序章
ちきしょう、ちきしょう…、あんなやつらが、世界の支配者になるなんて、そんな世界なら、いっそのこと…。
西暦202X年、現実世界は大魔王ネオギャラクシアによって、裁きの炎に包まれた…。
現実世界の様々な理不尽の犠牲になった者たちの怨念が、大魔王ネオギャラクシアを呼び起こした…。
「人間たちは、この世界の支配者にはふさわしくない。己のことしか考えず、平気で他者を貶め、死に追いやることもいとわない。
このような人間たちは魔物と変わらない。いや、むしろ我が臣下の魔物たちの方が人間味があると思えるくらいだ。
この大魔王ネオギャラクシアは、そんな人間たちに代わり、支配者となることを決意した…。
我が名は、大魔王ネオギャラクシア。」
かくして、『炎の七日間』と呼ばれた世界最終戦争により、現実世界は滅亡し、人類は死滅するに至った。
物語はここから始まる。
主人公は、俺、ジョルダン。
しかし、以前の世界にいた時は、別の名前だった。たしか、日本人の名前で、小此木譲二という名前だったような、それ以外のことは覚えていない。
今は大魔王ネオギャラクシアの勅命により、魔王軍の運営を任されている。しかし振り返ってみると、どういう経緯でここに来たのかは、知らない。
なぜか、ここに来る以前の記憶が全く無い。思い出そうとすると、頭が痛くなり、もやがかかったみたいになる。
時折、以前にいた世界の記憶が突然、脳裏に浮かぶことがある。それによると、以前にいた世界では、とある感染症により、俺の通っていた学校の行事、修学旅行も、体育祭も、文化祭も、部活動の大会も、軒並み中止。
楽しい思い出など何も無いまま、友達ともろくに話をする機会も無く、見事にからっぽの学校生活のまま、形ばかりの卒業式を迎えたのだった。
この調子では、何十年後かに同窓会なんてものをやったとしても、思い出として語ることなど何も無い。いや、この先の人生も、どうせ、からっぽな人生になっていくことだろうと、人生をあきらめていた。
いや、複雑な事情があったわけではなくて、ただ単に、毎日同じような日々を繰り返すだけの日常に飽きていたのかもしれない。
家と学校、あるいは家と職場を行き来するだけの、そんな繰り返しの毎日に、飽きていたのかもしれない…。
そこに、例の強大な軍事国家が、ある日突然、隣国に戦争を仕掛け、核兵器による攻撃までちらつかせたのだった。
そしてその軍事国家は、ついには日本にまで侵攻してきた。
その時の日本は、その強大な軍事国家の侵攻を受け、もはや滅亡寸前となっていた。
例の感染症が収束しないうちに軍事侵攻とは、正気の沙汰とは思えない。まさに魔物の仕業か!?
この世界には、もはや神も仏もいないのか!?
あるのは悪魔、魔物ばかりか。
まさに百鬼夜行の世の中。政治が悪い時は、天変地異が続発するともいうのは、過去の歴史上でも、何度もあったことだ。
これが例の『炎の七日間』と呼ばれる世界最終戦争になるなどとは、その時の俺は、全く考えてもいなかった。
俺は逃げる途中、敵の戦車に出くわした。
その戦車の装甲は、機関銃や手榴弾はもとより、こちらの戦車のカノン砲も、跳ね返すほどの、バケモノのように硬い装甲だった。
どうやら、戦車兵は俺の存在に気がついたようだ。
しかし、どうということは無かった。
どうせこの先も、ただ年をとっていくだけの、あの事件から何年という年数を積み上げていくだけの、からっぽの人生が続いていくだけなら、それならいっそ、と思っていた。
ドーン!
次の瞬間、俺は戦車砲の砲撃をまともに喰らった。
対戦車砲でもあれば、抵抗できただろうが、奴らは無抵抗な一般市民、命乞いをする者まで構わず惨殺するという。
『核武装論』などを唱える奴らは自分らだけでも生き残ろうという考えなのだろうが、多くの一般庶民は、立ち向かうことも逃げ出すこともできず、暴力に負けて死んでいく。
そこから先は、記憶が無い。気がついたら、大魔王ネオギャラクシアに見込まれ、魔王軍の運営を任されることになったのだ。
しかも、俺の裁量次第で、好きなように軍団を編成したり、種類や系統によって魔物たちを配備したりすることができると聞かされた。
「これは、すごい任務を任されたものだな。大変なことだ…。」
もしかして、『炎の七日間』を仕組んだのは、あの大魔王ネオギャラクシアなのか?
とも思ったが、他にどうすることもできないし、とりあえずこの任務を引き受けることにした次第だ。
まずは、魔王軍にどんな軍団があるかだけでも、知っておかないといけないようだ。