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隠しルートには行かないで  作者: アオイ
三章 ハッピーエンドへ向かって
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順番ぐちゃぐちゃ

 順番がぐちゃぐちゃだ。

 生物の授業の前にもう敬語がなくなってるなんて。

 その授業でもゲームではハミルトン先生がオリーブで、ヒロインが出すのは自身が大好きな百合の花だった。それを先生に見せて、一番好きだって言うくだりは……そうだ、リリーに聞いていた。私が見せた変化魔法でもうしていた。

 これはお助けなの? 私シナリオ進めすぎなんじゃ? まだ二学期よ。

 もう他の先生に嫉妬するシナリオにいっている。

 ハミルトン先生は生物の先生だから、この二人のルートには舞台の道具としてたくさん植物が登場する。隠しルートにしてはヒロインのデフォルト名にぴったりなルートだ。

 ヒロインは元平民なのに、身分差の上が現伯爵令嬢であるヒロインになるというのもじれったい。ゲームでは分からなかったけど、ハミルトン先生と仲のいい女性の生物教師がまた美人で。ヒロインが嫉妬したのも頷ける。

 うーん、それに関して何とかできないものか。ゲームだと本当に同期なだけなのよね。仕事に一途なはずだから恋人がいるわけでもないし。クラリスは何をしたんだろう。まったく記憶にない。でもヒロインが先生に説明されて安心するシナリオがあったはず。そのきっかけがクラリスから得た情報だった。

 テストの時と同じく必要なゲームをクリアしたらヒントをくれて、それをもとに選択肢を……現実にそんなものないわ。というより私にそんな知識がない。

 ナタリー先生の情報が必要だ。調べないと。


「……? クラリス、何をしているの?」

「あ、レイ。いらっしゃい」

 お父様にお願いしようとしたらレイが部屋に来ていた。手紙を書いている私を不思議そうな目で見る。お父様は記憶力がいいから一度私が言った名前は忘れないと思うが一応ナタリー先生についての情報を書いておいたほうがいいかと思った。


 リリーに聞いて好きな人がハミルトン先生であることをレイに言ってもいいという許可はもらった。

「全部知りたい……? 私のことは構わないけど、クラリスはそれが普通なの?」

 と言うリリーはすごく悩んでいたけど、大丈夫だったかしら。

 レイはレイでリリーの好きな人を告げたら

「ハミルトン先生、ね。……先生は男爵家。王都に屋敷はなくて領もここから遥か北西……」

 何やらぶつぶつ呟いて考えていた。考えるのが終わると私に向かってにっこり笑う。

「いいね、最高の相手じゃん。僕も応援するよ」

 レイも応援してくれるの? それは心強い。

「レイ、ありがとう」

「ううん、僕のためでもあるから」

 ……? リリーとハミルトン先生が結ばれるのが? どんな繋がりがあるんだろう。


 手紙は一旦置いてソファーに移動し、レイにハミルトン先生とナタリー先生のことを話す。彼女は美人でスタイルがいいと言ったらレイは眉を寄せた。

「ナタリー先生…………ああ、動物学の先生ね。一年の時担当だったかな。美人? スタイルそんなに良かったっけ?」

 思い出すように目線を上にあげるがよく覚えていないみたいで首をひねっている。

「あんなに綺麗な先生なのに覚えてないの?」

「クラリス以外の女に興味ないよ。伯爵家だから名前とある程度の特徴は覚えたけど別に。僕今生物を選択科目に入れていないから」

 三年生はほとんど選択科目だ。各々自分の得意な分野に進んでいる場合が多い。

「いい先生なのに」

「むしろクラリスに褒められているとムカつく対象になるんだけど」

「女性よ?」

「関係ないよ」

 あらまあ。レイは学園の先生もダメなのか。

「レイって本当に大変ね。私気を付けるわ」

「……クラリスって本当すごいよね。僕の嫉妬深さ普通じゃないんだよ」

「……? それで? 私がレイに嫉妬させないように気を付ければいいだけでしょう?」

「……強い」

 レイは片手で顔を隠すようにして俯いてしまった。

 なんで? 私リリーに嫉妬してしまったから分かる。あんな醜い感情、レイにいつまでも持っていてほしくない。私が気を付けることでレイが嫉妬しなくて済むなら注意するのは当然のことだ。リリーのことは許してくれた。それなら他のことでレイの心痛を増やしたくはない。

