2.姉たち
トゥーリとヌーッティの2人は森の番人マイッキに案内されて、パッラス・ユッラストゥントゥリの森の奥へと足を踏み入れた。
きょろきょろと周囲を見回しながら、トゥーリの手を握って歩くヌーッティに、トゥーリは少し心配な面持ちで、
「大丈夫?」
穏やかな口調で尋ねた。
ヌーッティはトゥーリに顔を向けると、こくりと頷いた。
「さあ、着いたわよ」
先頭をゆくマイッキがうしろを振り返ってトゥーリとヌーッティに声をかけた。
それから、森の茂みの奥へ向かって、
「イーリス姉さん! ヌーッティとヌーッティのお友だちのトゥーリが来たわ!」
そう、言葉を投げかけた。
ややあって、茂みが揺れると、中から1匹のマイッキと同じ大きさの雌熊が姿を現した。
凛とした顔立ち、悠然とした佇まい、まさに森の女王の風格を帯びていた。
「ヌーッティ? 本当にヌーッティが戻ってきたの?」
イーリスと呼ばれた雌熊はマイッキの隣にちょこんと並ぶヌーッティとトゥーリを見た。
「この熊さんは誰だヌー? おねーさんヌー?」
相も変わらずの態度のヌーッティに、横に並ぶトゥーリが脇腹を小突いた。
「そうよ。彼女が私たちの姉のイーリスよ」
隣に立つマイッキが微笑ましそうな表情でヌーッティに言葉をかけた。
「イーリス……おねーさん?」
ヌーッティがまん丸な目をさらに丸くして首を傾げた。
すると、目の前に立つイーリスが駆け寄ってきて、思いっきり頬ずりをした。
「ヌーッティ! ヌーッティなのね! こんなに小っちゃくなってたなんて!」
「痛いヌー! 体がゆらゆらするヌー!」
「ごめんなさい。つい力が入っちゃったわ。それにしても、生きていたのにどうして姿を見せなかったの? 心配してたのよ」
イーリスは頬ずりを止め、鼻先でヌーッティの顔をつんつん突きながら尋ねた。
「それなのよ。ヌーッティは何も覚えていないみたいで」
マイッキがイーリスにこれまでの経緯を簡単に話した。
話を聞き終えたイーリスは片手を頬にあてて、首を捻った。
「そうよね。ヌーッティはもっと大きかったわ。トントゥと同じ大きさじゃなかったもの」
「でしょ? トゥーリの話を聞いても、ヌーッティが私たちのもとを離れてからのことがわからないのよ」
それを聞いたイーリスがはっとした表情を浮かべた。
「それなら、森の女主人ミエリッキに訊きましょう! 彼女ならすべてを知っているはず」
イーリスの提案にトゥーリが訝った。
「ミエリッキに? ミエリッキなら全部知っているの?」
トゥーリの問いにイーリスは首肯した。
「そうよ。私たちの母の親友ですもの。さあ、マイッキ、詩を歌いましょう!」
イーリスとマイッキの2人は森に響かせるように詩を歌い始める。
Mielus Mielikki, ystävämme
Tule tänne ja kerro meille
iäisistä, jotka tiedät
meidän nallestamme, jonka tunnet!
——私たちの友人、メツォラの女主人ミエリッキ
ここへ来て、私たちに語りたまえ、
あなたが知る昔のことを、
あなたが知る私たちの小熊のことを!
イーリスとマイッキが共に歌うと、不思議な歌声が響き渡ってきた。
森の木々が揺れ、まるで、喜び迎えるような雰囲気が辺りに満ちた。
地面に落ちている木の枝が折れる音がして、トゥーリとヌーッティは後ろを見た。
そこには碧色に光り輝く美しい女性が1人立っていた。
彼女こそ、森の女主人と呼ばれる高貴なる精霊ミエリッキであった。




