49話 寝顔
~六花視点~
「すぅ……すぅ……」
電気を消して少し。
進藤君の穏やかな寝息が聞こえてきた。
そちらに視線を向けると、大好きな人の寝顔が。
「……うぅ、寝ているところも素敵です」
進藤君はかっこいい。
世界で一番だ。
それなのに、最近はイメチェンをしてしまった。
元々かっこいいのに、さらにかっこよくなって……
実のところ、彼を見る度にときめいている。
ドキドキして、あわあわして、またドキドキする。
その繰り返しだ。
「こんなにかっこよくなって、進藤君はどうしたんでしょうか? 私を惚れ死にさせることを狙っているんでしょうか? それとも、照れ失神?」
そして気絶した私に進藤君は……
「……ひゃあああ」
とんでもない妄想をしてしまい、布団の中で悶えた。
自爆だ。
完全なる自爆だ。
実のところ、こうして自爆することは多い。
進藤君には隠しているものの……
彼の仕草や言動に一つ一つ敏感に反応してしまい、ちょくちょく影で悶えている。
傍から見れば奇行なのだけど……
でも、仕方ないじゃないですか。
大好きな人のかっこいいところを見ることができる。
心の底から慕っていると断言できる相手の素敵な姿を見ることができる。
そんな時、ドキドキをコントロールすることはできない。
ついつい感情が暴走して……
なんともいえない顔をしたり、赤くなったり照れたり、悶えてしまうことは仕方ないことだ。
だって、それだけ好きなんだもの。
「……進藤君……」
そっと、彼の名前を口にした。
それだけで胸が温かくなる。
幸せがあふれてきて、ふわふわと浮かんでいるような気持ちになる。
ああ。
これが恋をする、っていうことなのだろう。
そうだ。
私は今、恋をしている。
どうしようもないほど進藤君に惚れている。
「……それにしても」
枕の位置をちょっとだけ進藤君に近づけた。
その状態で、改めて彼の寝顔を見る。
落ち着いた雰囲気で、よく整った顔。
でも、こうして寝顔を見ていると、なんだか愛嬌を感じる。
かわいいというか。
愛らしいというか。
そんな感じで、ついつい視線が引き寄せられてしまう。
たぶん、進藤君の寝顔なら、24時間見ていても飽きることはないと思う。
ずっとずっと見ていられる。
でも、それはそれで寂しい。
寝顔を眺めるだけじゃなくて、色々な話をしたい。
私に笑いかけてほしい。
甘い言葉をかけてほしい。
それから……
「……私、欲張りになっているんでしょうか?」
進藤君と恋人のフリをして。
それから、本物の恋人になって。
彼に対する想いがどんどん膨らんでいる。
ここが最大値だろう。
なんて思っていたところを、翌日にはあっさりと突破して、ぐんぐんと甘い想いが上昇していく。
笑いかけてほしい。
彼に触れたい。
甘やかしてほしい。
……なんて、色々な願望が湧き出てくる。
それはとどまることを知らない。
これが恋。
恋は人をわがままにする、ということを初めて知った。
「こんな私……進藤君は受け入れてくれるでしょうか?」
わがままになって。
たくさん求めるようになって。
そんな私に、進藤君はどこまで応えてくれるのか?
もしかしたら、途中で愛想を尽かされてしまうのでは?
そんな可能性を考えて、ものすごく怖くなった。
進藤君がそんなことをするわけない、と思う一方で、私は私に自信を持つことができないでいた。
私より可愛い人なんてたくさんいる。
私より性格が良い人なんてたくさんいる。
だから、いつか進藤君と離れる時が……
「ダメダメっ」
確かにその可能性はあるかもしれない。
でも、今から暗いことを考えていても仕方ない。
そんなことよりも、もっと前向きになるべきだ。
そんな未来が訪れないように、もっともっとがんばるべきだ。
「よし」
絶対に進藤君にふさわしい女性になってみせます!
そんな決意をしつつ、私はゆっくりと目を閉じた。
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