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隠しルートには行かないで  作者: アオイ
二章 ゲーム開始~???ルート~
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改めて考える

 まさか担任教師ルートだったなんて。

 夏休みに入り自室で本を読みながら改めてゲームのことを考える。

 どうして隠しルートにいったのか分からないけど、やっぱり現実とゲームは違うみたいだ。でもつまりレイのルートには入らないってこと? それは良かったあー。

 ゲームで詳しく描写されてないだけで担任教師との交流があったわけだから、早々に担任教師ルートに入ってたのか。それなら他のルートが出会う頃から潰れたのも納得がいく。……いや、ディーンのを潰したのは私か。ごめんなさい。でも義弟も潰れてたならかなり早くルートに入っていたのよね? そう思いたい。

 それに王子を知らないから喧嘩になるけど、リリーは髪と瞳の色が王族と同じ、見れば分かるはず。生まれながらにして王子ルートは回避してたということかもしれない。まああのシナリオは微妙な出来だったし、それでいいのかも。始まりが同じ側近ルートも。魔法を聞くのは私か先生ってことね。

 担任教師ルートは彼の担当である生物の成績が特に上がるが、植物学は一学期座学のみだった。実習のある二学期からが本番だ。レッスンを受けていたなら授業に特化した内容だし、万遍なくできていたのも分かる。レイモンドルートでヒントを与えていたのは先生で、教師という職業もあって教えるのは得意中の得意。

 王族からも敬語を使われる職業のためパロディア魔法学園の教師に就くのは最難関とも言われている。法律でガチガチに守られているかわりに実力が問われる職種だ。

 定期テストに関してはもちろんリリー本人の努力がすごかったのだろうが、一人で練習ではなくて良かった。

 魔法の扱いは危険なことと紙一重。攻撃魔法で自分が怪我したり、回復魔法なのに悪化したり、魔法で失敗することはもちろんある。

 先生が安全面を保障してくれてたなら安心だ。私と会わない昼休みも勉強してたのね。すごいわリリー。

 もう一つの隠しルートだから早くにないと思ってしまったけど、よく考えれば条件はまさに担任教師ルートだった。ストーリーは夏休み明けから始まるからクラリスが知っているはずないし、そもそも会っていない先生との話をするわけがない。ただでさえ、相手は先生だ。


 ハミルトン先生は今年25歳になる。ヒロインとの年齢差は10。この世界なら年の差はそう気にしなくていいが教師と学生はダメだ。主人と使用人くらいダメ。ゲームでもヒロインが卒業するまでは互いに告白すらしない秘密の関係だった。ヒロインが必死に告白するのを我慢するところが人気の理由の一つである。リリーはどうなんだろう。

 うん。でもルートは決まった。

 私はお助けキャラクターとして頑張るのみ。絶対ハッピーエンドにする! えーと、確か先生のルートは……。


「――クラリス」


 名前を呼ばれて振り返ると唇を塞がれた。

「さっきから全然ページ進んでいないよ。本を読んでいないなら僕に構って」

 そしてまたちゅ、とキスされる。

 レイは昼食後に来て、書類を持って来ていたので私はその間本を読みつつゲームのことについて考えていたんだけどいつの間にか終わっていたみたい。それより、今日は何かにつけてキスをされている気がする。

 会って部屋に入った瞬間にキスをされ、続けてするかと思ったらソファーに座り、仕事をするから本を読もうと開く前にキスをされ、仕事の合間にも名前を呼ばれたらキスをされ、さっきの続けてキスで多分八回目。何かあるのかと首を傾げると察してくれたレイが笑う。

「目標を作ってみたんだ。一日に何回できるかな、と思って」

「何回にしたの?」

 聞いてみたものの、笑みを深めるばかりで教えてくれなかった。


 でも幸せそうだ。それならいい。私も嬉しいことがあった。

 このゲームは隠しルート含めて全員をクリアしないとハーレムルートが出てこない。つまりハミルトン先生を選んだリリーがレイを好きになることはない。本当に良かった。嬉しくなって自分からレイに抱きつく。仕事は終わったのだからいいはず。すぐ私の背中にレイの腕が回される。

