表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠しルートには行かないで  作者: アオイ
二章 ゲーム開始~???ルート~
21/132

誰のルート?

本日は二話同時なのでこれが二話目です。

 おかしい。入学してそろそろ一か月が経つ頃になって、私は次第に焦り始めた。

 共通ルートはもう始まっているはずだ。

 なのに、まだ誰とも会っていない。

 いや、誰とも、は語弊がある。養子に入ったのだから義弟とは私に会う前に会っている。

 リリーに聞いたが、初めて会ったときのいじめは養子に対してではなかった。いや、近くはある。彼女がリオン・シーウェルの姉になったことが許せない、誘惑するな、ということだったらしい。正直、私がそれから止めたリリーに対しての不満を言う少数の意見もそれが多かった。


 リオン・シーウェル。

 リリーの義弟。妖艶な美形。小悪魔。魔性の男。

 彼を表す言葉は限りない。甘いマスクで色気漂う美少年だ。二歳年下だからゲームの中では12歳、誕生日を過ぎれば13歳。それなのに幼少期から社交界のみならず国外からもファンが多い人気者で、彼が義弟となったことからヒロインはいじめられることがある。

 といってもそれは外見の話であって、義弟のルートは彼が積極的で男前だ。養子になって不安なヒロインをとことん甘えさせてくれる。最初から何かとスキンシップが多くて、ヒロインが惚れるのもよく分かる。

 年下という感じは外見だけで甘えられることは少なく、

「僕がお義姉様を守るからね」

 と常に寄り添ってくれる、結構甘めなストーリーだ。それはもう外見だけでプレーヤーを虜にし、一部のお姉様方には熱狂的な支持があった。男でも惚れる、と言わしめたキャラクター。ストーリーが始まる前からヒロインに好意を持っているため常に味方をしてくれる。義弟という関係上ストーリーが進むのはほぼ家だったからタイトルに偽りありって感じだったんだけどね。


 彼とはもう会っているとして。

 学校で初めて会う攻略キャラはディーンだと思っていたけど、まったく会わない。共通ルートで全員と会い、そこから個別ルートに進む予定だった。

 王子と側近と同じクラスとはいえ、リリーがその二人に会うのとクラリスは関係ない。


 王子、ノア・マグニフィカ。

 クールでかっこいいと言われているが実質はすべてをつまらないと思っているひどく冷めた性格だ。

 平民で王子の顔を知らなかったヒロインは王子とぶつかり、謝らない王子と喧嘩になる。その時は側近によって事なきを得るのだが、王子からのイメージは最悪。そして行われた最初の定期テストでなんとヒロインは王子を抜いて一位を取ってしまう。不敬だ、と喚く王子はヒロインと喧嘩をしながら今まで経験したことのない怒り、悲しみ、喜びといった感情を得ていく……といったストーリーだ。

 甘々がほぼなく、ツンデレのツンばかりなのであまり人気はなかったと思う。

 王子といっても学園内でのお話なのでそんなに関係ない。おまけで見られるアフターストーリーはまさにツンデレ満載なので人気がある。あからさまにヒロインを喜ばせようとパーティーの準備をしておいて

「べ、べつにお前のためじゃない!」

 と言う真っ赤な顔をした王子の背中に回した手の中にはプレゼント。もちろん王子というだけあってヒロインのためのプレゼントは数多くあるのだが、手の中にあるのは彼が何週間もかけて初めて自作したブローチ。

 あれだけを見るために王子ルートの喧嘩三昧をクリアしたといっても過言ではない。


 本来、学園ではそんなに身分を気にする必要はない。法律できちんと決められている。まあ法律は法律、王子に敬語を使わないとか恐れ多いので周りは結構使っている。ゲームの話だから王子を責めるつもりはないけど不敬だなんて結構ひどい。私? まだ一度も会話していない。

 側近ルートだと、テストは出てこない。ただ王子が最初の喧嘩で見せた表情に驚き、ヒロインを注視するようになる。


 ブラッドリー・トムソン。

 侯爵家。常磐色の短髪に秘色の瞳を持つ王子の幼馴染で側近。

 粗暴に見える外見とは裏腹に穏和で寡黙な彼と出会うのは主に図書室。お互い趣味の本を交換したり話し合ったり穏やかに進んでいく。側近が消極的なせいかこのルートのヒロインは積極的で、彼女からのアピールに普段無表情の側近の顔が照れて赤くなるスチルはとても人気だ。

 担任教師の次にファンが多いのがこの側近ルートである。ヒロインをいじめなどのハプニングから守るナイトらしいところもあるし、反対する王子に対し誠実にヒロインへの愛を告げる、最後の長々としたセリフは正に必見だ。起伏があまりないストーリーではあるけど甘酸っぱい学生同士の恋愛が楽しめると評判だった。

 現実問題、結婚するならこの側近が一番いいと言われるほど性格が問題なく素晴らしく描かれている。

 買い物でヒロインに一切出させず全額支払ったのがこのヒーロー。それも恋人ですらないときに、無言でヒロインの手を止め自分の財布からお金を出した。買ったものを渡した後感謝を告げたヒロインに初めて表情を変化し、口の端を少し上げて微笑む姿に多くのファンがノックアウトされた。


 本当、なんでこんなことばかり覚えているんだろう。前世の記憶って不思議。

 この二人、まずは王子とぶつかってからでないとどちらのルートも始まらない。けれどそんな騒ぎになる噂は聞かない。ぶつかるまでは共通ルートだと思ってたんだけど、記憶違いかな?

 もうテストになってしまう。

 最初のテストはゲームだと難易度は低めに設定してある。王子とのルートに必要だから仕方がない。

 実際は筆記も実技も簡単ではない。

 ゲームだと授業中に使う魔法も相手の好感度を上げたりすることに使うが、現実ではそういうわけにもいかないはず。ヒロインの得意な魔法も攻略キャラによって変わる。例えば王子ならば全方向にレベルを上げなければならないし、義弟なら家で使える魔法中心に覚えたほうがいい。そういう攻略方法を助けるのがクラリスだ。

 今のところリリーは全範囲万遍なくできている。本人が勤勉で努力家なので成長速度も速く、一位を取っても違和感はないと思う。

 ということは王子?

 ……会ってないのに?

 …………どうなってるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