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素晴らしい僕の人生(レイ視点)

 素晴らしい二週間だった。


 クラリスと二人だけで寝室に籠もりきり、ごはんを食べさせてあげる時もどんな時も常に僕の腕の中。

 クラリスは僕だけを見て僕だけを感じて僕のことだけ考えて。目を開ければ常に彼女が視界の中にいて、手を伸ばせばすぐに抱きしめられる距離にいる。自分だけしか知らないクラリスがあんなにも。

 幸せだ。すごく幸せだった。あれがこの世の天国か。

 今まで我慢していたもの全て実行した。さすがにクラリスも最初は戸惑っていたが、彼女は強い。

「私ずっと前に、レイがしたいこと何でもしてって言ったわよ?」

 と受け入れてくれた。恥ずかしがってはいたけれどそれも最高だった。

 僕に負けじとキスマークをつけようと奮闘するのも良かった。うまくつけられなくて何度もちゅうちゅう吸ってきて可愛かった。今思い出しても興奮する。お手本を見せてあげる、と言いつつ僕はクラリスを丸呑みした。あー、幸せ。

 今日もこれからも家に帰ればクラリスがいて、自分を待ってくれているなんて何と甘美なことか。

 朝、クラリスはわざわざ目を覚まし僕にキスしてくれた。

「行ってらっしゃい。早く帰ってきてね、待ってるわ」

 もちろん僕からも返した。彼女の妖艶な姿を見てベッドに戻りたくなったが何とか耐えた。

 今ならお義父様の気持ちが分かる。愛しい妻が待っているのに決して残業などするものか。必ず定時に帰ってみせる。


「おう、久しぶりだな」

 二週間ぶりの王城、職場に行くまでに聞こえた言葉に振り返った。

「おはよう、ディーン」

「怖っ!」

 失礼な。ただ笑顔が止まらないだけなのに。油断すると即にやけてしまう。

「おいおい、周りにお花が飛んでるぞ。てめえ頭大丈夫か」

「ふふ、幸せで幸せで仕方がないからね。今なら君にどんな暴言を吐かれようと許せるよ」

「へ、へええ……」

「結婚はいいものだよ。今までは彼女がいなくてつまらないと思っていた王城すら輝いて見える」

 王城どころか世界全てが輝いている。クラリスのおかげだ。

「やべえ、マジでイシャーウッド公爵に似てきやがった」

 構わない。クラリスはお義父様のことが好きだから。一番は僕だけどね!

 ディーンの呆れる視線なんかまったく気にならない。

「……てめえ、嫁さんをずっとベッドから離さなかったとか言わねえよな」

「まさか。三食きっちりスイーツまで食べたよ。服は着せなかったけど」

「おい」

「大丈夫、料理は自室に持って来てもらうだけで僕以外の誰も彼女を見ないようにしたから」

「どこが大丈夫なんだよ」

 二週間、二十四時間クラリスを独り占めできたのだ。大丈夫以外の何がある。

 スイーツは僕が作ったしその時の紅茶も僕が淹れた。オーウェンに教わっておいてよかった。まだまだ未熟だから空いている時間ができたらまた教わりに行こう。

 ちなみに、僕はスイーツを作る時だけは裸にエプロンでは何なのでバスローブを着けていた。シーツを体に巻いたクラリスが「ずるいわ」とむくれていたのを思い出す。あの表情も可愛かったなあ。「脱いでほしいの?」と聞いたら逃げてしまったけど。

 その後? 僕がクラリスを逃がすと思う?

 その時が悔しかったのか合間を見てクラリスは僕のバスローブを羽織った。

「わあ、やっぱり大きい。えへへ、レイの匂いがする」

 クラリス、それは誘惑と言うんだよ。僕脱がすって言ったよね?

