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トゥーリとヌーッティ<短編集>  作者: 御米恵子
欲望のトライアングル
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1.リュリュの策謀

 オコジョ姿の雪の精霊リュリュは指折り数えてその日を待っていた。

 あと3日後に迫るその日の名前はバレンタインデー。好きなひとへチョコレートを贈り想いを告げる日として日本で有名な2月14日は、フィンランドにおいては「友だちの日」(|Ystävänpäivä《ユスタヴァンパイヴァ》)と呼ばれている。フィンランドでは、この日、男女関係なく友人とプレゼントやメッセージカードを贈り合うのである。

 リュリュが目をつけて思いを巡らせていたのは、日本式の過ごし方であった。リュリュは自身の想い人たるトゥーリにチョコレート菓子を贈ろうと考えていた。お菓子作りや料理をすることが得意ではないリュリュだが、魔術を使った「調理」は得意であった。

 材料の調達に問題はなかった。すでに板状のミルクチョコレート1枚と、漢方にも使用される薬草リコリスから作られたお菓子ラクリッツ4粒は入手してある。問題はーー

「手駒が要りますわね」

 リュリュは卓上カレンダーを見つめつつ、ぼそりと呟いた。手駒が必要とリュリュが考えたのには理由があった。風の精霊アレクシから妨害される可能性があるからである。リュリュに好意を寄せているアレクシの対処法に困っていた。そして、もう一つ理由があった。それは作ったチョコレートの味見役が必要であった。こういう時に便利な人物。もはや、彼以外考えられなかった。

「何してるヌー?」

 求める人材は向こうからリュリュの元へやって来た。小熊の妖精ヌーッティはビスケットを頬張りながら、カレンダー前に立つリュリュへ歩み寄る。

 リュリュはにやりとほくそ笑んだ。

「ヌーッティはチョコレートがお好きでしょう?」

 リュリュの言葉を、正確に言えば、チョコレートという言葉を聞いたヌーッティは目を輝かせた。

「好きだヌー! 食べたいヌー!」

 何の疑問も抱いていない様子のヌーッティは身を乗り出すようにリュリュに迫る。

「では、私のチョコレート作りの手伝いをしませんか? 手伝っていただけるならチョコレートを少しお分けいたしますわ」

 にっこり笑みを浮かべているリュリュは、ヌーッティにそう提案した。

「やるヌー! ヌーッティはこう見えてお手伝い上手だヌー!」

 胸を張って答えるヌーッティに、リュリュは拍手を送った。

 こうして、「リュリュのバレンタイン大作戦」ーーヌーッティによる捻りのない作戦名のミッションが始動した。

 この時、リュリュとヌーッティは気づいていなかった。喜び跳ねる2人の姿を窓の外から見つめる一つの影に。

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