52話 対策会議
「ほんっっっっっーーーーーとうにごめん!!!!!」
昼休み。
学食に集合すると、七塚に思い切り頭を下げられた。
俺、天宮、真司は、普段滅多に見ることのないしおらしい七塚に戸惑いを先に覚えてしまう。
「まさか、進藤君に告白する子が出てくるなんて……完全にあたしのミスだ。ごめんなさい、とにかくごめんなさい……!!!」
「いや、七塚が謝ることじゃないよ」
事の流れはこうだ。
数日前、七塚の友達に俺のメッセージのIDを教えることを許可した。
それから、七塚の友達からメッセージが届いて、簡単なやりとりをしていたのだけど……
どうも、その友達がさらに別の人に俺のIDを教えたらしい。
そして、その人がメッセージで俺に告白をしてきたのだ。
友達は、俺に対する想いを聞かされたため断れなかった、という。
どうするべきか、みんなに相談をすることになった、というわけだ。
「口の硬い子だと思っていたんだけど……はぁ、本当に面目ない……」
「ったく、雫はそういうところが甘いよな。簡単に人を信じすぎだ」
「うー……まったく反論できない」
「ま、そこが雫の良いところでもあるけどな」
「ふぇ~ん」
七塚が真司に甘えるという、珍しい光景が起きていた。
「とにかく……七塚が悪いとは思っていないから。本当に気にしないでほしい」
「うぅ、優しさが染みるぅ……」
よよよ、と七塚が泣いていた。
「……あの」
これまで成り行きを見守っていた天宮が、そっと口を開いた。
ちょっと怯えているような、叱られることを恐れている子供のような、そんな感じだ。
「進藤君は……ど、どうするんですか?」
そう言う天宮は、とても怯えている様子だった。
ちょっと突いたら泣き出してしまいそう。
それくらい不安定に見える。
ああ、そうか。
俺がどんな返事をするのか、それが気になって気になって仕方ないのか。
「大丈夫」
「……あ……」
隣に座る天宮を抱き寄せた。
食堂だから人目がある?
周囲のことを気にしろ?
そんなことはどうでもいい。
今は、なによりもまず、天宮のことが大事だ。
彼女が最優先だ。
「ちゃんと返事はしないといけないけど、でも、相手の気持ちに応えることは絶対にないから」
「それは……」
天宮は、「本当に?」と言うように不安そうにこちらを見る。
彼女の頬をそっと撫でて落ち着かせる。
「絶対にない」
「……本当ですか?」
「もちろんだ。俺の一番は天宮で、それは、これまでもこれからも変わらない。ずっとずっと一番だ」
「……っ……」
天宮の瞳に涙が浮かぶ。
ただ、悲しいわけじゃなくて安堵したのだろう。
その証拠に、こわばっていた顔がだいぶ落ち着きを取り戻していた。
「泣かないでくれ」
「うぅ……だって、ものすごく嬉しいことを言われたものだから、つい」
「俺にとっては当たり前のことだよ」
「そういうところに、私はとことん弱いんですよ? もう……」
よしよし、と頭を撫でて落ち着かせた。
それから、ふと、真司と七塚の冷めた視線に気づく。
「なんかこの二人、レベルアップしてないか?」
「喜ぶべきことなのか、呆れるべきことなのか……んー、迷う!」
どういう意味だ?
天宮と一緒に首を傾げた。
「それで、中庭に何時に待ち合わせなの?」」
七塚が、とてもキラキラとした顔でそう尋ねてきた。
「……もしかして、見に来るつもりか?」
「まさかー。でも、いざっていう時はフォローをしたりする必要があるかもしれないじゃん? そのためにあたしはあいたぁ!?」
「いくらなんでも趣味が悪いだろ、バカ」
真司のげんこつが七塚に落ちた。
正直、自業自得だと思う。
「覗き見なんてやめろ」
「うぅ……でも、真司は気にならないの?」
「そりゃ、なるけど……限度を超えてるだろ」
「まあ……そうだよね。仕方ない、諦めますか」
あっさりと七塚は引き下がる。
最初からそのつもりで、冗談だったのかもしれない。
「えっと、私は……」
「すまないけど、天宮も別のところで待っていてくれないか?」
「そうですね……はい、わかりました」
寂しそうな顔をさせてしまうのが申しわけない。
ただ、相手は告白をしようとしているのだ。
そこに彼女を連れて行くわけにはいかない。
断ると決めていても、俺が一人で赴いて、きちんと話をしなければいけない。
「そんなわけで……」
真司と七塚を見る。
「改めて言うけど、覗き見なんかしないように」
「なんで……」
「そこであたし達を見るのかなあ……」
「信頼の差」
「「とほほ……」」
似た者同士の恋人は、揃って肩を下げるのだった。
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