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トゥーリとヌーッティ<短編集>  作者: 御米恵子
今までの記憶とこれからの思い出
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2.監査人アキ

 トゥーリの寝床はアキの部屋にある大きな本棚。

 本棚の一番上の棚の奥にあった。

 アキは小さな木製のスツールを本棚の前へ持ってくると、ルームシューズを脱いで上に乗った。

 それから、一番上の棚の手前にある文庫本6冊を引き抜くと、下の段の棚にそっと置いた。

 すると、小さなクッション1つと色鮮やかなニットのブランケットが折り畳まれ、置かれていた。

 問題はそこではなかった。

 トゥーリの寝床の壁にはびっしりとL版サイズの格闘技の写真が貼られていた。

 それだけではなく、寝床には乱雑に何百枚もの写真が積み重ねられ、乱雑に置かれていた。

「トゥーリ、これは?」

 アキは右肩に乗っているトゥーリに訝し気に尋ねた。

「護身術に使う資料」

 トゥーリは即答した。

「護身術? トゥーリは強いから護身術はいらないヌー」

 アキの左肩に腰掛けているヌーッティが不可解な表情で言った。

「護身術だけじゃないよ。ヌーッティがいたずらしたとき用の対策の一環で集めてたの」

 トゥーリのしれっとした回答を聞いたアキはうな垂れた。

「トゥーリ。もっと穏便な方法でヌーッティのいたずらを止めて」

 アキはため息混じりに提言した。

「ヌーにとって危険だヌー! 捨てるヌー!」

 身の上の危機を察知したヌーッティが青ざめた顔で怒った。

「捨てなくていいから、トゥーリはこの写真を整理すること。本棚の壁に貼るのは1枚までにすること」

「わかった」

 トゥーリは渋々返答した。

 それから、3人はベッドへ向かった。

 ヌーッティの寝床はアキのベッド下。

 アキは、ベッドを少し持ち上げると、ベッド下が見られるくらいまで動かした。

 ヌーッティの寝床が見えた瞬間、アキとトゥーリ驚愕した。

 そこは、猫用ベッドの上にブランケットがぐしゃりと置かれていた。

 それだけではなかった。

 ビスケット、ポテチ、サルミアッキ、チョコレートの食べかすだらけで、ところどころ食べかすが緑色の斑点模様が付いていた。

「カビ⁈」

 アキとトゥーリは同時に叫んだ。

 そう。食べかすの緑色の点々はカビであった。

「カビの上で寝てたの⁈」

 アキの顔から血の気が引いた。

「大丈夫だヌー。そんなに怖がらなくてもカビさんはいたずらしない——」

「今すぐ片付ける! カビの上で寝たくない!」

 アキはヌーッティの言葉を遮り、声を荒らげた。

「解せヌー!」

 頬を膨らませながらもヌーッティはアキの肩から飛び降りると、片付けに取りかかった。

「トゥーリも片付け!」

 アキのひと声で、トゥーリも自身の寝床へ急ぎ向かい、片付け始めた。

 それぞれが掃除に着手して3分経過した頃であった。

「あーっ!」

 トゥーリとヌーッティ二人同時に声を上げた。

 本棚の奥からトゥーリが写真を持って出てきた。

「ヌーッティ! 酷い! 私のお気に入りの写真にチョコ付けたでしょ⁈」

 見れば、トゥーリの手にはチョコレートの染みが付いた写真が1枚あった。

 だが、しかし、

「トゥーリ! 酷いヌー! ヌーのとっておきのお菓子を!」

 ヌーッティはブランケットの下から、グミの空袋を取り出して怒っていた。

「許さないヌー!」

「それはこっちの台詞!」

「えっ⁈ ちょっと待っ……」

 アキの制止に構うことなく、トゥーリとヌーッティのけんか第2ラウンドが開始された。

 トゥーリは本をヌーッティに向かって投げ放つ。

 ヌーッティも負けじと小物を投げる。

 アキは物が飛び交う中で、二人を止めようと試みたが、二人にアキの声は届かなかった。

「ああ、もう! 仕方がない! アレクシ! リュリュ! いるんだろ⁈」

 アキは風の精霊アレクシと雪の精霊リュリュの名を呼んだ。

「呼んだかい?」

 ふわりと空中に赤リス姿の風の精霊アレクシが現れた。

「どうされました?」

 ドアの隙間からするりと真っ白なオコジョ姿の雪の精霊リュリュが部屋へ入ってきた。

「二人をとめて! おれの話、聞かないんだ!」

 アキはアレクシとリュリュに頼んだ。

 二人はそれぞれトゥーリとヌーッティのもとへ向かった。

 はたして、トゥーリとヌーッティのけんかは止まるのか。

 アレクシとリュリュにけんかの行方が託されたのであった。

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