4.投票で決戦?
しかめっ面のキルシと、プリプリ怒っている様子のヌーッティの勝負がついに最終決戦を迎えた。
「それで、最後の勝負はなに?」
トゥーリが相も変わらずの冷静な声色で二人に訊いた。
「奥の手を使うしかないわ……」
「奥の手?」
オウム返しに尋ねたアキに、キルシは頷いてみせた。
「この4人で誰が一番可愛いのかを決める投票をするのよ!」
最初からこの方法を使えば良かったのでは? と、アキとトゥーリは思ったが胸に押し留めた。
「せーので一番可愛いほうを指さす。いい?」
「いいヌー! 勝負をせずとも結果は目に見えてるヌー!」
元気よくヌーッティが答えた。
「まあ、いいかな」
アキが返答し、
「いいよ」
トゥーリも賛同した。
3人の返答を聞いたキルシがにやりと笑みを浮かべ、
「これで決着をつけてあげるわ!」
言いながら不気味な笑い声を漏らした。
「いくわよ! せーの!」
キルシの合図で4人は一斉に指をさした。
キルシは自分自身を。
ヌーッティもヌーッティ自身を。
そして、アキはトゥーリを、トゥーリはアキを指さした。
「え……?」
戸惑いの声を上げたのはキルシであった。
「ヌ? なんでトゥーリとアキはヌーを指さしてくれないヌー?」
「そうよ! どうしてアキとトゥーリはわたしを指ささないの?」
ヌーッティとキルシはアキとトゥーリに言い寄った。
「どうしても何も、キルシかヌーッティか、どちらか一方だけを指さすって言わなかったじゃん?」
アキはキルシ提案の勝負のルールの盲点を突いた。
「トゥーリはなんでアキを指さしたヌー? なんでヌーじゃないヌー?」
不可解な面持ちのヌーッティがトゥーリに問いかけた。
「ヌーッティとキルシよりもアキのほうがいいと思ったから。それだけ」
しれっと答えたトゥーリに、ヌーッティとキルシはそれ以上何も言えなくなってしまった。
「んむー! 今の指さしは無効! もう一回!」
納得のいかないキルシはその場で地団駄を踏みながら、再投票を提案した。
けれども、
「はいはい。もう、二人とも可愛いでいいって。ほら、紅茶が冷めちゃうから、おやつにしよう」
アキはキルシの提案を却下し、おやつの時間にしようと促した。
「だめだヌー! これじゃあ、ヌーが一番可愛いってキルシがわからないままだヌー!」
ヌーッティは寝転びながら駄々をこね始めた。
「いい加減にしなよ、ヌーッティ。もう一度指さしっこしても結果は同じだよ。まだ勝負をするならキルシと二人でやって。私は先にアキと一緒におやつ食べてるから」
「だめだヌー! ヌーのおやつ取っちゃやだヌー!」
ヌーッティはさらに手足をばたつかせて言った。
「じゃあ、おやつにしようよ」
「それもやだヌー!」
駄々をこねるヌーッティと地団駄を踏む頬を膨らませているキルシを眺めつつ、アキとトゥーリは重いため息をついた。
そこへ、ドアノブのかちゃりとした音が鳴った。
「ただいま。いやぁ、さすがに休日の街中は混んでいるねぇ」
頭を下げてドアをくぐり部屋へ入ってきたのは、熊の精霊にしてキルシの護衛兼保護者のオッツォであった。
オッツォは部屋を一通り見回すと、
「どうかしたかい?」
丸い目をさらに丸くし、訝るオッツォをキルシのつぶらな瞳が捉えた。
「延長戦よ!」
キルシは嬉々とした声を上げた。
こうして、可愛いを巡るキルシとヌーッティの戦いは延長戦に突入するのであった。




