不意に思い出したことを口に出した。

そう、昨日の朝、黒沢さんから言われたことだ。


「なぁ春世……俺って細いのか?」

「ぶっ」


むせた。


吃驚しながらも、急いで背中をさすってやる。

そしたら凄い目で見られた―---なんだよその目は。


「いきなり何言いだすんだよ」

「えぇぇぇ…………口調変わってるし、つか声怖いし……ちょ、怖い怖いギブギブ!!」


……もしかしたら、今若干涙目だったかもしれない。

なんつーか、その、オーラがちょっと……一瞬春世が春世じゃなかった。


別人に見えたのはホンの一瞬のことで、何度か目を瞬いてみれば、何もなかったかのように平然と卵焼きにかじりついている春世しか見えなかったけど。

あれ? こいつさっきも卵焼き食べてなかったか?


「……いきなり変なこと聞かないでくれます?」

「わ、わりぃ」

「まぁ……確かにちょっと細いとは思いますけど……」

「え!?」


やっぱり俺って細いのか……つか何で俺たちこんな話してんだろう。

というか、結局普通に答えてるじゃねぇか、春世の奴。


「で、そんなことより、こないだ二人組来たじゃないですか」

「……話の飛びっぷりについていけないんだけど」

「なんか市井さんっぽい人がわたしのクラスにいたみたい」

「いやだから無視す――は? ちょっと待て!」


何かこいつ、キャラ変わってきてないか……? なんて思いながら返事をしようとしたら、とんでもないことに気付いた。

今「いたみたい」って言ったよなこいつ!?

こないだ確か知らないって……つーかこいつ一学期からいたんだよな?

……何で自分のクラスメート把握できてないんだ。


春世曰く、こういうことらしい。

国語の授業を真面目に受けていたら、先生が生徒をあてる際に、「それじゃあ市井さん、続き読んでください」と言った。

吃驚してその生徒を見てみれば、見たことのあるような顔だった。


「けど、この間見た時よりも大人しそうに見えたんですよ」

「なんか色々と突っ込みたいことがあるんだけど、取りあえず自分のクラスメートぐらいそろそろ把握しとけ」


え、だってどうでもいいし、めんどくさいし。

そう言って再び単語帳に専念する春世に、やっぱりこいつは訳が分からないと改めて認識すると、心の中で溜息をつくのだった。

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