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トゥーリとヌーッティ<短編集>  作者: 御米恵子
ヌーッティは背中で語りたい!
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1.ヌーッティの悩み

 最近、小熊の妖精ヌーッティはあるドラマにハマっている。そのドラマは「赤の眼のクマ」というタイトルで、森を放浪する孤高な主人公のクマのヨルマが様々な動物や人間たちからの依頼を請け負い、彼らの抱える問題を解決していくという物語である。タイトルは、ヨルマの身体的特徴である赤い眼から取って付けられた。そして、ヌーッティが最も惹かれたのはヨルマの持つ雰囲気であった。ヨルマは口数は少ないものの、依頼された仕事は見事に完遂させる。また、ヨルマが森の中、1人で酒を飲む場面をかっこいいと思ったヌーッティは、それを真似て、おやつのたびに黙ってミルクを飲むようになった。トゥーリとアキからは若干不気味がられていた。

 そんなヌーッティがヨルマの行動で1番真似したいことがあった。それは、

「『クマなら黙って背中で語れ』っていう場面をヌーも再現したいヌー!」

 アキの部屋の机の上にに座っているヌーッティは、真正面にいる赤リス姿の風の精霊アレクシに相談をした。

「唐突に一体何なんだい?」

 アレクシはヌーッティに尋ねると、手に持っている冷凍のブルーベリーを一口かじった。

「ヌーも背中で何か語りたいヌー。でも、どうすればいいのかわからないから、かっこいいことを知ってそうなアレクシに相談してるヌー」

 ヌーッティは真剣な面持ちであった。アレクシは口に含んだブルーベリーを飲み込む。

「人選は間違っていないね。ぼくを選んで正解さ。ところで、きみは『背中で語る』の意味を知っているのかい?」

 アレクシはハンカチで手と長い髭を拭きながら尋ねた。

「わからないから訊いてるヌー。アレクシは知ってるヌー?」

 首を傾げてヌーッティは尋ね返した。

「もちろん知っているさ。きみさえ良ければ、ぼくが手伝ってあげようか?」

 それを聞いてヌーッティの顔がぱっと明るくなった。ヌーッティはアレクシの両手をがしっと取った。

「手伝って欲しいヌー!」

 ヌーッティからの返答を聞いたアレクシはにやりと笑みを浮かべた。

「すぐに準備するからちょっと後ろを向いていてくれないかい?」

「了解ヌー!」

 弾んだ声色で返事をしたヌーッティは、アレクシの指示通り、アレクシに背を向けた。するとアレクシは机の上を走り、材料を揃えた。

 そして数分後。

 アレクシは額の汗を左手の甲で拭うと、

「さあ、もういいよ。これできみも『背中で語るクマ』の仲間入りだ!」

 ヌーッティの背中をぽんっと叩いた。

「ヌーは背中で語ってるヌー?」

 頬を赤く染めながらヌーッティはアレクシに尋ねた。

「ああ、ものすごく語っている……ぷっ!」

 アレクシが吹き出すように笑った。

「どうしたヌー?」

「ちょ、ちょっとした思い出し笑いさ。さあ、外を歩いておいで。周りから『あのクマ、背中で語っている!』って思われること間違いなしさ!」

 ヌーッティは振り向きアレクシを見た。アレクシはお腹を抱えて笑い、悶えていた。それを見たヌーッティは不可思議に思ったが、今はそれよりも、

「出かけてくるヌー!」

 背中で語るヌーッティ自身を見せたいがために、アレクシをその場に残し、部屋を出て行った。

 階段を降り、廊下を走り、キッチンまでやって来るとヌーッティは中へ入った。そこには、小人の女の子トゥーリとオコジョ姿の雪の精霊リュリュが、キッチン中央の作業台の上で話をしていた。ヌーッティは何の言葉も発することなく、2人のいる作業台の上によじ登った。ヌーッティが2人に会おうとした理由は、もちろん背中で語っているヌーッティ自身を見せたいからであった。

「ヌーッティ、どうしたの?」

 気づいたトゥーリがヌーッティに声をかけた。

「またお菓子のつまみ食いですか?」

 リュリュが無言で横を通るヌーッティへ尋ねた。

 ヌーッティは堂々とした歩みで2人のわきを通って、彼女たちに背中を見せた。

「あっ!」

 2人の声が聞こえてヌーッティは笑みを浮かべた。心の中で喜びの声を上げるヌーッティの後ろで、トゥーリとリュリュは困惑の色を顔に浮かべていた。

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