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子は親を選べない。親も子を選べない。

反省だけ

作者: 中嶋 千博

 六歳違いの兄弟だ。上の子は勉強のでき、下の子は虚弱体質で頭もよくなかった。上の子はみんなに自慢できる難関の大学に入り、下の子は大学にはいかず、アニメーション関係の専門学校に進んだ。

 上の子は大学を卒業すると、家を出て海外に向かった。その後は最低限の連絡しかよこさなくなった。

 下の子は専門学校に通いながら、寮に住み、アルバイトをして、学費を稼いだ。自分の家の経済力をよく理解してくれていた。上の子は親からむしりとるだけむしりとって、家を出て行ったのに。

 下の子は暮盆や、ゴールデンウィークなど、時間を見つけては帰省し、家のことを手伝ってくれた。

 上の子が四十、下の子が三十代になった時、上の子が浮浪者のような恰好で戻ってきた。なんでも海外で事業を行い、失敗し、すっからかんで戻ってきたのだと言う。借金までこしらえていた。到底我が家で清算できる金額ではなかった。

 助けてくれたのは下の子だった。下の子は専門学校を卒業したあと、デジタルアート系の小さな会社に就職し、そこで名をあげ独立し、今では売れっ子のアニメーション作家になっていた。

 上の子は金が清算させると再びふらりと家を出て行った。なんて子だろう。こんなに手を尽くしてあげたのに。あんな子、世間の恥でしかない。

 かわりにわたしは下の子に言った。

「あなたは自慢の子よ。あなたがわたしの子でよかったわ」

 下の子は皮肉気に笑った。

「それ、兄貴にいつも言っていた言葉だぜ。俺のことは、まるで汚物でもみるような目を向けてた」

 どきりとした。言われて気づいた。確かにそうだったかもしれない、と。下の子は病気がちで手間がかかって、勉強もできない。大学なんて行かせる必要はない。専門学校で充分。学費は払ってやるけれど、食費は自分で稼げ。そういうふうに思っていた。ときには口に出して言っていたかもしれない。

「汚物なんて言い過ぎよ」

「言い過ぎなもんか。些細なゴミでも、積もり積もれば汚物になるんだ」

 この子の心の中は、わたしのこの子に対する感情が、積もり積もって汚物のようになっているのだ。

「それでもあんたは親だからね。あにきも兄弟だ。だから、必要最低限の面倒はみるよ。それ以上のことは期待しないでくれ」

 冷たく背中を向けられた。

 二人しかいない子供のどちらにも見捨てられたような気持ちになる。

 どこでどう育て方を間違えたのか。

 もし時を戻すことがて来たら、上の子も下の子も、分け隔てなく愛情を注いで育てるのに。

 過去を反省しても、その反省を生かして、新しい子をつくることなんてこの歳ではもうできない。

 反省するしかない人生が、これからわたしの前に広がっている。


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