「レイ、大好き」

「何、嬉しいことでもあったの?」

「うん!」

 顔を上げて目を合わせ、レイに口を寄せた。

「ねえ、私からするのはカウントされるの?」

「そんなにしてくれるの?」

 嬉しそうだ。目標は一体何回なのだろう。目標に届くように頑張……いや、ちょっと恥ずかしいかな。何十回とか言われたら困る。

 レイはくすくす笑いながら頭を撫でてくれた。

「無理しなくていいよ、僕がいっぱいするから。後クラリスからのはカウントしないつもり。さらっと終わりたくないからね。唇以外もカウントしないよ」

 ということは後数回程度か。


 そう考えた私をあざ笑うかのようにレイは何回も合間を見てはキスしてきた。

 待って、本当に何回? 口以外の顔中もキスされまくるためあっという間に数を忘れてしまった。

「嬉しいことって何だったの?」

「リリーのこと」

 本当はゲームのことだけど。ただリリーが担任教師を好き、ということは言わないほうがいい。リリーの許可なしに彼女の恋心を告げるなどあってはならない。

「何だそっちか。僕に関連することかと思ったのに」

 つまらなさそうにしながらもすぐ私にキスをしてくるので機嫌が直る。

 レイも関係しているんだけどね。

 夏休みの直前に話そうと思っていたけど、結局ゲームはきちんと動いていたようだったので話していない。リリーの相手が世間では禁じられている教師であることもあって話せない。もちろんレイなら変に思ったりしないと断言できる。むしろ興味がなさすぎて

「じゃあ彼女の相手はハミルトン先生に任せよう。クラリスはずっと僕といようね」

 くらいのことは言いそうだ。お助けキャラクターの私としてはさすがに御免願いたい。

 リリーに恋心を聞いて応援すると答えた後頑張ろうとやる気に満ちていた私をリリーがまじまじと不思議そうに見つめていたことを思い出す。思わずテンションが上がってしまっていたことを反省する。

「クラリス、心ここにあらずだね。またあの女のこと? 夏休みくらい僕でいっぱいにしてよ」

 また唇が落とされる。レイが拗ねると厄介なのは結構分かってきた。

 レイのルートには進まなかったんだ。まずは安心してレイに集中しよう。

 そう思って首に腕を回し、私からも口づけた。


 そしてもうすぐレイが帰る頃になり。

「これで最後だから」

 という声とともに唇が押し当てられる。

「…………っ」

 あれ? なんだかこれだけ長い。今までで最長じゃない?

 鼻での呼吸にも限界がある。胸を叩いてやめてもらおうと思ったら下唇を舐められた。びっくりして口を開けると今度はにゅるっとレイの舌が口の中に入ってくる。

 え? え?? え???

 頭の中はパニックだ。舌を舐められて、今度は口の中に広がっていく。私の口の中を好き勝手に動く異物に何をするべきなのかまったく分からない。

「ふっ、うぅ……ぁん……」

 何か言おうとしても言葉にならないどころかどこか甘い声になる。自分から出た声にも混乱する。

 口の中に唾液が溜まり外に出ちゃいそうだったので慌てて飲み込んだ。こくり、と音がする。やだ、なんだかいやらしい。

 ふ、とレイが笑う気配がする。舌が口内から出て行ったと思ったら最後にちゅっと音を立ててキスされた。飲み込めなかった唾液を手で拭われる。

「これで三十回目だね」

 ……え、あんなに長いのが一回扱いなの? 唇をぺろりと舐めるレイの色気に当てられて何も言えなくなる。レイは目を細めて私の頬をそっと包む。

「可愛い、クラリス。せっかくの夏休みなんだから、いっぱいキスしようね」

 とってもいい笑顔。

 今度からはああいうキスが増えるんだ。ど、どうするのが正解なの。とりあえず鼻で呼吸する練習をもっとしなくちゃ。

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