「レイ、他には何かない? 何でも言ってね」

 夫婦になる前に障害となるものは確認しなければ。譲れないことは言い合って、お互いにとって一番いい点を探していくのが重要で夫婦円満の秘訣だとメイド達が話していたことがある。

「十分すぎるくらい言ってるよ」

 私を引き寄せて抱きしめた。

「他者と隔絶していたのは僕だけどさ、なんでここまで受け入れる範囲が広く育ったのかな。あーもう幸せすぎる」

 レイが嬉しがっているなら何もないってこと? 今の私には秘密にしないでとは言えない。レイが言わなくても察することができれば一番なんだけど。お父様やレイはどうやって人の心を魔法を使わずに読んでいるんだろう。


「……あ。思い出した。クラリス、ハミルトン先生とナタリー先生が恋人になることは絶対ないよ」

「え?」

 レイが抱きしめる力を緩め私と目を合わせる。唇が少し笑みの形を取った。

「僕が一年の頃にあった出来事なんだけどね。ハミルトン先生って……」

 レイが話してくれたことに心が晴れやかになる。レイに向かって満面の笑みを浮かべた。

「そうなんだ。早速明日リリーに言うわ。ありがとう、レイ。すごく頼りになる。大好き」

 私から再度抱きつけばすぐ抱き返してくれる。何故か片腕と手を使って両耳を塞がれた。

「~~っ……可愛い。可愛すぎる。あの女のためっていうのはムカつくけどこの笑顔が見られるならもういい。……絶対にリリー・シーウェルにはハミルトン先生とくっついてもらおう。あの女さえいなくなればクラリスは僕だけのものだ」

 耳を塞がれていたからあまり聞こえなかったけど、胸が上下してるってことは笑っているのよね。良かった。レイが味方してくれるなら百人力だ。


 そういえば。生物の授業の後、クラリスが風邪を引いてヒロインが先生とお昼を共にするシナリオがある。これはどう変わるんだろう。今は至って健康だ。悩む私をレイが心配そうに見つめる。

「クラリス、どうしたの? もう先生のことは解決したんでしょ?」

「レイ……私もうすぐ風邪を引くかもしれないわ」

「え……? 何言ってるの、風邪を引く前に気を付けてよ」

 レイが前のめりになりながら手洗いやうがいをしたかどうか聞いてくる。もちろんしている。

 レイは私のおでこを触って熱を確かめたり喉を見ようとしたりした。

「今は健康よ?」

「じゃあなんであんなこと言うのさ。今日は早く寝てよ。体温めてね。疲れているなら言ってくれれば僕帰るよ。大丈夫?」

 心配そうに見つめられる。うーん、心配性なレイには言わないほうが良かったか。私が風邪を引いた時は移るかもしれないのでレイに会うことはない。レイはそれをすごく不満に思っていて、元気になったらすぐ会いに来てくれるがどうして風邪になったのか原因を徹底的に追究される。私が悪い時はものすごく怒られる。今もだんだん目がつり上がってきた。

「レ……んむっ」

 空気がいやで何か言おうとしたら唇を塞がれた。噛みつくようにキスされてすぐ舌が中に入ってくる。執拗に口内を舐め回された。は、激しい。飲み込む暇もなく零れそうな唾液をじゅるじゅると吸われる。あの、その音は立てないようにできない? やっと離されたもののレイの顔は怒ったままだ。

「キスすると風邪が移るっていうし、僕に菌が移らないかな。クラリスが風邪を引くよりもずっといいのに」

 頬を撫でられながらそんなことを言われる。はあはあと肩で息しつつ何とか口を開いた。

「そ……それは私がいやよ」

「じゃあ本当に気を付けてね」

 風邪を引かないことを約束させられる。もうリリーは先生とお昼も一緒にいるんだから、このシナリオは起こさないように用心しよう。

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