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隠しルートには行かないで  作者: アオイ
二章 ゲーム開始~???ルート~
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我慢しなくていい

 それからも顔中にキスされた。やっと満足したらしいレイとソファーに移動したら何故かレイの膝に座らされ後ろから抱きしめられる。話しづらくない?

「あの。私こそごめんね。早く会わせれば良かった。リリーがレイを好きになったらどうしよう、って嫉妬しちゃって」

「嬉しい。でもそれこそ謝ることなんてないよ。ずっと嫉妬してたの? そんなのする必要ないのに」

「だってレイモテるだろうし」

「僕がモテるわけないじゃん。傍に寄ってきたとしてもあれは公爵家という地位に寄ってきているんだよ」

 いやそうに鼻を鳴らすと私の肩に甘えるように額を擦りつける。

「この際だから言うけど、僕は君以外の女には一切優しくないよ」

「でも、そういうのが好きな人も……」

「クラリスもそういうのに惹かれるの? もしそうだとしても僕は君に冷たくするなんて無理だよ」

「私は全然。私はレイが好き。いつもみたいにしてほしいわ」

 手を振る。レイに冷たくされるのは嫌だなあ、と思っているとレイも「良かった」と答えてくれた。

「安心してね? クラリスのお茶会に来て僕に色目を使ってきた奴は合法的な手段で闇に葬ったし」

「……あんまり聞きたくないわ」

 レイに色目を使ってきたなんて、全然知らなかった。後半部分よりもそちらのほうが私にとっては問題だ。

「地位だろうと何だろうと、レイに近付いてほしくない。私が誰よりも好きな人なんだから」

「可愛い。嬉しい。幸せ。うん分かった、もう言わない」

 ふるふると震えていたが顔を上げて私と目を合わせたレイの顔は晴れていた。


「同じ公爵家なら婚約者もいないディーンがいるのに、と思うけど彼は彼で大変そうだしね」

 レイもディーンも周りに人が寄ってくるのか。

 ……私はそういうことは全然なかったなあ。

 モテたいわけじゃないけど、虚しい。

 溜め息をつくとレイが不思議そうな顔をする。

「どうしたのクラリス?」

「私は全然なのか、と……」

「まさか。お義父様と僕が君が知る前に潰しているだけ。君はイシャーウッド公爵家の一人娘だよ。財産狙いの奴がどれだけいたか、そして今もいるか分かってる? 何なら全員覚えているから言ってあげようか?」

 ぶんぶんと首を横に振る。覚えているという言葉が怖い。レイはきっとその相手に怒っていると思うから。あ、そういえば学園で数人の男子にやけに遠巻きにされているけど、あれってレイやお父様が?

「もうあまり心配しなくていいよ、君に懸想なんて分不相応な奴らは大体やっつけたから」

 笑顔が怖い。

 でも……。

 私はレイの顔を見てにこりと笑う。

「うん、ありがとう」

 私がそういう関係で煩わされることがないのはレイのおかげだ。私にはレイがいるのだし、何とも思っていない男性からのアプローチなどされても困る。さっきの溜め息はなしだ。

 レイの作り笑いが苦笑いに変わる。

「そうだよね、君は喜ぶんだよね。……僕の独占欲が強くなる一方なのは君がそうやって反対しないからってこともあると思う。セーブする相手がいないんだもの」

「セーブしないといけないものなの? 私は感謝しかないけど」

「このままだと結婚したら家から一歩も出れなくなるよ、いいの?」

「友人を家に呼んでもいいなら別に……」

 子どもの頃からそんなに外出はしなかった。今思えばその時からレイの独占が始まっていたのか。

 だが不便に感じたことはない。私の趣味はほぼ屋内でできることだし、レイが一緒なら行きたいところには行かせてもらえたし、世界が狭いと感じたことは皆無だ。

 今だって普通に学校に通って、リリーという親友まで作ることができた。

 レイがしたいことなら何でもしていい、って言ったはずだけど。

「何で僕が我慢しようと思っていることまで許すかなあ。本当、敵わないよ」

「我慢なんてしてほしくないって言ったじゃない」

「限度があるでしょ」

 私と合わせていた顔を戻して頭を撫でてくる。

 結局どうなるんだろう。多分外に出してくれるんだろうな、と思う。レイは優しいから。

 私がいいと言っても、私のためと思って我慢するはずだ。そもそもレイがいないところへ行こうとは思わないし、私が外に出る時は今まで通りレイが傍にいてくれると思うので不満も不安もない。

 独占したいと言うなら、もっと独占していいのに。我慢なんてせず、レイの気の済むまですればいいと思う。レイは不満や不安ないかな。

 頭を撫でてくる手とは別の、お腹に回されている手に両手を重ねる。

「レイ。大好き。限度なんて設けなくても私は全然構わないからね」

「…………少しは構って」




 *   *   *




 あれから、結構レイとリリーと一緒にいられることになった。他のルートが進まないせいでレイのルートに行くかもしれないという不安はあるが、大好きな二人に会えるのは幸せだ。レイはあれ以来リリーに対して敵意を向けることはない。リリーと話していても

「クラリスが笑顔ならいいよ」

 と言ってくれる。ありがとう、レイ。大好き。

 といっても短い休み時間や放課後はリリーとだけ会う。レイと合流する時間はないし、女二人だけの会話もしたい。レイもさすがにそれには文句を言わなかった。

 お昼は一緒に食べられるかなと思ったけど、リリーから遠慮された。リリーとだけ食べていた三日はレイや時折ディーンも加わるのに、レイと食べていた二日はそのままになった。

「二人の邪魔はしたくないから」

 と。

 リリーが私と一緒じゃない時お昼をどこで食べているのか、以前聞いてみても「内緒」と答えられてしまった。その時の照れたような笑顔がすごく可愛かったから「分かったわ」と即答してしまったことを少し後悔する。寂しい思いをしてないようならいいけど、もっとちゃんと聞けばよかった。

 反対にレイは本当に遠慮がなくなった。いいけど、恥ずかしいんだってば。まさか二人きりで食べる二日に横抱きにされあーんされるようになるとは思わなかった。

「クラリスの可愛い赤い顔は隠すから大丈夫だよ」

 違う、そうじゃない。

 ああもう、なんでこんなに幸せなの。リリーが遠慮してくれて感謝する日が来るなんて。

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