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トゥーリとヌーッティ<短編集>  作者: 御米恵子
ヌーッティの挑戦
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4.ヌーッティの挑戦

 ヌーッティは再び挑もうとしていた。

 あの大きな木をヌーッティおしりアタックで倒すべく。

 風で木の枝がざわざわと揺れる。

「いざ、じんじょーに勝負!」

 ヌーッティはどすんどすんと重い体で、うしろ向きで走った。

 木が目前に迫ると、跳躍!

「ヌーッティおしりアタック!」

 ヌーッティのお尻が幹に当たった。

 同時にヌーッティが木の幹に弾かれて、地面にノックダウン。

 ぼよんとしたおなかがクッション材となり、顔を打ち付けることはなかった。

 だが、弾かれた反動は膨張したおなかを直撃した。

 ヌーッティはたまらず口を両手で覆った。

 胃の中のお菓子がヌーッティののど元までやって来たからである。

 ヌーッティは状態を起こすと、ごくりと唾を飲み込んだ。

「あ、危なかったヌー。大事なお菓子が出てきちゃうとこだったヌー」

 問題はそこではないような気もするが、ヌーッティとしては自分のお菓子が一番大事であった。

 ヌーッティは自身のおなかをじっと見つめた。

「これじゃあ、走るのが難しいヌー。それに、お菓子を食べる前のほうが走りやすかったヌー」

 至極当然。おなかいっぱいの食べ過ぎ状態で速く走れるわけがなかった。

「うーん。力はいっぱいつけたから明日の朝早く起きてまたやるヌー!」

 こうして、この日の特訓は終わった。

 そして、翌日の午前8時。太陽が昇る前。

 ヌーッティは寒空のもと庭の例の木のたもとにいた。

 強気な目でヌーッティは木を見上げた。

「今日こそは倒すヌー!」

 ヌーッティの挑戦が再び始まった。

 何度も何度もヌーッティはお尻を木の幹に当てた。

 その度に、弾かれては大地に倒れた。

 これをひたすらお昼ごはんの時間まで行っていた。

「さ、さすがだヌー……。この木は手強いヌー」

 息の上がったヌーッティは手の甲で額の汗を拭った。

 そこへ、

「ヌーッティ! お昼ごはんだよ!」

 アキの部屋の窓からトゥーリが顔をひょっこりと出して、木のところにいるヌーッティに呼びかけた。

 呼びかけに気づいたヌーッティは窓の方を見上げた。

「今、行くヌー!」

 ヌーッティは一旦修行を中断し、お昼ごはんを食べるべくダイニングルームへと向かった。

 陽気に駆け出したヌーッティは知るよしもなかった。このあとの悲劇を。

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