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66話 秘密作戦

 翌日の放課後。


「ふぅ」


 全ての授業が終わり、途端に教室が賑やかになる。

 友達と遊びに行く。

 部活に励む。

 放課後の過ごし方は人それぞれだ。


 俺は天宮と一緒に帰るために、彼女のクラスへ移動する。


「天宮さんなら、もう帰りましたよ」

「あれ?」


 天宮のクラスメイトに声をかけると、そんな返事が帰ってきた。


 いつも待っているか、あるいは迎えに来てくれるのだけど……

 どこかですれ違ったかな?

 不思議に思いつつ自分のクラスに戻るけれど、天宮の姿はない。


「ん? どうしたんだ」


 俺の様子に気がついた真司が声をかけてきた。


「天宮、見ていないか?」

「あー……」


 真司は微妙な表情に。

 なにか知っている様子だけど、しかし、『なにか』を話してくれる気配はない。


「悪い。俺の口からは言えない」

「……もしかして、七塚さんが絡んでいる?」

「お前、こういう時の勘は鋭いな」


 どうやら正解みたいだ。

 天宮は七塚と一緒に行動しているみたいだけど……

 でも、それならそれで、一言連絡があるはずなのだけど。


「雫から伝言を預かっているぜ」

「伝言?」

「教室で待っているように、って」

「なんだそれ?」

「俺もわからん」


 意味がわからないのだけど……

 でも、無視することはできないか。

 たぶん、天宮も関わっているだろう。


「じゃあ、俺はのんびり過ごしているか」

「なんか雫が暴走しているみたいで悪いな」

「気にしないでくれ。天宮も一緒だろうから、七塚さんだけ、っていうわけじゃないだろうし」

「そっか。じゃ、後は任せた」

「部活?」

「そそ。俺は、どこかの帰宅部と違って忙しいからな」

「楽なんだよ、それはそれで」

「お前……ま、いいか。じゃあな」


 最後、なにか言いたそうな顔をしていたものの、なにも言うことはなくて、真司は教室を後にした。


「あいつ……」


 わずかな間だけど、俺が部活に入っていたことを知っているからな。

 まだそのことを気にしているのだろうか?


 ……入学して、最初の一ヶ月。

 俺はバスケ部に所属していた。

 その時の縁がきっかけで真司と友達になった。


 ただ、所属していたのは一ヶ月だけ。

 ちょっとしたトラブルを起こしてしまい、退部した。


 そのトラブルに、ほんの少しだけ真司も関わっていて……

 だから、まだ気にしているのだろう。


「気にすることなんてないのに」


 とはいえ、真司は適当に見えてとても律儀なヤツだ。

 根は真面目で、人を思いやることができて……だからこそ、七塚という素敵な彼女がいる。


 気にしてしまうのも仕方ないのかもな。


「進藤君」


 ぼーっと考え事をしていると、天宮の声が。

 入り口の方を見ると、なにやら紙袋を両手で抱えた天宮が。


「すみません、おまたせしました。えっと……伝言、ちゃんと伝わっていましたか?」

「……大丈夫」

「その間が不安です……」


 やや微妙な伝言ではあったものの、こうして合流できたのだから気にすることはない。


「それで、今日はどうしたんだ?」

「えっと、ですね……まずは、これを食べてみてくれませんか?」


 そう言って、天宮は紙袋を差し出してきた。

 開けていい? と目で問いかけると、天宮はこくんと頷く。


「おぉ」


 紙袋を開けると、ふわりと甘い匂いが漂う。

 綺麗にラッピングされたカップケーキが入っていた。


「これ、いいの?」

「はい。進藤君のために作りましたから」

「えっと……いただきます」


 なんでカップケーキ?

 いつの間に?


 なんて疑問はあったものの、それよりも甘い匂いに抗うことができない。

 俺は、さっそく一つ手に取り、ぱくりと食べた。


「ど、どうでしょうか……?」

「うん、おいしいよ」


 生地はふわふわで、口の中で甘さと良い香りが広がっていく。

 ドライフルーツをいれているらしく、時折、食感と味が変わる。

 それはそれで楽しくて、ついつい食べる手が止まらない。


「ごちそうさま」


 あっという間に食べてしまう。

 余韻がまだ残っていて……もったいない。

 もっと味わって食べるべきだった。


「本当においしい。ありがとう」

「えへへ、どういたしまして」

「これを作っていたの?」

「はい。七塚さんに色々と相談していたら、実際に作って見せてプレゼンした方がいいのでは? というアドバイスをいただきまして」

「プレゼン?」


 なんの話だ?


「進藤君」


 天宮は真面目な顔で、どこか緊張しつつ言う。


「その……私と一緒に部活を立ち上げませんか?」

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別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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