 こういうことをするのに

「私がんばってレイを誘惑するわ!」

 という姿勢を崩さなかったクラリスにとっての誘惑って本当に何なんだろう。

 クラリスが何かしようとする前にベッドに沈めてしまう僕には一生分からないかもしれない。


「君に話すとクラリスが減るからいやだ」

 あの二週間は自分とクラリスしか知らないこと。素敵だ。

「いや聞きたくねえけどな?」

 頬が引きつっている男は置いて仕事場に向かう。

 そこでも周りが青ざめたりひくついていたが特に問題はなかった。ああ、幸せだ。

 この日僕は通常の何倍ものスピードで仕事を終わらせ、周りからイシャーウッド公爵二世と語られることになるのだがどうでもいいだろう。


 王城を出て馬車が発進したら今から帰るよ、とテレパシーを送る。嬉しい、待ってるわと可愛い返事が間を置かずに来た。

 幸せだ。顔がにやけるのを抑えきれない。空間魔法で一瞬のうちに帰りたい。

 十四年間願っていたことが現実に。これから先の何十年もずっとクラリスが僕の傍にいてくれるなんて。最高だ。絶対来世もそうなれるように徳を積もう。

 クラリスがいつから僕を好きだったか分からないが今世は5歳の頃出会って片想い九年。来世はもっと早く出会って、そしてもっと早く両想いになりたい。目標は高くだ。僕頑張るからね、クラリス。

 そういえば、と昨日の最終日にリリー・シーウェル……もとい、ワイズ夫人のことを話せばショックを受けていた。彼女の頭の中がそれだけ自分のみで占められていたと思うと気分が上がる。

「レイのことで頭がいっぱいだったわ」

 という言葉ももらえて嬉しくてたまらなかったので即座に押し倒した。どっちみち相手も蜜月期だから会えない期間だった。後二週間もあるとは羨ましい。旅行はまたいつか、だね。




 *   *   *




「おかえりなさい」

 玄関まで迎えに来てくれたクラリスを腕の中にしまう。

「ただいま。会いたかったよ。クラリスに会えて嬉しい」

「うん。私も会いたかった。レイに会えてすごく嬉しい」

 嬉しそうに抱き返してくれた。

 可愛い。服を着ているのがもったいない。僕がつけた跡も服で隠されている。今すぐベッドに戻りたいという不埒な思いでいっぱいになった。とりあえずキスをする。もっと深くしたかったけど「ここ玄関」と止められた。

「食事にする? お風呂にする?」

「クラリスはないの?」

 不満気に呟けば顔を真っ赤にされた。可愛い。やっぱりクラリスがいい。

「しょ、食事にしよ? ね?」

「えー……」

「レイのえっち」

「今更でしょ?」

 二週間かけてこれでもかと言うほど分かったはずだ。僕はあの二週間一度も我慢した記憶がない。欲望の限りを尽くした。クラリスの度量は広いと改めて感じたものだ。

 クラリスは目を潤わせてこちらを上目遣いで見上げてくる。可愛い。本当、何故これで誘っていないのだろう。

「もう。私はどこにも逃げないから。後で気の済むまでいっぱいどうぞ」

「……どうして明日も仕事があるんだ」

 恥ずかしそうにしながらも決して嫌がらない妻。やっぱり蜜月期は後もう二週間欲しい。今からでも遅くない、申請すべきか。言っても仕方がないのでクラリスの背中と膝の下に手をやり抱き上げる。

「え? え???」

 びっくりしているが自然と首に手が回される。密着できていることに満足しもう一度唇を落とした。

「帰ってきたらすぐキスするのいいよね。これからそうしようか」

 見る度にムカついていたけど父上と母上の気持ちも分かった。目の前にこんなに艶やかで潤っている唇があるのだから合わせたいと思うのは当然の心理だ。したいことリストにメモしていたことでもある。

 はいどうぞ、と言って目を瞑る。今度はクラリスの番。何秒か戸惑っていたようだったが唇に柔らかい感触が来る。目を開ければクラリスは顔を真っ赤にしながらも幸せそうに笑みを浮かべていた。

 やっぱり寝室に直行したい。だが今からそうしてしまうと夕食もスイーツも食べられなくなってクラリスが痩せてしまう。楽しみは後に取っておくとして、今は腕の中に彼女がいる幸せに浸りながらダイニングへ向かうことにした。

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